べからず集

 個人ページでの情報発信のリスクについて
 〜(善意の)ホームページ作者のために(あるいは、一般の人へ)〜 ('01.5.30)(加筆 '04.4.8)

 世の中にあまたある個人ページには沢山の情報が詰まっています。あなたも何かのページで情報発信しているかもしれませんね。
 しかし、個人の作ったページといえども、インターネット上に公開している以上は不特定多数の目に触れる可能性があるわけです。単なる仲間内だけのミニコ ミ誌などとちがうのはこの広域性です。マスコミや書籍などの情報と同等またはそれ以上の極めて強力な情報発信手段といえます。このためにホームページに載 せる情報には責任を持つ必要があります。

 もし、誤った情報(あるいは真実の情報であっても)を元に誰かが損失を被った場合、思わぬ所からクレームがつくことがあります。
 クレーム程度なら訂正とお詫びですみますが、その内容と状況によっては損害賠償請求をされる可能性が あります。特に、商売に絡む内容の場合、その危険は高いと言えます。

 実際、損害賠償ではありませんが、ある種の商品に関する個人ページで問題が生じたケースがあります。
 
 ある有名で有力な販売店A店が発行する広報用のペーパーメディアがあり、そこに、ある事実関係に関する情報が提供され ていました。提供された情報を一般的事実としてXさんは自分のページに載せたところ、Yさんがその情報を見ました。Yさんは、自分が見たページが個人によ るページであるにもかかわらず公式なページと勘違いし、さらにその情報を疑うことなく鵜呑みにしました。
 その上、YさんはB店が言うこととページの情報が違うため、「おまえの販売店は嘘を言っている、信用できない」とB店を非難したそうです。そのため、Y さんと販売店の間の取引が不成立になりかけたそうです。
 こまったB店は、その商品の卸元に対して、そのような情報を掲載しているホームページを何とかして欲しいと泣きついたそうです。

 その卸元は個人ページのオーナーであるXさんに対して誤情報掲載への抗議と訂正を要求した上、今後、卸元およびすべての 契約関係にある販売店で何らかの損害が生ずれば損害賠償請求も辞さないという態度をとっています。一つ間違えば、訴訟に発展しかねませんでした。

 なお、このケースでは、卸元とも極めて関係の深い有力な販売店A店の提供する情報そのものが間違っており、個人ページの オーナー自身が間違った情報をつくり出したわけではありませんでした。

 個人ページという、当てにならないものの内容を自分自身で確かめもせず間違いないと勘違いした閲覧者Yさんに問題があったわけです が、事実としてホームページの誤情報が商取引に影響を与えてしまったわけです。
 このように、直接に損失をあたえる情報/誤情報でなくても、意図的な情報攪乱や誤情報の発信でなくても、商取引に影響を与えるケースはありうるわけで す。
 特に昨今は不況故、小さな企業ほど神経質になる傾向があり、訴訟へと発展するケースがあり得ます。また、今後社会がよりアメリカ化することで訴訟が増え る可能性もあります。
 こうしている間にもどこかの企業があなたを訴える準備をしているかもしれません。

 実際にはどの程度損害賠償や名誉毀損が認められるかは分かりませんが、支払いを命ぜられる可能性は十分にあり、たとえ棄却されても、 訴えられること自体が個人にとっては大変なリスクです。
 ばあいによっては恨みを買い、不法行為によってあなたや家族の社会的地位が傷つけられたり生命の危険にさらされる可能性もあります。

 そのような事態を避けるためにはいくつか方法があります。

情報の出所を明示しておく
 報道、批評、研究その他の目的でなら原典を明らかにした上、文章全体の一部になら、原典を部分引用することができます。
 学術論文などでは出典を明示することは常識です。参考文献もあれば挙げておくと良いでしょう。
(ただし、著作権法の引用の用件を満たす必要があります。文末の各関連ページを参照して下さい
 こうすることで、あなたが根拠なくつくり出した情報でないことが明らかにできます。
 

 しかし、学問以外の世界では情報の出所を明らかにすること自体が誰かに損害・損失を与えたり迷惑をかけることがあります。非公開の情 報の場合はもちろん問題がありますが、一般向けに公開している情報であるにもかかわらず、慣行に則った方法で引用されたりリンクされることをも好まない場 合もあります。法律上も明確ではないようです。
 学問や出版の世界の常識は一般社会では通用しないことがあります。リスクを少なくするには、先方に引用や情報の掲載やリンクの可否を問い合わせをすると 良いでしょう。
 それができないような情報は、相当なリスクを覚悟で掲載する必要があります。

 また、情報の出所を明示したとしても、埋もれていた誤情報をインターネットを使って広く知らしめたことで、あなたが何らかの責任を問 われる可能性はあるかもしれません。

異なるルートで内容が間違いないことが確 かめられていない情報は載せない
 あやふや、不確かな情報は混乱を生みますし、誤りであるなら損害賠償請求や名誉毀損で訴えられる可能性は高いと言えます。不確かな内容をどうしても書か なければならないとき、すくなくとも情報源を明示しておきましょう。

 不確かで情報源も明示できないような情報(これはいわゆる裏情報になると思いますが)の掲載は、大きなリスクを負う覚悟が必要です。

情報の信頼性を保証できないことを明示し ておく
 自分自身が情報源であったり自分の取材である場合は、情報の信頼性について自分で責任を負わなくてはなりません。また、自分の取材であることと、個人の 取材であるために信頼性に限界があることを明示すべきでしょう。

 自分の取材ではない場合、必ず情報源があるはずです。 上にあげたような理由でその情報源が何であるか明示できない場合、情報の信頼性が低い、または情報内容の保証はできないことを明示しておく方がよいでしょ う。たとえば次のように。
『本ページは○○が運営する個人ページです。情報内容については可能な限り正確になるようつとめていますが、個人故検証が行き届かな かったり、情報源に誤りがある場合があり、内容の保証はできかねます。かならずご自身でご確認下さい。』

 少なくとも、閲覧者に情報の扱い方を慎重にさせる効果はあるはずです。

企業や個人への攻撃的内容、何らかの損失 を与える内容は書かない
 戦い続ける意志がないなら、あるいは損害賠償請求や名誉毀損の訴えを受けてたつ覚悟がないなら、あるいは自分の身の安全の確保ができないのなら、どんな にあなたの情報や主張が正しくても発信しないことです。
 その覚悟があるのなら、是非信念を貫いて欲しいと思います。

 軽い気持ちで情報発信をすることは、大変に大きなリスクを伴います。
 
 

 インターネットという新しい特殊な環境故、見解が統一されていなかったり責任範囲が不明確だったり、場合によっては匿名性故責任を追 及することが難しいということがあります。しかし、今後どのような判例がでたり法整備がなされ、責任追及がなされるかわかりません。個人ホームページの情 報信頼性が低いことが一般に広く知られるようになれば、また違う判断があるかもしれませんが。

 ともかくも個人で迂闊な情報提供はしない方が賢明です。
 それでも情報提供したいのなら、完全に責任を持って行うか、間違ってもお勧めはしませんがアンダーグラウンドでやっていただくしかありません。
 
 
 

 法律的な問題は、非常にシビアで、個々の状況より判断も違い、時代に合わせて変化もしていきます。最新の情報を得て対応する必要があ ります。
 

関 連 リ ン  ク

岡村久道 サイバースペースの法律  → 「著 作権法入門」内に関連情報

法律情報のポータルサイ ト Houtal → 「インター ネット法律相談室」内に関連情報

著作権について(朝日新聞社)

社団法人 著作権情報センター


追補:
 情報発信は、ホームページだけではありません。
 掲示板、メールマガジン、電子メール、携帯電話……。どれもが個人に広く普及し、誰もが強力に情報を伝えることができます。
 すべてに関して、安易な情報発信が大きなリスクを生む可能性があることを考えておきましょう。




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