幻 平成12年6月16日号通算90号    

日本酒を飲む会 ニュース 

お酒と遺伝子組み替え
 もし、危険の懸念があるならば

遺伝子組み替えとは

 遺伝子組み替え食品が登場する。日本ではこれをどう表示するかで世間を騒がせている。
 さて、遺伝子とか組み替えとかそれは何なんだ?科学者の端くれとして説明をしてみようか。

 地球上の生物は、細胞の中に遺伝子という設計図を持っている。それによって体を作り機能させ、思考し行動し、子孫を作りやがて死んで消滅する。5億年前、地球上に生物の原型が生まれ、子、孫と遺伝子をコピーしていく途中でミスコピーが起き、その結果、環境に合ったものが「進化」となって、現在さまざまな生物になったのだ。
 これはPHP出版、香田康年著「遺伝子のたくらみ」(点字版・東京ヘレンケラー協会)を読んでのにわか知識である。

 われわれが子を作ることは、雌雄の遺伝子を受精で合体する遺伝子のコピーをやっているのだ。そのミスコピーの一つから5千万年前にヒトができた。そのミスコピーのほとんどは、自然淘汰され、今、地球にあるすべての生物は優勝劣敗のフィルターを潜っているのである。しょっちゅう行われる品種改良も、優れたミスコピーを誘導しているわけだ。
 それが面倒、いや必要に駆られて、うまいことに遺伝子の構造がわかってきたので、いいところ同士を切り剥ぎしよう。これが遺伝子組み替えなのである。自然の中の良いミスコピーを意識的にリコピーしよう。自然の摂理、時間の流れを越えて、人類に福音をもたらすのが遺伝子組み替えなのだ。そして、アメリカでは、安全性を確認した上で、トウモロコシ・サトウキビ・ダイズ・綿花など7品種を安全食品として公認した。

 米の遺伝子組み替えも研究されている。先端はやはりアメリカ企業で、ある農薬に稲だけは枯れないようにするものらしい。日本でも農林生物研究所が、シマハガレ(縞葉枯れ)病に強い品種を作っているらしい。だが、いずれも公認はされておらず、安全下で実験が続いているそうだ。(この辺はNHKラジオ4月26日朝7.20ニュースアップによる)

反対運動

 この遺伝子組み替え食品に対して、世界的な反対運動が起きている。なぜ?もしかしたら来るべき世界飢餓事態を回避できるかもしれない大発明なのに・・・。
 反対の多くは「安全」でないからという。この安全とは、食べているわれわれや動物(飼料を通して)だけでなく、生態系を乱す恐れも含まれている。これに対してプロである専門家は「安全」を保証しているのだが・・・。

 日本ではその多くが輸入品に頼っているダイズ、その加工品である豆腐・納豆・醤油・味噌から起きたのはご存知の通り。そこで農水省は遺伝子組み替え原料表示をすることにした。だが、遺伝子そのものまで分解される醤油は表示から除外された。遺伝子を構成しているタンパク質が分解されれば安心というわけか。

酒関係では

 まだだれも遺伝子組み替えと酒の関係は言っていない。関係ないのだろうか?清酒に関しては原料の米がアメリカでさえ実験段階なのだから、われわれの口に酒になって入るまではまだまだ時間がある。そう思っているのでしょうか。

 どっこい、そういうわけにはいかない。酒は「米だけでつくられるのではない」ことを読者はご存知だろう。では。その副原料は何か。
 いわずと「醸造アルコール」、「醸造用糖類」である。

醸造アルコール、醸造用糖類はなにからつくられるのか?

 いま、日本酒周辺にはいろんな「肩書き」が流行っている。これ見よがしにウンチクをたれているが、この質問に答えられるのか是非聞いてみたい。実は私もわからないのだ。
 私の知る限りでは、アルコールは世界最低価格の糖を含むモノを醗酵させ、それを蒸留してドコカの国から輸入している。そのモノだが、名称を口にしただけで酒がまずくなるようなシロモノで、前に上げたアメリカで組み替え認知されたモノのナントカなのである。

 糖類の原料はこれも世界最低価格のデンプンを加工したものである。それもアメリカでは組み替え認知されている。
 遺伝子組み替え食品を怖がる人は日本酒を飲めないことになる。それなら、他の酒類は?

いいたくはないが

 組み替え食品を原料としたものを嫌って日本酒から離れる人に申しておこう。「日本酒はまだマシだ」と。
 まず純米酒は確実に安全である。ただし「米だけの・・・」表示はよくわからない。吟醸・本醸造は、最大に見ても組み替え原料からできたアルコールは1/4止まりだ。いま盛んに「米からのアルコール」が生産されつつある。

 もし、遺伝子組み替え原料を嫌うとしたら・・・。チューハイなどで飲まれる甲類焼酎は?添加アルコール混和の焼酎は、ウイスキーは?バーボンは?原料に「スターチ」を明記しているビール・発泡酒は?アルコール強化のワインは?

 私はこれらの酒を常用していないから、お節介で詳しく調べるつもりはない。調べようとしても私の力では撫でることすらできないのではあるまいか。
 安全性を口にしながら危険の可能性をせっせと飲んでいる人たちの顔が見えるようだ。

結論は?

 私は科学技術庁長官から「技術士」という名称をいただいている。これを手にしたばかりのときは少しばかり鼻がたかかったが、近ごろは物陰に隠れるようにしている。なぜなら、例の毒入りジエチレンワイン事件には、関連のしかるべき地位に先輩技術士がいたし、その後の科学技術庁直轄の原子力関連のあのザマ。これでは肩書きが恥ずかしくて表通りも歩けない。

 だから、世の中の善悪を判定したり予測したりなどとてもできやしない。
 でも、遺伝子組み替え食品と酒には、こんな関係があるといっておかねばならないだろう。それが「中立的コンサルタント」を自称する技術士のせめてもの義務だと思ったからだ。   篠田次郎

幻の吟醸酒を飲む会(野田)

 野田市市制施行50周年記念「醸造の街に醗酵の粋を集めて」に、10名の予約枠を取りました。参加資格が市民優先200人限定の所、銘柄選定者の顔で割り込み分を確保しました。

日時:5月21日(日)午後1時〜
会場:野田市市民会館庭園(東武・野田市駅下車徒歩5分)
講演:篠田次郎「スイングジャズで酒飲みセッション」
会費:1万円(限定品大吟醸2本組付き)
※ お申込は当事務局まで。締め切り5/12(金)まで。15〜16日事務所は臨時休業します。

〒113-0034 東京都文京区湯島4-6-12湯島ハイタウンB-1308
TEL 03-3818-5803, FAX 03-3818-5814 幻の日本酒を飲む会 篠田次郎