1. 情報流通基盤としての文字への取組み−秀英体 (講演要旨)

高橋 仁一 (大日本印刷)


背景

大日本印刷には100 年以上に渡る企業経営の中で生み育ててきた「秀英体」という書体がある。1876(明治9)年創業の当社は創業理念として「文明の営業」を掲げた。情報伝達の基盤としての文字は,そのシンボルと言って良いかも知れない。

創業間もない頃に金属活字を自ら作る体制を整え,1912(明治45)年には多様なサイズの秀英体を揃え,「築地体」と並んで「和文活字の二大潮流」と称されるようになった。

その後,写植,CTS,DTP と利用環境の変遷の中で1990 年代になると,デジタルフォントが主流になっていった。一方で,活版組版の製作ラインは2003 年に完全に停止し、企業文化としての「秀英体」の位置付けを見直す必要もあった。

現状

旧来のインハウスフォントとしての位置付けを見直し,秀英体をテーマとして永続的に位置付けるため,取り組みの枠組みを再定義した。ベースとなるミッションを「文化継承」とした。そのための柱となる枠組みを以下の3 つとした。

  • ブランディングにつながる「普及啓蒙」
  • 土台造りとなる「基盤開発」
  • ユーザーとの価値を共有できる「用途開発」
これら3つの枠組みを有機的に回すべく活動している。

将来

文字の利用環境は,今後もさまざまに進化することが予想される。それらに対応するためには,標準化への取り組みが欠かせない。

一方で印刷業を「文明の営業」と位置付けた創業理念に則って,情報を伝えるための基本機能である「読みやすさ」へのこだわりを継承していく。