幻 平成13年2月1日号通算98号    

日本酒を飲む会 ニュース 

酒行政に史上初の文化的考慮

出てすぐ引っ込んだ大蔵省案・幻にするな(2)

ワインの清酒並み課税へ

 マスコミの、とくにテレビの女性キャスターたちが「ワインの増税は許せません」と眉を逆立たせている。理に合わないワインの低税率を清酒並みにすると720ml瓶で40円の増税になるそうだ。
 ワインの低税率はこんな理由で成立したらしい。ブドウ栽培農家がジュースとして貯蔵しておく。それが勝手に発酵してワインになる(そうなるように意図した者もいたかもしれない)。アルコールが1%以上になると酒税法違反ということになる。これでは不都合だ。

 そこで行政側は「ワインをつくるものは申し出なさい。ワイン製造免許を与えましょう。その代わりごく低率の酒税を払ってください」とやったらしい。ワインの消費が少ない、それに醸造技術も低くてよいワインができない、ずっとむかしのお話である。

 それが国際化されたこんにちまで持ち越されたのである。日本にワイン市場を広めるには絶好の施策であったから、飲む人もいないのに、金儲け目的で外国に縁のある企業はこぞってワイン輸入に精を出した。だが、酒税は安くてもワインは売れなかった。それがテレビタレントの一言で、心臓にいいということで爆発的なワインブームが起きた。ブームが起きてから酒税を調べたら清酒の半分であった。だからすぐに上げろとは当局も言わなかった。

 酒税が改正される折、不合理なものは是正されるべきである。税は公平であることが大原則だからだ。ワインはどれほどの税負担をすべきか、それにはちょうどいいモデルがある。この国の国民が500年にもわたって酒税を負担してきた日本酒である。あとから出てきた類似品は先行してきたものに幅寄せするのが常識というものであろう。この処置も文化的といえる。

 増税に反対するワインファンにもう少し説明しておこう。ワインの酒税を清酒並みにというのは、同容量で同金額と言うのではない。アルコール分に比例して同率と言うのであるから決してワインが過重な負担を強いられたわけではない。きちんと公平さが保たれているのである。

ビールの重税は?

 発泡酒といわれる麦を原料とした(比率の多少の違いはあるが)アルコール性飲料が出現し、これが「法律的に」ビールに属さないということで低税率の「雑酒」となった。見たところ、味わったところ、ビールと同じではないかということで、「発泡酒」となり、ビールと中間の酒税となった。今度は「ビール並み」にしようというのである。「安くてまずくはない」から、ビール消費は発泡酒に移り、政府はあたら酒税を取り損ねた。そこで発泡酒もビールだからというのが庶民感情にカチんと来た。

 この論争は幻の日本酒を飲む会の手に負えぬ問題だ。さらに進めれば次の二つの問題も関連してくる。

 一つは懲罰的とまでいわれるビールの酒税である。他酒類の酒税と比較しても高すぎる。理由は何なのだろうか。一種の高級清涼飲料としてか。価格障壁で未成年の手から遠ざけるためか。もしこれが理由だとしたら次の問題へ波及するのは当然と言わなければならない。

 二つ目のそれは、「ジュース風低アルコール性飲料」である。一見して高校生とわかる老若男女が街頭でグッとあおっているあの飲み物(中身は前述の□□を水で薄め香味を添加したもの)。私は教育者や道徳説教者ぶるわけではないが、あの飲み物類がだれに飲まれるかを知って商品化しらメーカーの社会的責任はどうなのか(彼らは上場会社として利益追求のためなら何をやってもいいと思っているのだろうか)。またそれを「対面販売が酒販店免許のよりどころといいながら、未成年にアレを売る店。問題はこの辺まで波及せざるを得ないから、幻の日本酒を飲む会の手に負えないといったのだが。

これに対し日本酒業界は

 私は出されてすぐ引っ込んだ大蔵省の酒税改正案を「文化的」と評価した。私の知る多くの蔵元は、「永らく酒税を吸い上げる役割をさせられてきたので、消費者思考や文化性は忘れてしまった」とか、「いい酒をつくろうとするなら、大蔵省の管轄でなく、文化庁の下のほうがいいかもしれない」といっていた。

 今回の酒税改正案は、明らかに5千年この地に育ってきた「日本酒を基準にした」価値観に基づいたものと見ることができる。その結果、日本酒は混ぜ物分は6%ほど増税になるが、これは廉価な□□を使うメリットを少しだけ社会に還元することだと思えばいい。

 大蔵省案は「日本に日本酒あり、ゆえに他はそれに従うべし」といっているのだ。そのことだけを取り上げても業界は「バンザーイ」というべきだろう。ただし他酒類のことを思いやって小声で。

 あぁそれなのにそれなのに、酒造組合は「断固ハンターイ」なんだそうだ。
 はっきりいっておく。「いい日本酒ファン」の一人として恥ずかしい。世界の酒に対して恥ずかしい、と。

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