あるバドミントンの団体戦で、歳のことも考えず、必要以上に頑張ってしまったので、とうとう肘を壊してしまった。ほっとけば治るだろうと思われたその肘は、思ったよりも重症のようだ。3週間が過ぎても依然として良くならない。しかたなく嫁の外反母趾を治した接骨医に行くことにした。 「テニス肘ですね・・・・」 バドミントンで壊したっちゅうねん。なんでテニス肘やねん・・・なんか釈然としなかったが、注射を打つわけでもなく、レントゲンを撮るわけでもない。塗り薬だけで終わってしまったのだ。クラブの子にその事を話すと、 「鍼なんかどうですか?」 と言われてしまった。そうだ、まだ体験したことのない鍼があるではないか!しかし、未経験だけに不安も大きくつきまとう。鍼ねぇ・・・・その後、鍼のことを気にして見るも、鍼灸院が見つからない。捜し物は、本当に必要なときは見つからないものなのだ。 それから数日後、いきつけの銀行の近くでふと看板を見ると、○鍼灸院と書いてある。おぉ・・・灯台もと暮らしとはこのことなのだ。さっそく入ってみることにした。看板には○○ビル3Fと書いてあったのだが、実際は2階だった。なんなんだ・・・なんで看板と違うねん!と心の中では思いつつも、劇的に治るであろう鍼の治療を前に私の心は期待と不安で一杯だった。 「あの・・・初めてなんですけど・・・」 そう言うと看護婦さんらしき人は、その場から消え去った。10人くらい座れる椅子があったのだが、私を含めて待合室には二人しか居なかった。流行ってないのだろうか?ちょっと不安がよぎったが今更引き返すこともできない。 「トンヌラさ〜ん、とりあえずお入り下さい・・・」 ん?とりあえずとはどういう事なのだろう。そう思いながらもカーテンを開けて入っていくと、小さなベッドが二つ組になって、間仕切りで仕切ってある部屋がいくつもあった。その一室に通されると、すでに他の患者がベッドに横たわっていた。中年のおじさんである。あぁ・・・若いOLと同じ治療室だったらなぁ・・・とも思ったが、そんな組み合わせに病院側がするはずがない。 「トンヌラさん・・・パンツ一枚になって、そこのベッドで寝ていて下さいね」 「どこが痛いの?あっ・・・肘ね」 カルテらしき物を見て、痛いのは肘だとわかったらしい。しかし、何をして痛くなったかとか、いつから痛いのかとか、どうしたときに痛いとかは一切聞かない。肘だとわかったのに、先生は唯一身にまとっている衣服(パンツ)をもずらしてしまった。いわゆる半ケツ状態である。 ![]() しかも、半ケツ状態にしてから、おもむろに立ち上がって、部屋を出て行ってしまったのだ。半ケツ状態のまま5分ほどほおっておかれたのだ(めっちゃ格好悪い)。すると、またまた先生がやってきた。とても忙しいらしい。 鍼を刺し終わったと思ったら、先生と入れ替わりに看護婦さんがやってきた。 「それじゃ、電気を通しますねぇ・・・ちょっとピリピリしますよ・・・」 そう言って電気を通し始めた。 「15分間、そのままで居て下さいね。」 と言い残し、看護婦さんは去っていったが、うつぶせのままの15分はかなりキツイ。枕に顔を付けての体制だから、息ができないのである。しかも全身鍼だらけなので、へたに動くことすら出来ない。酸欠状態の15分(及び半ケツ状態の15分)はとても長く感じられたが、ピピピピピ・・・・とタイマーが鳴り、なんとか息がある内に終わったようだ。 ![]() しかも、彼も痛い肘には一向に触ろうとしないのだ。 「じゃ・・・今度は仰向けになって」 助手の指示通り仰向けになると、すぐに先生が入ってきて、またまた足から鍼を打ち出すのだ。今度は仰向けの状態なので、見ようと思ったら、見られるのであるが、やっぱり恐くて見られなかった。 先ほどと同じように、電気を通すと、またまた15分耐えなければならないのだ。しかも今度はさっきよりも電気の量が多く感じられる。電気が通る度に、体がビクンビクンするのである。端から見ると、ハリネズミをいじめているようにしか見えないだろう。 ![]() 鍼治療が終わり、仰向けでのマッサージも終わり、やっとこさ治療全体が終わったようだ。病院内には桃源郷のような音楽までかかっている。中国語らしい会話も飛び交っている。ここが日本だと言うことを忘れさせてくれるような、本格的な鍼灸院らしい。 服を着て、受付で支払いを済ませようとすると、初診料3000円、治療費6000円、合計9000円も取られてしまった。値段の方もかなり本格的なのだ。 余談ではあるが、帰りの際の待合室は座れないほど混雑していた。最初に抱いた不安(流行っていない病院)と言うのは間違っていたようだ。 |