コックとカメラマン 

【 一般人から見たカメラマン考... Vol.03, 2000年02月20日UP 】

 さて、皆さんはプロになるなら「コックさん」と「カメラマン」はどちらがいいと思いますか?(笑)。

 まあ本来「職業」には向いてるとか好き嫌いはあっても、「どっちがいい」なんてないと思います。 でも、おやじはたまにコックさんの方がうらやましく思えるときがあります。それは「結婚式の披露宴」なんです。 以下はおやじがある会社でカメラマンをやっていた時代のことです。


 職場の同僚などで、結婚する時に「おまえ写真がうまいからカメラマンやってくれよ」と気軽に言ってくるあつかましい人がいます。 こーいう「言われ方」をすると、おやじは「じゃあ、料理がうまいやつはコックをしないといけないのか!」といってやりたくなります。

 実際に言うと「そんなにけちけちしないで撮ってやればいいのに」とか、頼まれなくても買って出る「披露宴の記念写真好き」に非難されるので、 都合が悪いとかで丁寧に断るようにしています(フリーじゃない社員カメラマンの悲しさか..)。 でも、世の人々は何故こういうことが気軽に頼めるのでしょうか?..。

 でもこの話、写真を撮らない人たちは「なんであつかましいの?」と不思議なんでしょうね。 じゃあどこが「あつかましい」かというと、それは自分の一方的な都合で他人に「仕事」を頼んでいるからなんです。

 注意!
ここであらかじめ断っておきますが、 この話はおやじが今まで披露宴を撮った「家族」や「親戚」、「友人」の話ではありません。 あくまでも「そんなに親しくないのに、こんな時だけ都合良く頼んできた」人たちの話です。(^_^)

で、どういうことが「仕事」になるかというと、下のように考えられるからです。

・写真を頼まれたことで「必ず」行かなければならない →

 普段なら行かなくても済むような付き合いの人でも、向こうの都合だけで「必ず出なければ」ならなくなります。 誰でもわかると思いますが、付き合いで出るような「披露宴」なんて面白くないに決まってるじゃないですか..。 そのために「1.休みを一日潰して」「2.スーツを着て」「3.決められた時間に他人より早く」「4.お祝いを包んで」「5.自分のカメラ一式を持参で」 出かけて、長時間写真を撮るわけです。

 「お祝いは出さなくていいよ。写真撮ってもらうんだし..」とか言われるんですが、 おやじはお祝いを出さずに記帳する勇気はありません。 雇われたカメラマンとして知らんぷりできればまだいいんですが、こういうことを頼むやつに限って 「こいつ俺の同僚。プロなんだ。俺の結婚式を撮りに来てくれたんだよ。(オイオイ!)」と皆に言いふらされ、他人面できなくなっちゃうんですよね..(T_T)。


そして「仕事」である以上、下のようなことを強いられます。

・いい写真を撮らなきゃいけない →

 「そんなに一所懸命に撮んなくてもいいから」と言って「おやじ」を引張り出しときながら、本当に手を抜くと「いい写真がない」 とか「撮った枚数が少ない」とか言われます。こちらにはどうでもいいイベントでも、向こうは一生に1回(多分)のイベントなんですよね。

 結局引受けたら失敗するなんてとんでもないし、式の間ずっと神経張りつめてミスしないように準備しながら写真撮ることになります。 ケーキカットやお色直し等の各イベント撮らなきゃいけないし、それ以外にもスナップや友達との記念写真を撮らなきゃいけないし、 せっかくの料理を食う暇も、酒を飲むゆとりもない!。(おやじは酒好きですが、仕事で撮る時は終わるまで一滴も飲みません)
 だんだん「何で俺は休みを潰して金を払って飯も食わず酒も飲まず、酒を飲んで飯を食って騒いでいる奴らの写真を撮っているんだ!」 という気になってきます。(週末に居酒屋でバイトしている人の気持ちがわかるなぁ。でもあっちは金もらえるんだよね...)


 −どうでもいい結論−

 たぶん結婚式を迎えた二人は「皆からの祝福」を受けたいわけで、披露宴では「特技」を持った人は全てそれを「披露」しないといけないわけです。 歌のうまい人が歌ったり、芸のある人は芸を見せ、スピーチのうまい人はしゃべり、写真のうまい人は「仕事」をする(トホホ..)。 でも、この写真に限られた「仕事」を「祝福」に変えられるのは新郎・新婦とカメラマンの「親しさ」だけではないんでしょうかねぇ..。

 そして、この結論を考えたおやじがふと気づいた「疑問」。それは「なぜ料理のうまい奴は披露宴の料理を作らずに済むのか?」です。

 これは考えればすぐにわかると思いますが、ホテルや式場側の「利益」や「責任」を犯すことになるわけですね。 料理自慢の新婦が自分の作ったケーキを宴に出すことはよくありますが、 ホテルの料理を全てキャンセルして知人のコックを厨房に入れたなんて話しはほとんど聞いたことありません。

 ところが、恐ろしいことに披露宴のカメラマンは「キャンセルできる」んですね。おやじは過去に何度もそういう状況で写真を撮りました。 でも、結婚する当人達がカメラマンをキャンセルした理由が「費用の節約」だったりすると、おやじはキレそうになります。 おやじは「タダ働き」の上に「責任」を押し付けられる状況になるんですよね。

 だから今、そういう形の依頼が来た時は、「×××円もらえるならやるよ」と費用(妥当な料金)を請求することにしています。 そうすれば、たいてい「○○さん、それ高いよ!」で終わっちゃいます..。でも印象悪いんでしょうね、きっと(^_^;)。


 何故、カメラマンの場合だけこんなことになるのか不思議でしょうがないのですが、ひょっとしたら一般の方は 「写真好き=シャッターを押すのが好き」な人と考えているんじゃないでしょうか。 だから自分達の一大イベントに気軽に頼めば「あ〜あっ、俺はシャッターを押すのが好きだぁぁぁ!!」と叫びながら、 タダでいい写真をたくさん撮ってくれる人と思ってるんじゃないでしょうか..。

 もし、そうでなければ「写真くらい自分でも撮れそうだから、上手な人に頼むのは当たり前で失礼なことじゃない。」と思っていることになります。 もっと言えば「写真がうまいと言われている人に、ボクらの素晴らしい結婚式を撮ることを頼まないと後でひがむかも知れない」 なんてこと考えてるかもしれません。う〜ん..。

まあ、良く考えると、これは結婚式にかぎった話じゃないですね。社員旅行でも社内行事でもよくあることです。 カメラ一式持ってくとなれば荷物も大変だし、前の日の準備もいろいろあるんですよね。 その上、当日の負担をやらされたら愚痴の一つも言いたくなります...。

 今回はずいぶん辛口な話(いままでもか?)になりましたが、これを見たおやじの「家族」「親戚」「友人」の皆さんはビビらないで下さいね。(^_^) むしろおやじのやってあげれらることは写真を撮るくらいしかありませんから..。
 逆に、身近に写真を頼める人がいるから「気軽に頼んだ」人は、すべてはカメラマンの「善意」だということを忘れないで下さい。 カメラマンは「善意」であるからこそ親しい人にやってあげたいし、「善意」であるからこそ他人に強要されたくないんです。

−おまけ−
 え〜、話の中に入れられなかったネタを下に書いておきます。信じられないかもしれませんが、全て実話です。(^_^;)

〔軽○沢プ○ンスホテル〕
新郎の親のコネでスタジオまで借り切り、ホテルスタッフの白い目の中を百数十枚の撮影。 大型ストロボ、6×7まで持参して延々と親族の記念写真。式、集合、披露宴と全て撮ってタダ働き。プリントまでやりました。

〔平日の結婚式〕
平日の日に「会社の同僚の友人」の結婚式に有給休暇をとって付き合わされました。 式場で「初めまして」と挨拶した人の披露宴を、仕事休んで撮ってる自分に疑問を感じました。

〔カメラマン様〕
撮影を急に頼まれた披露宴。これまた同僚の知人とかで知らない人。気を使ったのか、カメラマンにはなくていい席を設けていただきました。 最初だけでも座っとこうと席についたら目の前の名前の札が「カメラマン様」。 もしやと思って配られた席の配置表を見ると、ここにもやっぱり「カメラマン様」。気づくと周りの親族達の視線が....。

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