アルバイト


私は高校生の頃からいろんなアルバイトをしてきた。

プリ○ハムの小売店への配達から年末の売り出し、鋳物のバリ取り、シャンデリアの

組立、梱包、家のチラシ配りまであらゆるバイトをしてきたのである。

しかし辛かったのは、なんと言っても交通調査だった。

陸橋の上から、各車線に一人ずつ配置され、ただひたすらカウントするのである。

2時間仕事をして、1時間休憩と言うシステムである。

昼の12時から、翌日の昼の12時まで24時間の3分の2であるわけだから、16時間

労働であるのだ。

しかも1万円ぽっきりで・・・・

11月の中頃に実施された調査だったのであるが、私自身11月の気温を侮っていた。

夜中の12時を回る頃には、もう耐えられないくらい寒いのである。

休憩の1時間も、当時はコンビニなどあろうはずもなく、耐えるだけの時間が過ぎていく。

ある者は公園のドカンの中、またある者はダンボールにくるまって寒さを凌ぐのである。

私はダンボール派だったのであるが、本当に凍え死ぬかと思った。

二度とやりたくないバイトの一つである。

 

思い出深いのは千葉県の津田沼でやった、ロッテリ○ハンバーガーのバイトである。

当時は「ひろみ郷」がCMをしていたが、「ミスド」に所ジョージが居ないのと一緒で、

もちろんそんなかっこいい店長は存在しない。

そこは朝の6時から入って、昼の12時で交代と言う仕事だったのであるが、当時その

時間帯に仕事する人のことをUPと呼んでいた。逆に後かたづけをする人をDOWNと

呼ぶのである。中間は何と呼ぶのかは今だに知らない。

初めてバイトに行った時は、1時間以上もマニュアルビデオを見せられ、先輩方にちょこ

ちょこっと教えてもらったらすぐ本番である(もう本番かいっ!)。

新米は後ろでレタス切りからやらされる事になっていた。

ただひたすらレタスを切るのである。

スライサーで大半カットして、スライサーで処理できない屑レタスを包丁で刻んでいく

作業だ。

包丁さばきも板に付いた頃、指をおもいっきり切ってバスケット一杯のレタスを血に染

めたこともあったが、通販でやってる万能スラスサーがあればこんな事にはならなかった

のに・・・・・と今でも思う事がある。

失敗と言えば、オーダー通りに出したにもかかわらず、肉が2枚鉄板に残っていたこと

があった。

「なんじゃらほい?この肉は・・」鉄板の上でひたすらジュージューと焼けている肉が2枚・・

肉(パテ)無しのデラックスバーガー(マクド○ルドで言うビッグマック)が出てしまったのだ。

幸い包む人があまりに軽いのに気づき、大事には至らなかったが、冷や汗ものである。

(2枚重ねのレタスサンドなんて食いたくね〜っての!!)

そうそう・・・オーダーと言えば、ハンバーガーのストックはベテランのアルバイターが判断

して、厨房に指示をするのである。

例えば、普通のハンバーガーが3つとチーズハンバーガーが3つ要るのであれば・・・・

「シックス、チーズスリー プリーズ」ってな具合である。

厨房の方では、そのオーダーを反復して作業にかかる。

先輩は、「出来上がったら、シックス、チーズスリー、ラッピッピ・・・」と言って出すんだぞ!

と教えてくれたが、ラッピッピの意味が分からない。意味を聞こうかとも思ったが、

怖い先輩だったのでやめた

「ラッピッピ」とはなんぞや!!

疑問は深まるばかりであったが、業務になんの支障もないので、私はその呪文を言い続

けたのである。しかも3ヶ月も・・・・

後から後輩が出来たけど、後輩からも「ラッピッピ」って何ですか?と言う質問は返って

こなかった。私が怖かったのだろうか?(それは今も謎である)

アルバイトをやめる頃、謎の呪文「ラッピッピ」の意味がようやく解明された。

「ラッピッピ」とは「ラッピングプリーズ」の事だったのである。

謎が解明されてから聞くと、そう聞こえないでもない。

ビートルズのレットイットビーを何回聞いても「レリフィー」としか聞こえない私が、「聞こえ

なくもない・・・」なんて行っても説得力もないが・・・

しかし、3ヶ月もの間、謎の呪文を言い続けた私っていったい・・・・

 

余談ではあるが、ハンバーガーショップと言うのは、女性アルバイターが入れ替わり立ち

替わり入ってくる。

しかも「ちと、とろくさい女子高生」が大半である。

夜、夜間金庫へ行くときに同行させ、「○○店の○○で〜す!!これから袋を入れます

のでよろしくお願いしま〜す」と、片手を上げて言うのだぞ・・・・とウソを教えると、当分

の間言い続けるのである。

女の子同士仲良くなってから、そのウソが発覚するのであるが、とっても可愛い子だと、

「あれは嘘だよ」ってそっと教えるのは私であった。

「あっら〜先輩ってオチャメなんですね!!今度お茶でも一緒にどうですか?」

というお誘いが一度もなかったのは言うまでもない。