USO/9001(2000)j

Third edition 2000-12-15

品質マネジメントシステム−要求事項

  

0 序文

0.1 一般

0.2 プロセスアプローチ

0.3 ISO9004との関係

0.4 他のマネジメントシステムとの両立性

1 適用範囲

1.1 一般

1.2 適用

2 引用規格

3 定義

4 品質マネジメントシステム

4.1 一般要求事項

4.2 文書化に関する要求事項

4.2.1 一般

4.2.2 品質マニュアル

4.2.3 文書管理

4.2.4 記録の管理

5 経営者の責任

5.1 経営者のコミットメント

5.2 顧客重視

5.3 品質方針

5.4 計画

5.4.1 品質目標

5.4.2 品質マネジメントシステムの計画

5.5 責任,権限及びコミニュケーション

5.5.1 責任及び権限

5.5.2 管理責任者

5.5.3 内部コミュニケーション

5.6 マネジメントレビュー

5.6.1 一般

5.6.2 マネジメントレビューヘのインプット

5.6.3 マネジメントレビューからのアウトプット

6 資源の運用管理

6.1 資源の提供

6.2 人的資源

6.2.1 一般

6.2.2 力量,認識及び教育・訓練

6.3 インフラストラクチャー

6.4 作業環境

7 製品実現

7.1 製品実現の計画  

7.2 顧客関連のプロセス

7.2.1 製品に関連する要求事項の明確化

7.2.2 製品に関連する要求事項のレビュー

7.2.3 顧客とのコミュニケーション

7.3 設計・開発

7.3.1 設計・開発の計画

7.3.2 設計・開発へのインプット

7.3.3 設計・開発からのアウトプット

7.3.4 設計・開発のレビュー

7.3.5 設計・開発の検証

7.3.6 設計・開発の妥当性確認

7.3.7 設計・開発の変更管理

7.4 購買

7.4.1 購買プロセス

7.4.2 購買情報

7.4.3 購買製品の検証

7.5 製造及びサービス提供

7.5.1 製造及びサービス提供の管理

7.5.2 製造及びサービス提供に関するプロセスの妥当性確認

7.5.3 識別及びトレーサビリティ

7.5.4 顧客の所有物

7.5.5 製品の保存

7.6 監視機器及び測定機器の管理   

8 測定,分析及び改善   

8.1 一般

8.2 監視及び測定 

8.2.1 顧客満足

8.2.2 内部監査

8.2.3 プロセスの監視及び測定

8.2.4 製品の監視及び測定

8.3 不適合製品の管理  

8.4 データの分析

8.5 改善

8.5.1 継続的改善

8.5.2 是正処置

8.5.3 予防処置

  

  

  

  

  

  

  

  

  

  

  

  

  

  

  

0 序文

0.1 一般

品質マネジメントシステムを採用することは,組織による戦略上の決定とすべきである。

組織における品質マネジメントシステムの設計及び実現は,変化するニーズ,固有の目標,提供する製品,用いられているプロセス,組織の規模及び構造によって影響を受ける。品質マネジメントシステムの構造の均一化又は文書の画一化が,この規格の意図ではない。

  

この規格が規定する品質マネジメントシステムについての要求事項は,製品に対する要求事項を補完するものである。

  

この規格は,顧客要求事項,規制要求事項及び組織固有の要求事項を満たす組織の能力を,組織自身が内部で評価するためにも,審査登録機関を含む外部機関が評価するためにも使用することができる。

  

この規格は,ISO9OOO(品質マネジメントシステムー基本及び用語)及びISO9O04(品質マネジメントシステム−パフオーマンス改善の指針)に記載されている品質マネジメントの原則を考慮に入れて作成した。

  

  

  

0.2 プロセスアプローチ

この規格は,顧客要求事項を満たすことによって顧客満足を向上させるために,品質マネジメントシステムを構築し,実施し,その品質マネジメントシステムの有効性を改善する際にプロセスアプローチを採用することを奨励している。

  

組織が効果的に機能するためには,数多くの関連し合う活動を明確にし,運営管理する必要がある。インプットをアウトプットに変換することを可能にするために資源を使って運営管理される活動は,プロセスとみなすことができる。一つのプロセスのアウトプットは,多くの場合,次のプロセスヘの直接のインプットとなる。

  

組織内において,プロセスを明確にし,その相互関係を把握し,運営管理することとあわせて,一連のプロセスをシステムとして適用することを,“プロセスアプローチ”と呼ぶ。

  

プロセスアプローチの利点の一つは,プロセスの組合せ及びそれらの相互関係とともに,システムにおける個別のプロセス間のつながりについても,システムとして運用している間に管理できることである。

  

品質マネジメントシステムで,このアプローチを使用するときには,次の事項の重要性が強調される。

a) 要求事項を理解し,満足させる

b) 付加価値の点でプロセスを考慮する必要性

c) プロセスの実施状況及び有効性の成果を得る

d) 客観的な測定結果に基づくプロセスの継続的改善

  

図1に示すプロセスを基礎とした品質マネジメントシステムのモデルは,4.〜8.に記述したプロセスのつながりを表したものである。この図は,インプットとしての要求事項を決定するうえで顧客が重要な役割を担っていることを示している。顧客満足の監視においては,組織が顧客要求事項を満たしているか否かに関する顧客の受けとめ方についての情報を評価することが必要となる。図1に示すモデルはこの規格のすべての要求事項を網羅しているが,詳細なレベルでのプロセスを示すものではない。

  

参考 “Plan-Do-Check-Act”(PDCA)として知られる方法論は,あらゆるプロセスに適用できる。PDCAを簡潔に説明すると次のようになる。

Plan: 顧客要求事項及び組織の方針に沿った結果を出すために,必要な目標及びプロセスを設定する。

Do: それらのプロセスを実行する。

Check: 方針,目標,製品要求事項に照らしてプロセス及び製品を監視し,測定し,その結果を報告する。

Act: プロセスの実施状況を継続的に改善するための処置をとる。

  

  

 

0.3 ISO9004との関係

この規格とISO9004は,整合性のある一対の品質マネジメントシステム規格として開発されており,相互に補完し合うように作成されているが,独立して使用することもできる。このニつの規格は,適用範囲が異なるが,整合性のある一対として適用できるようにその構成を同じにしている。

  

この規格は,品質マネジメントシステムに関する要求事項を規定している。これらの要求事項は組織が内部で適用するため,審査登録のため又は契約のために用いることができる。この規格は,顧客要求事項を満たすに当たっての品質マネジメントシステムの有効性に焦点を合わせている。

  

ISO9004は,この規格よりも広い範囲の品質マネジメントシステムの目標についての手引であり,有効性はもとより,組織の全体としてのパフォーマンスと効率との継続的な改善のための手引を提供している。ISO90O4は,トップマネジメントが,この規格(ISO9001)で規定する要求事項の範囲を超えて,組織の実施状況の継続的な改善を目指そうとする場合の手引として推奨される。しかしながら,ISO9004は,審査登録又は契約のために使用することを意図したものではない。

  

  

 

0.4 他のマネジメントシステムとの両立性

この規格は,規格利用者の便宜のため,ISO14OO1:1996(環境マネジメントシステムー仕様及び利用の手引)と両立するように構成されている。

  

この規格には,環境マネジメント,労働安全衛生マネジメント,財務マネジメント,リスクマネジメントなどの他のマネジメントシステムに固有な要求事項は含まれていない。しかしながら,この規格は,組織が品質マネジメントシステムを,関連するマネジメントシステム要求事項にあわせたり,統合したりできるようにしている。組織がこの規格の要求事項に適合した品質マネジメントシステムを構築するに当たって,既存のマネジメントシステムを適応させることも可能である。

  

  

1 適用範囲

1.1 一般

この規格は,次の二つの事項に該当する組織に対して,品質マネジメントシステムに関する要求事項を規定するものである。

a) 顧客要求事項及び適用される規制要求事項を満たした製品を一貫して提供する能力をもつことを実証する必要がある場合。

b) 品質マネジメントシステムの継続的改善のプロセスを含むシステムの効果的な適用,並びに顧客要求事項及び適用される規制要求事項への適合の保証を通して,顧客満足の向上を目指す場合。

  

参考 この規格では,“製品”という用語は,顧客向けに意図された製品又は顧客が要求した製品に限られて使われる。

  

  

1.2 適用

この規格の要求事項は はん(汎)用性があり,業種及び形態,規模,並びに提供する製品を間わず,あらゆる組織に適用できることを意図している。

  

組織やその製品の性質によって,この規格の要求事項のいずれかが適用不可能な場合には,その要求事項の除外を考慮してもよい。

  

このような除外を行う場合,除外できる要求事項は7.に規定する要求事項に限定される。除外を行うことが,顧客要求事項及び適用される規制要求事項を満たす製品を提供するという組織の能力,又は責任に何らかの影響を及ぼすものであるならば,この規格への適合の宣言は受け入れられない。

  

  

2 引用規格

次に掲げる規格は,この規格に引用されることによって,この規格の規定の一部を構成する。この引用規格は,記載の年の版だけがこの規格の規定を構成するものであって,その後の改正版・追補には適用しない。

  

ISO9000:2000 品質マネジメントシステムー基本及び用語

  

  

3 定義

この規格には,ISO9000に規定されている定義を適用する。

  

この規格では,製品の取引における当事者の名称を次のように変更した。

    供給者 → 組織 → 顧客

これまで使われていた“供給者”は“組織”に置き換えられる。“組織”とは,この規格が適用される単位を示す。同様に,“下請負契約者”は“供給者”に置き換える。

  

この規格の全体にわたって,“製品”という用語が使われた場合には,“サービス”のこともあわせて意味する。

  

  

4 品質マネジメントシステム

4.1 一般要求事項

組織は,この規格の要求事項に従って,品質マネジメントシステムを確立し,文書化し,実施し,かつ,維持すること。また,その品質マネジメントシステムの有効性を継続的に改善すること。

  

組織は,次の事項を実施すること。

a) 品質マネジメントシステムに必要なプロセス及びそれらの組織への適用を明確にする(1.2参照)。

b) これらのプロセスの順序及び相互関係を明確にする。

c) これらのプロセスの運用及び管理のいずれもが効果的であることを確実にするために必要な判断基準及び方法を明確にする。

d) これらのプロセスの運用及び監視の支援をするために必要な資源及び情報を利用できることを確実にする。

e) これらのプロセスを監視,測定及び分析する。

f) これらのプロセスについて,計画どおりの結果が得られるように,かつ,継続的改善を達成するために必要な処置をとる。

  

組織は,これらのプロセスを,この規格の要求事項に従って運営管理すること。

  

要求事項に対する製品の適合性に影響を与えるプロセスをアウトソースすることを組織が決めた場合には,組織はアウトソースしたプロセスに関して管理を確実にすること。アウトソースしたプロセスの管理について,組織の品質マネジメントシステムの中で明確にすること。

  

参考 品質マネジメントシステムに必要となるプロセスには,運営管理活動,資源の提供,製品実現及び測定にかかわるプロセスが含まれる。

  

  

4.2 文書化に関する要求事項

4.2.1 一般

品質マネジメントシステムの文書には,次の事項を含めること。

a) 文書化した,品質方針及び品質目標の表明

b) 品質マニュアル

c) この規格が要求する“文書化された手順”

d) 組織内のプロセスの効果的な計画,運用及び管理を確実に実施するために,組織が必要と判断した文書

e) この規格が要求する記録(4.2.4参照)

  

参考1. この規格で“文書化された手順”という用語を使う場合には,その手順が確立され,文書化され,実施され,かつ,維持されていることを意味する。

参考2. 品質マネジメントシステムの文書化の程度は,次の理由から組織によって異なることがある。

a) 組織の規模及び活動の種類

b) プロセス及びそれらの相互関係の複雑さ

c) 要員の力量

参考3. 文書の様式及び媒体の種類はどのようなものでもよい。

  

  

4.2.2 品質マニュアル

組織は,次の事項を含む品質マニュアルを作成し,維持すること。

a) 品質マネジメントシステムの適用範囲。除外がある場合には,その詳細と正当とする理由(1.2参照)。

b) 品質マネジメントシステムについて確立された”文書化された手順”又はそれらを参照できる情報

c) 品質マネジメントシステムのプロセス間の相互関係に関する記述

  

  

4.2.3 文書管理

品質マネジメントシステムで必要とされる文書は管理すること。ただし,記録は文書の一種ではあるが,4.2.4に規定する要求事項に従って管理すること。

  

次の活動に必要な管理を規定する“文書化された手順”を確立すること。

a) 発行前に,適切かどうかの観点から文書を承認する。

b) 文書をレビューする。また,必要に応じて更新し,再承認する。

c) 文書の変更の識別及び現在の改訂版の識別を確実にする。

d) 該当する文書の適切な版が,必要なときに,必要なところで使用可能な状態にあることを確実にする。

e) 文書が読みやすく,容易に識別可能な状態であることを確実にする。

f) どれが外部で作成された文書であるかを明確にし,その配付が管理されていることを確実にする。

g) 廃止文書が誤って使用されないようにする。また,これらを何らかの目的で保持する場合には,適切な識別をする。

  

  

4.2.4 記録の管理

記録は,要求事項への適合及び品質マネジメントシステムの効果的運用の証拠を示すために,作成し,維持すること。記録は,読みやすく,容易に識別可能で,検索可能であること。記録の識別,保管,保護,検索,保管期間及び廃棄に関して必要な管理を規定するために,“文書化された手順”を確立すること。

  

  

5 経営者の責任

5.1 経営者のコミットメント

トップマネジメントは,品質マネジメントシステムの構築及び実施,並びにその有効性を継続的に改善することに対するコミットメントの証拠を次の事項によって示すこと。

a) 法令・規制要求事項を満たすことは当然のこととして,顧客要求事項を満たすことの重要性を組織内に周知する。

b) 品質方針を設定する。

c) 品質目標が設定されることを確実にする。

d) マネジメントレビューを実施する。

e) 資源が使用できることを確実にする。

  

  

5.2 顧客重視

顧客満足の向上を目指して,トップマネジメントは,顧客要求事項が決定され,満たされていることを確実にすること(7.2.1及び8.2.1参照)。

  

  

5.3 品質方針

トップマネジメントは,品質方針について次の事項を確実にすること。

a) 組織の目的に対して適切である。

b) 要求事項への適合及び品質マネジメントシステムの有効性の継続的な改善に対するコミットメントを含む。

c) 品質目標の設定及びレビューのための枠組みを与える。

d) 組織全体に伝達され,理解される。

e) 適切性の持続のためにレビューする。

  

  

5.4 計画

5.4.1 品質目標

トップマネジメントは,組織内のそれぞれの部門及び階層で品質目標が設定されていることを確実にすること。その品質目標には,製品要求事項[7.1.a)参照]を満たすために必要なものがあれば含めること。品質目標は,その達成度が判定可能で,品質方針との整合性がとれていること。

  

  

5.4.2 品質マネジメントシステムの計画

トップマネジメントは,次の事項を確実にすること。

a) 品質目標及び4.1に規定する要求事項を満たすために,品質マネジメントシステムの計画が策定される。

b) 品質マネジメントシステムの変更が計画され,実施される場合には,品質マネジメントシステムが“完全に整っている状態”(integrity)を維持している。

  

  

5.5 責任,権限及びコミュニケーション

5.5.1 責任及び権限

トップマネジメントは,責任及び権限が定められ,組織全体に周知されていることを確実にすること。

  

  

5.5.2 管理責任者

トップマネジメントは,管理層の中から管理責任者を任命すること。管理責任者は与えられている他の責任とかかわりなく次に示す責任及び権限をもつこと。

a) 品質マネジメントシステムに必要なプロセスの確立,実施及び維持を確実にする。

b) 品質マネジメントシステムの実施状況及び改善の必要性の有無についてトップマネジメントに報告する。

c) 組織全体にわたって,顧客要求事項に対する認識を高めることを確実にする。

  

参考 管理責任者の責任には,品質マネジメントシステムに関する事項について外部と連絡をとることも含めることができる。

  

  

5.5.3 内部コミュニケーション

トップマネジメントは,組織内にコミュニケーションのための適切なプロセスが確立されることを確実にすること。また,品質マネジメントシステムの有効性に間しての情報交換が行われることを確実にすること。

  

  

5.6 マネジメントレビュー

5.6.1 一般

トップマネジメントは,組織の品質マネジメントシステムが,引き続き適切で,妥当で,かつ,有効であることを確実にするために,あらかじめ定められた間隔で品質マネジメントシステムをレビューすること。このレビューでは,品質マネジメントシステムの改善の機会の評価,品質方針及び品質目標を含む品質マネジメントシステムの変更の必要性の評価も行うこと。

  

マネジメントレビューの結果の記録は維持すること(4.2.4参照)。

  

  

5.6.2 マネジメントレビューヘのインプット

マネジメントレビューヘのインプットには次の情報を含むこと。

a) 監査の結果

b) 顧客からのフィードバック

c) プロセスの実施状況及び製品の適合性

d) 予防処置及び是正処置の状況

e) 前回までのマネジメントレビューの結果に対するフォローアップ

f) 品質マネジメントシステムに影響を及ぼす可能性のある変更

g) 改善のための提案

  

  

5.6.3 マネジメントレビューからのアウトプット

マネジメントレビューからのアウトプットには,次の事項に関する決定及び処置を含むこと。

a) 品質マネジメントシステム及びアウトプットの有効性の改善

b) 顧客要求事項への適合に必要な製品の改善

c) 資源の必要性

  

  

6 資源の運用管理

6.1 資源の提供

組織は,次の事項に必要な資源を明確にし,提供すること。

a) 品質マネジメントシステムを実施し,維持する。また,その有効性を継続的に改善する。

b) 顧客満足を,顧客要求事項を満たすことによって向上する。

  

  

6.2 人的資源

6.2.1 一般

製品品質に影響がある仕事に従事する要員は,関連する教育,訓練,技能及び経験を判断の根拠として力量があること。

  

  

6.2.2 力量,認識及び教育・訓練

組織は,次の事項を実施すること。

a) 製品品質に影響がある仕事に従事する要員に必要な力量を明確にする。

b) 必要な力量がもてるように教育・訓練し,又は他の処置をとる。

c) 教育・訓練又は他の処置の有効性を評価する。

d) 組織の要員が,自らの活動のもつ意味と重要性を認識し,品質目標の達成に向けて自らどのように貢献できるかを認識することを確実にする。

e) 教育,訓練,技能及び経験について該当する記録を維持する(4.2.4参照)。

  

  

6.3 インフラストラクチャー

組織は,製品要求事項への適合を達成するうえで必要とされるインフラストラクチャーを明確にし,提供し,かつ,維持すること。インフラストラクチャーには次のようなものがある。

a) 建物,作業場所及び関連するユーティリティー(電気,ガス,水など)

b) 設備(ハードウエアとソフトウエアとを含む。)

c) 支援業務(輸送,通信など)

  

  

6.4 作業環境

組織は,製品要求事項への適合を達成するために必要な作業環境を明確にし,運営管理すること。

  

  

7 製品実現

7.1 製品実現の計画

組織は,製品実現のために必要なプロセスを計画して,構築すること。製品実現の計画は,品質マネジメントシステムのその他のプロセスの要求事項と整合性がとれていること(4.1参照)。

  

製品実現の計画に当たっては,組織は次の事項について該当するものを明確にすること。

a) 製品に対する品質目標及び要求事項

b) 製品に特有な,プロセス及び文書の確立の必要性,並びに資源の提供の必要性

c) その製品のための検証,妥当性確認,監視,検査及び試験活動,並びに製品合否判定基準

d) 製品実現のプロセス及びその結果としての製品が要求事項を満たしていることを実証するために必要な記録(4.2.4参照)

  

この計画のアウトプットは,組織の計画の実行に適した様式であること。

  

参考1. 特定の製品,プロジェクト又は契約に適用される品質マネジメントシステムのプロセス(製品実現のプロセスを含む。)及び資源を規定する文書を品質計画書と呼ぶことがある。

参考2. 組織は,製品実現のプロセスの構築に当たって7.3に規定する要求事項を適用してもよい。

  

  

7.2 顧客関連のプロセス

7.2.1 製品に関連する要求事項の明確化

組織は,次の事項を明確にすること。

a) 顧客が規定した要求事項。これには引渡し及び引渡し後の活動に関する要求事項を含む。

b) 顧客が明示してはいないが,指定された用途又は意図された用途が既知である場合,それらの用途に応じた要求事項

c) 製品に関連する法令・規制要求事項

d) 組織が必要と判断する追加要求事項

  

  

7.2.2 製品に関連する要求事項のレビュー

組織は,製品に関連する要求事項をレビューすること。このレビューは,組織が顧客に製品を提供することについてのコミットメント(例 提案書の提出,契約又は注文の受諾,契約又は注文への変更の受諾)をする前に実施すること。レビューでは次の事項を確実にすること。

a) 製品要求事項が定められている。

b) 契約又は注文の要求事項が以前に提示されたものと異なる場合には,それについて解決されている。

c) 組織が,定められた要求事項を満たす能力をもっている。

  

このレビューの結果の記録及びそのレビューを受けてとられた処置の記録を維持すること(4.2.4参照)。

  

顧客がその要求事項を書面で示さない場合には,組織は顧客要求事項を受諾する前に確認すること。

  

製品要求事項が変更された場合には,組織は,関連する文書を修正すること。また,変更後の要求事項が関連する要員に理解されていることを確実にすること。

  

参考 インターネット販売などの状況では,個別の注文に対する正式なレビューの実施は非現実的である。このような場合のレビューでは,カタログや宣伝広告資料などの関連する製品情報をその対象とすることもできる。

  

  

7.2.3 顧客とのコミュニケーション

組織は,次の事項に関して顧客とのコミュニケーションを図るための効果的な方法を明確にし,実施すること。

a) 製品情報

b) 引き合い,契約若しくは注文,又はそれらの変更

c) 苦情を含む顧客からのフィードバック

  

  

7.3 設計・開発

7.3.1 設計・開発の計画

組織は,製品の設計・開発の計画を策定し,管理すること。

  

設計・開発の計画において,組織は次の事項を明確にすること。

a) 設計・開発の段階

b) 設計・開発の各段階に適したレビュー,検証及び妥当性確認

c) 設計・開発に関する責任及び権限

  

組織は,効果的なコミュニケーションと責任の明確な割当てとを確実にするために,設計・開発に関与するグループ間のインタフェースを運営管理すること。

  

設計・開発の進行に応じて,策定した計画を適宜更新すること。

  

  

7.3.2 設計・開発へのインプット

製品要求事項に関連するインプットを明確にし,記録を維持すること(4.2.4参照)。インプットには次の事項を含めること。

a) 機能及び性能に関する要求事項

b) 適用される法令・規制要求事項

c) 適用可能な場合は,以前の類似した設計から得られた情報

d) 設計・開発に不可欠なその他の要求事項

  

これらのインプットについては,その適切性をレビューすること。要求事項は,漏れがなく,あいまい(曖昧)ではなく,かつ,相反することがないこと。

  

  

7.3.3 設計・開発からのアウトプット

設計・開発からのアウトプットは,設計・開発へのインプットと対比した検証ができるような様式で提示されること。また,次の段階に進める前に,承認を受けること。

  

設計・開発からのアウトプットは次の状態であること。

a) 設計・開発へのインプットで与えられた要求事項を満たす。

b) 購買,製造及びサービス提供に対して適切な情報を提供する。

c) 製品の合否判定基準を含むか又はそれを参照している。

d) 安全な使用及び適正な使用に不可欠な製品の特性を明確にする。

  

  

7.3.4 設計・開発のレビュー

設計・開『発の適切な段階において,次の事項を目的として,計画されたとおりに(7.3.1参照)体系的なレビューを行うこと。

a) 設計・開発の結果が要求事項を満たせるかどうかを評価する。

b) 問題を明確にし,必要な処置を提案する。

  

レビューヘの参加者として,レビューの対象となっている設計・開発段階に関連する部門の代表が含まれていること。このレビューの結果の記録及び必要な処置があればその記録を維持すること(4.2.4参照)。

  

  

7.3.5 設計・開発の検証

設計・開発からのアウトプットが,設計・開発へのインプットで与えられている要求事項を満たしていることを確実にするために、計画されたとおりに(7.3.1参照)検証を実施すること。この検証の結果の記録及び必要な処置があればその記録を維持すること(4.2.4参照)。

  

  

7.3.6 設計・開発の妥当性確認

結果として得られる製品が,指定された用途又は意図された用途に応じた要求事項を満たし得ることを確実にするために,計画した方法(7.3.1参照)に従って,設計・開発の妥当性確認を実施すること。実行可能な場合にはいつでも,製品の引渡し又は提供の前に,妥当性確認を完了すること。妥当性確認の結果の記録及び必要な処置があればその記録を維持すること(4.2.4参照)。

  

  

7.3.7 設計・開発の変更管理

設計・開発の変更を明確にし,記録を維持すること。変更に対して,レビュー,検証及び妥当性確認を適宜行い,その変更を実施する前に承認すること。設計・開発の変更のレビューには,その変更が,製品を構成する要素及び既に引き渡されている製品に及ぼす影響の評価を含めること。

変更のレビューの結果の記録及び必要な処置があればその記録を維持すること(4.2.4参照)。

  

  

7.4 購買

7.4.1 購買プロセス

組織は,規定された購買要求事項に,購買製品が適合することを確実にすること。供給者及び購買した製品に対する管理の方式と程度は,購買製品が,その後の製品実現のプロセス又は最終製品に及ぼす影響に応じて定めること。

  

組織は,供給者が組織の要求事項に従って製品を供給する能力を判断の根拠として,供給者を評価し,選定すること。選定,評価及び再評価の基準を定めること。評価の結果の記録及び評価によって必要とされた処置があればその記録を維持すること(4.2.4参照)。

  

  

7.4.2 購買情報

購買情報では購買製品に関する情報を明確にし,必要な場合には,次の事項のうち該当する事項を含めること。

  

a) 製品,手順,プロセス及び設備の承認に関する要求事項

b) 要員の適格性確認に関する要求事項

c) 品質マネジメントシステムに関する要求事項

  

組織は,供給者に伝達する前に,規定した購買要求事項が妥当であることを確実にすること。

  

  

7.4.3 購買製品の検証

組織は,購買製品が,規定した購買要求事項を満たしていることを確実にするために,必要な検査又はその他の活動を定めて,実施すること。

  

組織又はその顧客が,供給者先で検証を実施することにした場合には,組織は,その検証の要領及び購買製品のリリース(出荷許可)の方法を購買情報の中に明確にすること。

  

  

7.5 製造及びサービス提供

7.5.1 製造及びサービス提供の管理

組織は,製造及びサービス提供を計画し,管理された状態で実行すること。管理された状態には,該当する次の状態を含むこと。

a) 製品の特性を述べた情報が利用できる。

b) 必要に応じて,作業手順が利用できる。

c) 適切な設備を使用している。

d) 監視機器及び測定機器が利用でき,使用している。

e) 規定された監視及び測定が実施されている。

f) リリース(次工程への引渡し),顧客への引渡し及び引渡し後の活動が規定されたとおりに実施されている。

  

  

7.5.2 製造及びサービス提供に関するプロセスの妥当性確認

製造及びサービス提供の過程で結果として生じるアウトプットが,それ以降の監視又は測定で検証することが不可能な場台には,組織は,その製造及びサービス提供の該当するプロセスの妥当性確認を行うこと。これらのプロセスには,製品が使用され,又はサービスが提供されてからでしか不具合が顕在化しないようなプロセスが含まれる。

  

妥当性確認によって,これらのプロセスが計画どおりの結果を出せることを実証すること。

  

組織は,これらのプロセスについて,次の事項のうち適用できるものを含んだ手続きを確立すること。

a) プロセスのレビュー及び承認のための明確な基準

b) 設備の承認及び要員の適格性確認

c) 所定の方法及び手順の適用

d) 記録に関する要求事項(4.2.4参照)

e) 妥当性の再確認

  

  

7.5.3 識別及びトレーサビリティ

必要な場合には,組織は,製品実現の全過程において適切な手段で製品を識別すること。

  

組織は,監視及び測定の要求事項に関連して,製品の状態を識別すること。

  

トレーサビリティが要求事項となっている場合には,組織は,製品について固有の識別を管理し,記録すること(4.2.4参照)。

  

参考 ある産業分野では,構成管理が識別及びトレーサビリティを維持する手段である。

  

  

7.5.4 顧客の所有物

組織は,顧客の所有物について,それが組織の管理下にある間,又は組織がそれを使用している間は,注意を払うこと。組織は,使用するため又は製品に組み込むために提供された顧客の所有物の識別,検証及び保護・防護を実施すること。顧客の所有物を紛失,損傷した場合又は使用には適さないとわかった場合には,顧客に報告し,記録を維持すること(4.2.4参照)。

  

参考 顧客の所有物には知的所有権も含まれる。

  

  

7.5.5 製品の保存

組織は,内部処理から指定納入先への引渡しまでの間,製品を適合した状態のまま保存すること。この保存には,識別,取扱い,包装,保管及び保護を含めること。保存は,製品を構成する要素にも適用すること。

  

  

7.6 監視機器及び測定機器の管理

定められた要求事項に対する製品の適合性を実証するために,組織は,実施すべき監視及び測定を明確にすること。また,そのために必要な監視機器及び測定機器を明確にすること(7.2.1参照)。

  

組織は,監視及び測定の要求事項との整合性を確保できる方法で監視及び測定が実施できることを確実にするプロセスを確立すること。

測定値の正当性が保証されなければならない場合には,測定機器に関し,次の事項を満たすこと。

a) 定められた間隔又は使用前に,国際又は国家計量標準にトレース可能な計量標準に照らして校正又は検証する。そのような標準が存在しない場合には,校正又は検証に用いた基準を記録する。

b) 機器の調整をする,又は必要に応じて再調整する。

c) 校正の状態が明確にできる識別をする。

d) 測定した結果が無効になるような操作ができないようにする。

e) 取扱い,保守,保管において,損傷及び劣化しないように保護する。

  

さらに,測定機器が要求事項に適合していないことが判明した場合には,組織は,その測定機器でそれまでに測定した結果の妥当性を評価し,記録すること。組織は,その機器及び影響を受けた製品に対して,適切な処置をとること。校正及び検証の結果の記録を維持すること(4.2.4参照)。

  

規定要求事項にかかわる監視及び測定にコンピュータソフトウェアを使う場合には,そのコンピュータソフトウェアによって意図した監視及び測定ができることを確認すること。この確認は,最初に使用するのに先立って実施すること。また,必要に応じて再確認すること。

  

参考 ISO 10O12-1 (Quality assurance requirements for measuring equipment−Part 1 : Metrological confirmation system for measuring equipment)及びISO 10O12-2(Quality assurance for measuring equipment−Part2 : Guidelines for control of measurement processes)を参照。

  

  

8 測定,分析及び改善

8.1 一般

組織は,次の事項のために必要となる監視,測定,分析及び改善のプロセスを計画し,実施すること。

a) 製品の適合性を実証する。

b) 品質マネジメントシステムの適合性を確実にする。

c) 品質マネジメントシステムの有効性を継続的に改善する。

  

これには,統計的手法を含め,適用可能な方法,及びその使用の程度を決定することを含めること。

  

  

8.2 監視及び測定

8.2.1 顧客満足

組織は,品質マネジメントシステムの成果を含む実施状況の測定の一つとして,顧客要求事項を満足しているかどうかに関して顧客がどのように受けとめているかについての情報を監視すること。この情報の入手及び使用の方法を決めること。

  

  

8.2.2 内部監査

組織は,品質マネジメントシステムの次の事項が満たされているか否かを明確にするために,あらかじめ定められた間隔で内部監査を実施すること。

a) 品質マネジメントシステムが,個別製品の実現の計画(7.1参照)に適合しているか,この規格の要求事項に適合しているか,及び組織が決めた品質マネジメントシステム要求事項に適合しているか。

b) 品質マネジメントシステムが効果的に実施され,維持されているか。

組織は,監査の対象となるプロセス及び領域の状態と重要性,並びにこれまでの監査結果を考慮して,監査プログラムを策定すること。監査の基準,範囲,頻度及び方法を規定すること。監査員の選定及び監査の実施においては,監査プロセスの客観性及び公平性を確保すること。

監査員は自らの仕事は監査しないこと。

  

監査の計画及び実施,結果の報告,記録の維持(4,2.4参照)に関する責任,並びに要求事項を“文書化された手順”の中で規定すること。

  

監査された領域に責任をもつ管理者は,発見された不適合及びその原因を除去するために遅滞なく処置がとられることを確実にすること。フォローアップには,とられた処置の検証及び検証結果の報告を含めること(8.5.2参照)。

  

参考 ISO10011-1(品質システムの監査の指針一第1部:監査),ISO10011-2(品質システムの監査の指針−第2部:品質システム監査員の資格基準)及びISO10011-3(品質システムの監査の指針−第3部:監査プログラムの管理)を参照。

  

  

8.2.3 プロセスの監視及び測定

組織は,品質マネジメントシステムのプロセスを適切な方法で監視し,適用可能な場合には,測定をすること。これらの方法は,プロセスが計画どおりの結果を達成する能力があることを実証するものであること。計画どおりの結果が達成できない場合には,製品の適合性の保証のために,適宜,修正及び是正処置をとること。

  

  

8.2.4 製品の監視及び測定

組織は,製品要求事項が満たされていることを検証するために,製品の特性を監視し,測定すること。監視及び測定は,個別製品の実現の計画(7.1参照)に従って,製品実現の適切な段階で実施すること。

  

合否判定基準への適合の証拠を維持すること。記録には,製品のリリース(次工程への引渡し又は出荷)を正式に許可した人を明記すること(4.2.4参照)。

  

個別製品の実現の計画(7.1参照)で決めたことが問題なく完了するまでは,製品のリリース(出荷)及びサービス提供は行わないこと。ただし,当該の権限をもつ者が承認したとき,及び該当する場合に顧客が承認したときは,この限りではない。

  

  

8.3 不適合製品の管理

組織は,製品要求事項に適合しない製品が誤って使用されたり,又は引き渡されることを防ぐために,それらを識別し,管理することを確実にすること。不適合製品の処理に関する管理及びそれに関連する責任及び権限を“文書化された手順”に規定すること。

  

組織は,次のいずれかの方法で,不適合製品を処理すること。

a) 発見された不適合を除去するための処置をとる。

b) 当該の権限をもつ者,及び該当する場合に顧客が,特別採用によって,その使用,リリース(次工程への引渡し)若しくは出荷,又は合格と判定することを正式に許可する。

c) 本来の意図された使用又は適用ができないような処置をとる。

  

不適合の性質の記録及び,不適合に対してとられた特別採用を含む処置の記録を維持すること(4.2.4参照)。

  

不適合製品に修正を施した場合には,要求事項への適合性を実証するための再検証を行うこと。

  

引渡し後又は使用開始後に不適合製品が検出された場合には,組織は,その不適合による影響又は起こり得る影響に対して適切な処置をとること。

  

  

8.4 データの分析

組織は,品質マネジメントシステムの適切性及び有効性を実証するため,また,品質マネジメントシステムの有効性の継続的な改善の可能性を評価するために適切なデータを明確にし,それらのデータを収集し,分析すること。この中には,監視及び測定の結果から得られたデータ及びそれ以外の該当する情報源からのデータを含めること。

  

データの分析によって,次の事項に関連する情報を提供すること。

a) 顧客満足(8.2.1参照)

b) 製品要求事項への適合性(7.2.1参照)

c) 予防処置の機会を得ることを含む,プロセスと製品の特性及び傾向

d) 供給者

  

  

8.5 改善

8.5.1 継続的改善

組織は,品質方針,品質目標,監査結果,データの分析,是正処置,予防処置及びマネジメントレビューを通じて,品質マネジメントシステムの有効性を継続的に改善すること。

  

  

8.5.2 是正処置

組織は,再発防止のため,不適合の原因を除去する処置をとること。是正処置は,発見された不適合のもつ影響に見合うものであること。

  

次の事項に関する要求事項を規定するために“文書化された手順”を確立すること。

a) 不適合(顧客からの苦情を含む)の内容確認

b) 不適合の原因の特定

c) 不適合の再発防止を確実にするための処置の必要性の評価

d) 必要な処置の決定及び実施

e) とった処置の結果の記録(4.2.4参照)

f) 是正処置において実施した活動のレビュー

  

  

8.5.3 予防処置

組織は,起こり得る不適合が発生することを防止するために,その原因を除去する処置を決めること。予防処置は,起こり得る問題の影響に見合っだものであること。

  

次の事項に問する要求事項を規定するために“文書化された手順”を確立すること。

a) 起こり得る不適合及びその原因の特定

b) 不適合の発生を予防するための処置の必要性の評価

c) 必要な処置の決定及び実施

d) とった処置の結果の記録(4.2.4参照)

e) 予防処置において実施した活動のレビュー