こぼれ話

 真実を見抜け!(たとえば先物取引の勧誘) ('04.4.6) '08/9/22一部修正

 儲け話は、決して勧誘されることはありませんっ!

 世の中にはいろいろな勧誘がありますよね。

 その中でも、お金をだまし取ろうとする類の勧誘って言うのは引きも切りません。金利の低いこのごろ、社会人に対しては投資話の電話勧 誘が多いかと。

 ワンルームマンション投資、株式投資、為替、先物投資……。

 私の所にも業界大手の営業から、先物取引の勧誘がかかってきました。決まり文句は「今投資すれば儲かる」。じゃあ、あなたやればいい じゃない、と心の中で思いながら、ちょっと聞いてあげます。

「季節ごとに値が動く商品<●●>がある。これから需要期になるがその前なので値が安くなっている。需要期には常に最も高い値を付ける ので値上 がりは確実だから、今是非買うべきだ。これまでにも今のような状況では値上がりしてきた。」そして、さまざまなデータを送りつけられ、話を聞く限り、本当 に儲かりそうに聞こえる。

 先物とは半年先に商品を買う権利のことだという知識はあったものの、先物は危険だとかという断片的な知識しかなく、法的・理論的な裏 付けが ありません。そこでこれを機会に調べてみました。こんな時こそインターネットです。


 公的なサイトから掲示板まで、「先物取引」「被害」などをキーワードに可能な限りさまざまなサイトにあたってみました。その結果、先 物市場は法律で整備された市 場で、市場規模自体は小さいこと。証 拠 金と言って、実際の商品の金額よりかなり少額な投資(取引に参加するためのお金)で取引を行うため、わずかな投資でもその数十倍の金額の取 引を行えるものであること。言い換えれば、少額の投資で何倍の利益がでることもあれば何倍もの損が出ることもある、ハイリスク・ハイリターンなものであることがまずわかりました。

 一方、国民生活セン ターをはじめとして個人の告発ページなど、先物被害の報告や警告はあふれています。

 市場そのものは法律に則った正当な物ですから、これは勧誘の仕方や業者の取引のさせ方の方に何か本質的な問題があると思えます。

 インターネットで仕入れたさまざまな情報を総合して考えてみました。

●先物市場について

 先物市場では、気候などの要素で値動きが激しい商品について、まず、たとえば半年先に商品を買う契約が行われます。例年通りならこの 値段だが、今予想されている気候などの情報を加味するとこうなるなどとして最初の値段が決まります。
 その後、半年間の間、その時々の状勢変化(予想外の冷夏だったとか)を見ながら、市場参加者の間でその商品を買う権利を取り引きし合っています。その権 利の価格が自分が買った値段より高くなれば儲かるし、安くなれば損をする。情報をすばやく入手し、他の市場参加者の腹を読んで、上がりそうなら買い下がり そうなら売る(取引の方法は、ウリから入るというやり方もあります)という積極的な売り買いから利益を得るのです。かなり 専門性・専従性が必要な取引であり、別の見方をすれば”自分の利益は他の市場参加者の損から得る”構造で、「賭博」性の高い取引に思えます。

 生産者は先物市場に出すことで、予想がつかない半年後の価格を例年通りの価格にできるので、この制度は生産者側にメリットがあるよう にみえます。

●彼らの説明のウソ

 さて、彼らの説明に立ち返ります。

 先物取引で勧められたのは、「5限月」という半年後の市場価格を予想する取引。不確定要素がとても大きいものです。これを取り引きさ せることに、先物取引業者の勧誘のウソがありました。

 業者は「これから需要期を迎える●●は、値上がりする。儲かるのは確実だから先物取引をしなさい」と言っていました。
 確かに、例年冬は●●が値上がりして春には下がります。
 しかし、今(12月)取り引きしようとしている「5限月」の●●は、半年後の5月に売られる●●のことで、価格はその予想市場価格。だから、商品そのも のが需要期(1月)に高くなると言っても、5月の値段とは関係ありません。
 1月の高い値段をみせて、通常それより安い5月の●●も同じ値段になると嘘を言っていたわけです。それだけではなく、さまざまなデータを見せながら、 1〜2ヶ月後に予想される値上がりの話ばかりするのです。5月には関係ないのに(少しはあるかもしれませんし、逆に値下がりするかもしれません)。
 営業が説明するような明らかに予想される変動要因ははじめから織り込まれているので、先物取引は不確定要因から利益を上げるしかないのです。そこをごま かして、だましたり錯覚させたりしているのです。

 分からないことは何でも聞いてくださいというので、営業に核心を突くような質問をすると、「さあ、どうなのかなあ。部署が違うので私 にはよくわからない」などといって、とぼけてごまかしにかかります。

 これは立派な詐欺ですね。しかも他の営業も全く同じことを言って勧誘していましたので、これは組織ぐるみです。これでも業界大手です よ!!

 何故、一般の人を巻き込むのか?
 一番わかりやすいのは取引をさせることで手数料を稼ぐことです。ただし、調べてみると、それだけでは説明の付かない取引が沢山されていることがわかりま す。手数料収入は経常利益のわずかで、彼ら自身も積極的に市場で取り引きして利益を上げているのです。
 とても小さな市場で、お互いに相手からお金を奪い合う世界ですから、百戦錬磨の業者からより素人からはぎ取るほうがはるかに楽でしょう。盛んに新規の顧 客を勧誘したがるのはここに理由があるのかもしれません。
 もし、最初は儲かっても、追加投資をどんどんさせられて結局は損するばかりかもしれません。

*  *  *

 インターネットを上手に活用することで、ウソを見破ることもできました。
 たとえウソにならない勧誘であっても、非常に難しい取引であることが分かりました。とても素人が手を出せるものではなかっ たのです。

 先物で利益を上げることはもちろん可能ですが、情報を沢山持ち、一日のうちに何度も売り買いをするぐらいでないとなかなか難しいよう で す。もしやるなら、手数料が少なく業者の指示を受けずにすむオンライントレードで しょう。これもインターネットあってこそです。
 先の先物業者の営業と話をしているときにオンライントレードのことをちょっと話したら、憎々しげにしてました。インターネットは彼ら の敵なんですね。




 ついでながら、昨今は外国為替取引を勧誘してお金を集め、計画倒産するという手口もあるようです。「儲け話を勧誘する人はいな い」のです。儲け話には裏がある!お 気をつけくださいませ。
 ちなみに、外国為替証拠金取引というものの電話勧誘があります。証 拠金によって実際よりも大きな額を取引するというしくみは先物取引に似ていますが、法整備も監督官庁もなく、ほとんど業者のしたい放題だとか。取り締まる 法律そのものがないので国民生活センターも対処に困っているそうです。絶対に手を出してはいけません。

※現在、外国為替証拠金取引(FX)は、金融庁の管轄下に置かれ、勧誘を禁止するなどさまざまな制限の元に運営されています。以前の無法状態の反省からかなりきびしく監督されているので、その業者の規模や預けたお金の保管状態(外部の銀行などに預託されている業者は倒産リスクがない)、むりのあるサービス提供(通常開きがあるはずの売値と買値が同じとか)などに注意すれば、比較的問題のないものになっています。しかし、証拠金取引ですので、わずかの資金で大きな利益も大きな損も出ますし、昨今のような金融市場の混乱が起こっている時には、思わぬ損(ときに利益)を生むこともあり、業者のシステムトラブルも自分のリスクとして考えなければならない、難しいものです。
 昨年まで5年ほどはひたすら外国の通貨を買っていれば莫大な利益があげられましたが、そのような時代は終わったので、FXは儲かるなんて安易に考えてはいけませんよ。('08/9/22追記)


その後:
 またその業者から電話がありました。例の5限月の商品、5月の時点で上がっていたので、「ほら上がっていたでしょう?」と 言ってきました。で、「これからは下がりますから、ここで『ウリ』で取引すれば儲かります」とのこと。
 私はきっぱり断ったのですが、その後この商品はかつてなく上がり続け、しかも乱高下を繰り返しています。こんな取引に手を出 していたらあっという間に大損し、業者の言うままに取引を継続すれば数百万〜数千万円ぐらいの損をしていたことでしょう。


 

こぼれ話の目次のページへ戻る   目次のページへ戻る