鉄道写真、撮りまくり日記2
キヤ443をヒットせよ!
(このページは友人O氏が作成した物を管理人が修正htm化した物です)
  チャイム音は、キハ185系です。
1、安直な作戦立案
 梅雨明けを促す雷が鳴り響く7月7日
今日くらいは織姫と彦星のデートの邪魔したるなよ!と、ムッと、しながら夏到来の待ち遠しい
おいらの耳に、けたたましくJR四国の車内メロディーが鳴り響いた。
「クモヤ 7月10日
 試9685M松山1222、北伊予1228−1234、伊予市1239(3)
 試9686M伊予市1312、北伊予1317−1320(2)松山1338」
なる、友人R氏からの激写指令メールが暗号で届いた。
ク、クモヤってなに?191?443???いろいろ考えたが、四国は直流1500V電化だから、
きっと191系だわいと、決め込んでターゲットの情報収集を始める。
 クモヤ191系は新性能系列直流用事業車として1972年にモハシ180、サハ180を改造して
登場した電気検測試験車両だ。McM'c2両1ユニットの車両で、クモヤ190は架線を中心に
検査する車両で高さ、偏位、相互位置、磨耗、硬度、支障物や電柱位置の検測を走行しながら
行える優れものである。
 ペアを組むクモヤ191はATSや踏み切り回路、各種軌道回路などの信号設備関係の検側を受け持つ。
大東亜戦争末期に登場した艦攻と艦爆の両性能を持ち合わせた艦上爆撃機"流星"のようなものである。
ともに183系や485系(200番台以降)の高運転台タイプの顔をしているが、
正面にはRが無く、まっ平らでありちょっと、おとぼけ!
 さて、さて、情報入手とともに作戦司令部ではあわただしく情報の整理と戦術の検討を始めた。
まず、予讃線のダイヤを引っ張り出しスジを入れて行く。

  

 下り"試9685M"は北伊予駅で上り4638D(キハ32単行)との離合。
上り"試9686M"は1061D宇和海11号との離合。さらに追いかければ
市坪駅での離合とは珍しい。市坪駅は離合設備があるにもかかわらず現時点では
定期列車は離合をしていない。これは、おいしい!
しかし、さすがに前回のキヤ191系の件があるため、今回は仮の任務をサボって
昼休みを過ぎた上りを撮りに行くことには戸惑いがあった。
従って"試9685M"に全力投入することで司令部の意見は一致する。
 定期列車である4638Dは通常、北伊予駅での離合は無く、このため上りと言えども
右側通行(駅本屋側)の1番線を使用する。
ではクモヤは2番線入線ということになり、当然1番線に橋頭堡を築き、
2番線に身をくねらしながら入線するクモヤを狙う。
 北伊予駅は駅本屋側が1番線であり、2000系特別急行のポイント通過時の速度制限を
抑えるため1線スルーとなっている。従って松山寄りから2番線に入線する場合、
右左のポイントRに身をくねらせながら45Km/hの速度制限を余儀なくされる。


 北伊予駅2番線入線 (737D 2003/03/09)
  この絵を狙っていた

 入線での撮影方法はあっけなく決定!あとはキハ32とのツーショットのみであるが幸い、
キハ32は単行であるため停車位置からするとクモヤと顔が合いそうだ。
今回のミッションは楽勝ー!の気分で友人R氏に
「試9685Mにて任務遂行す!成功の暗号は"トラ、トラ、プーさんじゃ!」
と、返電したのは言うまでもない。あとは念のため4638Dの入線番線を確認するだけであった。


2、現場下見注意
 世を忍ぶ、仮の任務の都合により北伊予駅の下見を行ったのは、作戦発動日前日、7月9日の夕刻。
無人の駅本屋に掲げてある出発時刻表と4638Dの着番線を確認する。
「1234発、上り松山行きは、1番線。予定通り、異常なし。」
指差確認を行い余裕を持って引き上げる。
あとは西の空を見上げながら梅雨の天候のみ心配するだけ。
いよいよ、明日は初のクモヤとの御対めーん・・・ん?昔、どこかで聞いたような・・・・・?
 その夜は、余裕ブリブリにかまして、友人R氏に
「トラ2号作戦発動す!成功を期待せよ!」と、特殊暗号に変換して、メールしたのは言うまでもない。
心の余裕を持って我が愛機「Canon Power Shot A40」のセットに取り掛かる。
 ニッケル水素電池、CFを入れ、前回撮影したキヤ191系の画像を消して準備万端。
が、しかし、ここでアクシデントが発生!"電池を交換してください"との、
悲痛な叫びがモニターから発せられたのだ。
「え!?・・・まだショート2回だけやんかー!」と、薄暗い旅館というか、連れ込み宿というか・・・
一発屋のピンクの照明にぼんやり浮かび上がる野郎の遠吠えのごとく、悲痛な叫びが、むなしく
作戦司令部に響き渡った。
 過去の実績から言うと、ロング2回で電池交換のはずが、先のフリーゲージトレインとキヤ191系の
ショート2回だけだ。いくら時間が開いているとは言え・・・ま、無理を言っても仕方がない。
この時のために即座に交換できる充電済みの電池を取り出し、黙ってデジカメ様の言うとおりにした。
 デジカメの設定は前回のキヤ191系のときより、友人R氏から、
「画素数1600×1200でないと不要部分を切って拡大したときに、画像が荒れる」
とのクレームで記録画素数は"L"(ラージ)、圧縮率は通常通り"ファイン"。準備OK!電池OK!と、
意気揚々、指差確認し、床に就く鉄ちゃん中年であった。
そして、静かな宵闇を妨げるのは、「ジーッ、ジーッ」と言う、ニッケル水素電池群の
エネルギーを蓄える叫びだけであった。


3、余裕の余裕、優柔不断、用意周到?
 明けて、7月10日。
今日は、快晴とまでは行かないまでも雨は降っていなく、素人でも容易に撮れそうな天気だ。
午前中は真面目に世を忍ぶ仮の任務に没頭し(本当ーおです!)12時のチャイムが鳴ったとたん、
390円成りの弁当をかき込み、3分後には楊枝を突付いていた。おいらの食事は速い!
仮の任務に長く浸っていると、いつ出撃命令が来ても心置きなく任務遂行できるよう知らぬ間に
身に付いた、早飯、早グ○は習慣なのだ。慣れないころは、敵機来襲時の迎撃戦闘では途中で
腹が減って、食べ残したご飯やコロッケなどを思い出し苦悩に浸るばかりだった。その経験より
悔いを残さぬよう食べれるうちにしっかり食べておくというクセが身についてしまった。
人には負けない速さなのだ。でも余裕をかまして楊枝を突っつかなくても時間には余裕がある。
しかし、これをプロの間では「余裕の余裕」という。覚えておこう。
 歯の掃除も終わり、1215(ひとふたひとごお)時、定刻である。
デスクから愛機を引っ張り出し、作戦発動!マイカー(ふるーう!)で5分とかからない
北伊予駅へ余裕をかまして、いざ、出撃!

 1220時到着。
プリントしたダイヤを確認すれば、なんと1059D宇和海9号の通過時間ではないか!
1線スルーの1番線を通過するから、2番線に回って連写と、思ったが今日のメインディシュは
"クモヤ"、大事の前の小事だ。久しぶりにレンズを通さずのんびりと通過を見届けることにした。
 やがて下り1番出発信号が赤から緑に変わり、北伊予駅北側の踏切が列車の到着を告げた。
おいらは列車の運行に支障のない位置、駅本屋(1番線)の影から1059Dをのんびり見送る。
ははは、速い!タタン、タタン、タタン、タタンと、あっという間に目の前を通過して行った。
肉眼で見るのもいいな・・・。と、カメラも持てなかった幼いころ、必死になって目の奥に映像を
焼き付けていたときの懐かしい気分になり、なにかレンズで列車を追うのが間違っているような
気がした一瞬だった・・・・・。
 しかし、作戦はすでに発動されている。感傷に浸っている暇はない。予定通り1番線の外れ、
松山寄りに橋頭堡を築くべく100均で買ったカメラケースをタスキに掛けて歩みを進める。
これで防空頭巾をかぶればB29を迎撃せんと竹やりに磨きを掛けるおっさんである。
今日はライバルは誰もいない。安心してホームの端に陣取りデジカメを抜き出し構図を確認する。
光学ズームいっぱいにし、ポイントに身をくねらしながら2番線に入線するクモヤを想像。
OK!時はまさしく5分前。余裕をかまし、タバコを吸いに駅本屋に戻ることにする。
分煙が叫ばれて久しい昨今、おいらは愛煙家であるが公共の場では灰皿のないところでは吸わない。
誰にも後ろ指を指されることのないよう十分な注意を払う繊細な神経の持ち主なのである。
恐れ入ったか!?てなことはどうでもよくって、ゴルゴ13が仕事の前に余裕をブリブリにかまして、
トルコ産のトレンド葉巻を燻らす様に灰皿の前でキャスターマイルドに火をつけたのであった。
その瞬間!臨時の掲示板が目に入ってきた!
「7月10日、上り松山行き12:34発、普通列車は2番線に変更」
ななな、なんと!今日に限って4638Dの到着番線が変わっているではないか!いかんがなー。
7月1日から20円も値上がりしたにもかかわらず、二吸いしかしてないタバコを急いでもみ消し
2番線にすっ飛んで行った。
 描いた構図と違う。一からやり直しだ。きのう確認したのは通常の時刻掲示板。
臨時を告げる掲示板には目が行かなかったのはおいらのミスである。重ね重ねの注意力散漫を
呪っても仕方がない。ミスはつき物。ピンチには気分を入れ替えて対処しなければならない。
おいらの座右の銘である「用意周到、優柔不断」に則って深呼吸を3回してから
2番線松山寄りのホームの端でデジカメから通してクモヤを想像する。OK!
 だてにおいらは北伊予駅で写真を撮っているわけではない。今まで積み重ねてきた実績が
構図を完成させるのだ。この位置では先の"タイガース列車"を撮った実績があり手前味噌ながら
問題ないと思っている。しかし、カメラは素人である。専門家から見れば幼稚な構図であろうが
自己満足のアマチュアカメラマンにとっては"これでいいのだ。
 やがて列車の到着を告げる無愛想なお姉ちゃんの放送が鳴り響く。
「まもなく、1番線に列車が入ります。足元の白線・・・・・」
いつ聞いても、いただけない。メカニカルな放送だ。
 北伊予駅北側の踏切が鳴り出し、前照灯を煌々と照らした物体が近づいてくる。
今回は停車で減速するため連写は行わずピンポイントでしとめる。遠景モードは"山"。OK!
 被写体が大きくなるにつれ、ん?色が・・・191系とは違う!今は懐かしい旧国鉄色!
クリームとアズキ色の交直流型ではないか!カメラを持つ手に力が入りピンポイントで撮影する。
ななな、なんと、クモヤ191系ではなく、クモヤ443系じゃないか。


 北伊予駅1番線に入線するクモヤ443系       クモヤ442-2後方はクモヤ443-2

いずれにしても初めて見る車両だ。停車後は前から後ろから嘗め回すように観察する。
 車両は宇和島方から、クモヤ442−2+クモヤ443−2であり、京キト(京都総合運転所所属、
旧向町運転所・・・こちらのほうがすっきりして分かりやすい)
遠路はるばるご苦労さん。と、声を掛ける。
1号車(クモヤ442−2)の助手席側にカメラ発見!キョロキョロしているおいらが後に
ビデオかDVDに写り、末代までの恥をさらすのではないかと心配しながら後方へ移動する。
 このクモヤ443系はすでに紹介したクモヤ191系の交直両用版であり検測性能も同一である。
1975年に改造ではなく新造車として登場し、交流区間では50,60Hz両用走行可能車だ。
前面は非貫通型のクハ481−300番台を踏襲しており雑誌で見慣れた顔をしている。
車両は3までナンバーを打っているようだが手元の資料では京キトと水カツ(勝田電車区)の2所に
配属されているようだ。
 今日は薄曇りとはいえ、暑い!クモヤ443の車内では検査員がAU72の冷房に癒されながら
こちらを見ている。思わずピースをしたくなったが、もうおいらも四十を過ぎてバカなことは
できないと、上がりかけた右手を左手で収める。
 先頭車両のカメラで動揺したが我に返り、離合の4638Dとのツーショットを撮るべくポイントを探す。
いくらキハ32単行とはいえ、顔を同時に収めるには2番線ホームの宇和島寄りにかなり寄らなければ
ならなそうだ。ひょっとしたら入らないかも?と疑問を投げかけながら、ホームの端で待機する。
ダメなら443系が発車して顔が並んだときに撮ろおっと!覚悟を決め443系に思いをはせた。
 ここで、ふと疑問がわいてきた。クモヤ443系は基本的には一昔前まで全国津々浦々の
交流電化区間では特急列車としてブイブイ言わしていた485(481,483)系一党だ。
当然、四国には配置がなく、また四マツの運転士も初のお目見えではないだろうか?
どどど、どこの運転士が運転してるんだろう?
大阪?まさか!岡山電車区?高松運転所?松山運転所?・・・岡山電車区は児島まで、
高松運転所も多度津運転区も松山以南は担当区域でないはず。はて?
ひょっとしたら485系の運転実績のある岡山電車区の運転士がハンドルを握り、
四国島内は高松、多度津、松山各所の運転士が同乗し線路指導を行っているのでは・・・?
などと素人だからこそ、勝手に楽しい想像の世界に入ってしまう。
 でも、どどど、どこの運転士が運転してるの?
 そうこうするうち、お馴染みの北伊予駅南側の踏切が鳴り出した。
と同時に、本日限りの2番線に4638Dの到着を告げる「サー」と、言う音が入る。
本当は「まもなく2番線に・・・」だろうがここ半年、音声が聞こえた試しがない。
もうちょっとしっかりしょうや、JR四国さん。

4638D到着。
かなり宇和島寄りに寄ったがやはり顔は並ばないので、ままよと、443系出発まで待つことにした。
やがて1234時、1番下り、2番上り信号が緑に変わり、出発進行!
4638Dのキハ32に焦点を合わせ443系が来るのを待つ。
並んだところでパチリ。振り向いて1線スルーのRに傾いた車体をパチリ!
してやったりである。


2番線到着の4638D(キハ32)とクモヤ443系   1番線伊予市に向け出発するクモヤ443系

ルンルン気分で任務を終え、跨線橋を渡ろうとするとキハ32の位置が松山寄りにずれて
止まっているではないか。ななな、なんで?これやったら顔が合うのに。
不思議な気分だったが数秒後に理由は判明した。
一旦発車しかけたが乗客が走ってくるので拾うべく停車したのであった。
やさしい運転士である。心温まる思いで、再びマイカーで仮の任務に戻るおいらであった。
 その夜、「目標撃沈!作戦成功せり!トラ、トラ、プーさんじゃ!」と、
重ね重ね97艦攻機上の淵田中佐の気分で友人R氏に暗号メールを送ったのは言うまでもないと、
思いきや、任務終了後のビールのとりこになり、しっかり忘れてしまっていた・・・。
ごめんちゃい!
 しかし、後日友人R氏のホームページの第1弾を飾ったことは言うまでもない。


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