PHS技術利用の無線形式インターネット接続機器に関して

2000/01/30 更新
本文書は、私が相談を受けた内容に対してメールで回答(個人的主観ですが)した内容をもとにしています。書いたのは1999年12月初旬ですので一部古い情報がありますが、注釈の形で補足を入れています。相談の内容は「せっかく先行配線+今使用中のTA使っていいことになってたのに、今日の新聞広告に”無線で接続できるIW50”が載ってたので先行配線いらないじゃんと言われてしまった。私の先行配線計画がぁ・・・」というものでした。

本文書はNECの特定製品を否定するものではありません。ニーズにあった方にはもちろんベストな商品だと思います。ここに書いているのはあくまでも私個人の考えですので、こういう考えもあるんだという見方でお読みいただけることを期待しています。

ATERMのワイヤレスTAについて

NECのISDN製品は2つの系統がある。 TAが基本のAtermシリーズとルータが基本のComstarシリーズである。 民生用としてはAtermの方が販売量は多い。TAであるから基本的にAterm1台にパソコン1台というのが基本的スタイルである。なおTAとはTermnalAdapterの略であり、デジタル通信であるISDN回線にアナログ機器である一般電話を接続したり、パソコンをRS232C回線で接続するためのものである。

基本的に1台に1PCという制限があるため、TA1台ではインターネットへダイヤルアップ接続するのもPC1台だけという制限がある。但し、ISDN規格では1つのDSUには最大6台までのISDN機器(TAなど)を接続することが可能なので別にもう一台TAを買えば2つのPCでインターネット接続が可能である。しかしTA1つで電話回線1つを占有するので「1契約で2回線利用できるISDN」でも最大2つのPCしか使えませんし、電話料金も2倍かかることに注意してください。
ISDN機器はS/T系のライン上にしか接続できないため、PCを使いたい部屋にS/T点がない(S/T系の配線がきたモジュラジャック:壁の差込口がない)ため、TAを置いてもつなげないというのが賃貸住宅や既存住宅での問題です。そこで必ず一家にひとつはある電話口をISDN回線にしたらそこを基点にして、無線でつなげばいいという発想になります。そこででてきたのが、AtermIW50/D+RS10のIW50ワイヤレスセットです。

AtermIW50/D+RS10

親機であるIW50/DをNTTからの引き込み線の宅内出口においてワイヤレスTAの基点とします。そして、任意の部屋に子機であるRS10をおいてケーブルを引っ張ることなくISDN回線に接続します。親機にはDTEポートとアナログポートがあり、PCと電話機/FAXをつなぐことができます。子機も同様です。

さてどうする?

ここで注意するのは、この技術がもともとPHSの通信技術(自営標準3版)を利用したものであることです。この点でいくつかの制限事項が存在します。一番大きいのは、親機に収容できる子機RS10は最大3台であることでしょう。スペック上は最大6台の子機が接続可能とありますがこれはPHS電話機を含めた数です。実はこれカタログに小さく注記として書かれています。NECとしても強くいえない部分なのかもしれませんね。
将来、PCが増えて子機を増やしていっても最大3台しか用意できないことになります。また、そのたびに子機RS10を買い足していく必要もあります(毎回2万円の出費)。またノートパソコンを家の中で自由にもちあるいて使うにもRS10をいっしょに移動するはめになります。

理想は、家中どこでも簡単に接続できることです。来年の流行先端はもうじき最終仕様がきまるIEEE802.11bの無線LAN+(ISDNルータまたは<ルータ+CATVモデム>)と個人的には思っています。LAN経由でインターネット接続することの利点は、収容できるPCの数に物理的制限がほとんどないことです。LAN接続でインターネット接続すれば、ルータが家庭内のPCのすべての要求を代表してインターネットに出して、応答を代表して受け取って要求した人に返してくれます(IPマスカレードやNATと呼ばれています)。従って、LAN上につながったPCはすべて同時にインターネットが利用できることになります。実際はISDN64Kbosの通信速度を同時使用するPCで分割するので、それぞれが我慢できる通信速度であるためには一定台数まででしょう。しかし、全PCが巨大ファイルのダウンロードしてるわけでなければ暇な時間がそれぞれあるので結構な台数まで使えると思います。
このLANを実現するのに、有線と無線の2方式があります。有線の場合は既に100Mbpsが安価に入手可能です(LANカードは数千円、ハブも2万円切ってます(*1))。10Mなら両方あわせても1万円いきませんし、ルータにはハブ機能が最初からあるのでカードだけでOKです。無線LANは今春からメルコとアイコムが安価な2Mbpsのものを出してきています(*2)。それでも親機と子機のセットで10万円ちょっとです。10Mbpsの規格がこの年末に決まりますので来年からはもっとブレークして安くなるでしょうが現状ではまだ「高い」ものです。

で、お勧めを書きあげると

・家庭内LANなのでPC間のデータ共有も可能
・家庭内チャットも可能(^^。タイピングの練習になるよぉ
・複数のPCを1台のルータでインターネットできる。通信料金節約。設定の一元管理が可能なのでTAの設定を全部のPCに入れる必要がありません。通信接続設定はルータ側が記憶します。
・家庭内LANがあれば、PC間のデータ転送も高速で可能。IW50では64Kbpsの転送速度ですが家庭内LANなら、採用したLAN速度(10Mまたは100Mbps)です。2M超えの巨大文書も珍しくなくなってきた昨今、この転送時間の待ち時間はけっこうききますよ。
PCのRS232CドライバIC自体の最大通信速度は115Kbpsですので、物理的にこれを超えた通信速度は実現できません。(データ圧縮してみかけ上の速度を稼いでいるものもありますが圧縮済みのものでは効果が小さくなります)
というわけで、現状では家庭内LAN+ルータの組み合わせが一番ベストな回答だと思います。ちなみにAtermにもルータ製品(IR450/D)がありますが、使い勝手はいまいちでしたので他のをお勧めします(MN128SOHOシリーズ(NTT-ME)かRT80(ヤマハ)あたりかな)
では、IW50の否定材料を出すと所詮NAT機能をもたないTAですので接続台数は制限があります。
・子機RS10の場所にしか電話機、PCをおけない。移動が面倒ではないでしょうか。
・同時に接続できるのは2台のPCまで、しかも電話代は2倍

先行配線をご希望なら、将来の汎用性、子機の増設の不要な点があげられるでしょう。


この後日談は、結局”無線は体に悪そうだからやめよう”と言い出してIW50はやめとなったそうです(^^
  パソコン技術に関心のない方には、使い勝手がどうとかいう前に体に悪そうとか感覚的に訴えたほうが良さそうですね(爆)。

(*1)2000/1/29現在 定価で1万円を切ったスイッチングハブまででているようです。この時代すごいスピードで進んでいますね。
(*2)2000年1月にメルコがIEEE802.11b準拠の無線通信速度11Mbpsの製品を発表しました。将来はMacのAirport(日本国内ではマックポートに改称)にも対応するそうです。

19997-99(c)yoko
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