幻 平成11年 3月19日号通算75号    

日本酒を飲む会 ニュース 

消費量漸次をお嘆きの業界様  はるか川下の一消費者から一筆もうしあげます

 まず,基本的な数字を整理しておきましょう。
 日本酒の消費量は,昭和50年をピークにして減り続けています。
 当時どれくらいあったのか,そして今は・・・
   昭和50年 900万石
   いま     700万石
といってもピンと来ないでしょうから1人1年間平均してどれくらい飲んでいるかに直します。青年未成年,飲む人飲まない人を問わず。1億2千万人を分母にします。
 1石は1.8リットルで100本です。
   昭和50年 1.8リットルで7.5本
   いま              5.8本
あなたは年間どれほど飲んでいますか。1日2合休みなしとすると1.8リットルで70本(0.7石)です。1日2合でも国民平均の12倍飲んでいることになります。われわれが多すぎるのでしょうか、平均が少なすぎるのでしょうか。さて、その飲み手(国民)ですが、残念ながら毎年150万人が人生を終えていきます。この人達は間違いなく国民1人当り平均量を飲んでいます。前の計算も死亡者も老若男女コミでしたからね。
 とすると、死亡者による消費の減少は
   150万人×5.8本=8万7千石
となりますね。実際にはもっと多いでしょうが細かいことはいいますまい。
 一方、増加はどうでしょうか。オギャーと生まれたアカちゃんが酒を飲むのではありません。青年になって酒を知るのです。これを死亡者と同じにしましょう。この人達は「日本酒」を飲むでしょうか。彼等は「日本酒を飲まない」としましょう。
 この仮説で話を進めると、
 消費量減少分  8万7千石
 消費量増加分  0
 純増減     ▲8万7千石
 かなり荒っぽい計算なのですが不思議に実状と一致しているのです。ということは、この推論はアタリということなのです。「そんなことはないだろう」という声がかえってきそうです。「おかしい」という人は「お
いしい酒とその情報に(幸いに・不幸にして)溺れている」のです。
 あなたの身辺に「台所(キッチンといわねばならないか)にお酒がない家庭」はありませんか。お酒がない家庭がたくさんあるのです。
 一家の主が酒を飲まない、おしていない家庭の子は酒を飲むでしょうか。知らないものは飲みません。では、なぜ酒のない家庭ができたのでしょうか。いま成人を迎える子供の親は、あの「マズイ」酒を飲まされた世代なのです。まちがいなく二日酔いする酒を飲まされた世代なのです。だからビールが常備され、ワインや航空燃料の加工品のような飲み物があっても日本酒のない家庭になったのです。
 この話は決して25年前のオトギバナシではなく、今も堂々と罷り通っているハナシなのです。
 幻の・・・会員がいいました。「いつもは日本酒を飲みません。マズイから」と。
 最近「吟醸酒はまずくなった」という声もあります。私は立場上「あなたのベロが良くなったんですよ」といいますが、ファミリーチェーンレストランで飲まされたヤツを始め、何度かオドロカサレました。「吟醸規格と表示が吟醸品質を低下させる」現象が出てきたことも事実です。新しい消費を創出する牽引車の吟醸酒を失格させて、どうして需要を作り出せるのでしょうか。業界にお聞きしたいところです。でも悲しいかな、このニュースですらメーカー群の1%にしか目に触れないのですから。

「吟醸酒の来た道」中公文庫発売

 1月20日の新聞を見ましたか?小さいながら広告が出ていました。
 前著に4分の1ほど手を加えました。書店でお求めください。980円です。私のところから送ると〒240円が掛かります。「誕生・来た道」揃えだと750+980+〒310=2040円
 ご愛読、ご吹聴くださいますようお願い申し上げます。
今年の「梅錦スタイル」は2月24日、問合先 同社TEL0896-58-1211

〒113-0034 東京都文京区湯島4-6-12湯島ハイタウンB-1308
TEL 03-3818-5803, FAX 03-3818-5814 幻の日本酒を飲む会 篠田次郎