ツボ


 笑いはカロリー消費にとても良いと、嫁がエッセイに書いていたが、笑う

ことの許されない場所で笑いたくなると、それはもう拷問である。

 先日、甥の結婚式のために名古屋に行ったのだが、それは神式の結婚

式だったのである。

 プァーーーといった音(ストローに風船が付いていて、空気が出る時

に音が出るヤツに似ている)と共に、はたきの化け物みたいなのをバサバサ

と振り「かしこみ〜かしこみ〜」とやるアレである。

 

 式自体はつつがなく行われたのであるが、そのプァーーーーという

音が、私が今まで記憶していたソレとは違っていたのだ。時々鶏の首を絞め

たような音が鳴るのだ。なんなんだ?この音は!!と思った時には、もう

ソレはしっかりと笑いのツボを踏んでいたのだ。

 私の前には新婦の親戚がズラリと座っているので、笑うことは許されない。

でもおかしい・・・・鶏の首を絞めた音が鳴る度に猛烈におかしいのである。

 式が終わって、その事を新郎の母(私の実姉)に言うと

「あぁ・・・あれは向こう(新婦側)のおじさんがやってたらしいよ・・・」

と笑いながら言っていた。

 この時の為にと練習を積んできたのであろうか?

 向こうの親戚ともなれば、大声で悪口を言う訳にはいかないので、この話

はこれで終わりにしようと思ったのだ。

 しかし・・・しかしである。式の後の披露宴の余興でも、そのおじさんが登場

してきたのである。式の後、嫁にもその事を話しておいたので、嫁も笑いの

ツボモードが全開であったのだ。

 プァーーーーピーーーー・・・・と音が鳴る度に、二人で顔を真っ

赤にして笑いを堪えるのである。

「も〜やめてくれ〜」と、何度も心の中でお願いするのだが、その願いは叶え

られるはずもなく、延々プァーーーピーーーと容赦なく鶏の首を絞め続けるの

である。

 嫁など、座った席が新婦側を向いていたので、ハンカチを顔に当てて泣きな

がら笑っているのである。箸が転げてもおかしい時期はとっくに過ぎている

嫁であるが、どうも笑いのツボモードが半端ではなかったらしい。

 今後、あの音で笑いのツボが全開になるようであれば、式には出席出来ない

夫婦になってしまうのである(それこそ笑い事ではないのだ)。

 

 余談ではあるが、今回の披露宴の料理は何かとエビが多用してあった

(甘エビのさしみ、エビの天ぷら、エビの酢の物、伊勢エビの蒸し物etc・・・)

 突然、食事の途中で嫁から一枚のメッセージを渡されたのである。

「本日の食材はエビ!!」

その紙切れにはそう書かれてあったのだ。舞台裏では料理の鉄人が腕を

振るっていたのだろうか?しかし、その割りにはあまり美味しくなかったぞ!

ただ、料理の量自体はプロレスラーでもお相撲さんでも満足するくらい出

てきたのだが・・・・

質より量かいっ!!