幻 平成11年 6月18日号通算78号    

日本酒を飲む会 ニュース 

日本酒業界はこれで助かるか
  業界の要望が全部かなっても

 日本酒業界の低迷ぶりはすさまじい。酒蔵の数も生産量も加速度的に減少している。

 酒蔵の数は1700を割った。戦後,4000蔵もあったのに。数量も間もなく600万石を切るだろうといわれている。そうなると大正10年ごろのレベルになる。20年前,900万石を越していたのに。マスコミは「ワインは前年比170%の実績に,日本酒は6.5%減少」と報じている。「いい日本酒ファン」を自認している幻の日本酒を飲む会として応援のし甲斐がない。情けない思いだ。

 さて,その苦境の中で,業界はどんなことを望んでいるのだろうか。3月に開かれた酒造組合の要望事項が伝わってきたので取り上げてみる。

 それは3つあった。

 彼らの要望1.
 平成13年3月に切れる酒税軽減措置の延長。いつからか知らないが,各蔵の出荷量の内,2000石を限度として酒税は30%・約75円が免除されているのだ。それが再来年3月に切れるのを延長してくれというのだ。

 彼らの要望2.  酒米を安くせよ。

 彼らの要望3.  市場建て直し。市場は実はメチャクチャなのだ。流通業界内では,「ニホンサカリ」とか「さんとりー」という隠語があり,10本に2本,3本のオマケの付くものが大手を振って横行している。それが10本でなく,6本に同様のオマケが付くという話も聞こえる。

 彼らの言い分は正しいか。そしてそれが実現したら業界は助かるのだろうか。飲み手の側から,常識的に意見を申し上げよう。

 われわれの見解1.
 政府はなんで酒税をマケるんだろう。酒税は酒蔵が負担しているのではなく,われわれ飲み手が負担しているのだ。酒蔵が酒税をマケてもらっているとしたら,それは「ピンハネ」ではないか。
 酒税と同じような税金に消費税がある。こちらにも小規模事業者への免税措置があるが,消費税の場合は小規模企業は「取れない」から「納めなくてもいい」のだ。酒税の場合,大も小も2000石限度で一律にオマケ。これは世の中に通じる話ではない。即刻止めるべきである。絶対オカシイ。それを延長しろなどと,どの顔で言っているのだろうか。

 われわれの見解2.
 米が高い。それは飯として消費している国民も同じだ。酒蔵はそれを承知で酒づくりをしているのではないか。業界は「加工用米」という名の安価な米を買っているはず。それでも足りないなら,他酒類と酒税でハンディをつけてもらうべきだ。ワインや焼酎・合成清酒の酒税はたしかに安すぎる。ディスクロージャーするところは全部さらけ出して,酒税の不公平是正を国民運動にすべきではないか。それに高い酒米を使って高付加価値商品が売れるようになったんではありませんか。「米を安くせよ」とおっしゃるのはムシが良すぎるというもの。

 われわれの見解3.
 市場をメチャクチャにしたのは誰ですか。自分でやったことは自分で尻を拭くべきでしょう。市場価値のないものは,それなりの市場価格で取り引きされてこそ優勝劣敗の原理が働くというもの。
 かれらのチャンチャラおかしい言い分が実現したら業界は健全化するのだろうか。ウタガワシイ。

 酒税が上がって活性化した例。
 乙類焼酎(本格焼酎・伝統焼酎)はウイスキーと酒税レベルを合わせるために増税になる。M経済研究所はこの増税で市場はゼロになる可能性があると評論した、だが現実は「いい本格もの」は,プレミアが付く有り様。つまり,いいものならリーズナブルな値段が通るのだ。そうなれば,酒税の占める割合は相対的に低くなって十分に吸収できるのだ。

 高い米の酒が売り切れた例。
 いま,熱心な酒販・飲食業者とファンは酒米づくりに参加している。それらの酒は予約だけで売り切れである。また,昨年第5回吟功績賞に輝いた農家の米でつくられる酒はこれまた予約で売り切れ。それなのに,米を安くせよと叫ぶのは「知恵がない」ことをあからさまにしているだけではございませんか。酒業界殿。

 安売りされない酒はたくさんある例。
 業界はだれのために酒をつくっているんだろうか。ガブガブ飲む人,酔えばいいという人のために酒づくりをしているのだろうか。とするなら,われわれはオヨビではないのだ。

 ちゃんとした品質の酒をそれなりの値段で飲む人がいるのに。幸いにわれわれはいい酒を知ることができた。しかし日本中のほとんどの人々は,「いい酒」を知らない。それは業界が「いい酒」の存在を多くの人たちに教えないからだ。いい酒のファンを育てずに,限りなく安い酒を売っているのはどなたなのでしょうか。

 所詮われわれは自らが学び自分の手で探さなければいい酒に出会わないということなのだろう。

山本さんエストニアから帰国

 6月例会は,3年振りに帰国した山本英二さん夫妻を囲んで,歓迎例会を開くことにしました。
 このところ会員の皆さんのユニークな活動が続いています。これもおいしい吟醸酒がエネルギーになっているのかと自負しています。

「吟醸寺子屋・湯島酒堂」

 9月開校で予定を進めています。幸いに湯島だけでなく,各地で同様の催しが進行しています。相互乗り入れができるようにするつもりです。

女性会員へ

 女性だけの会を開いたらどうでしょういか。ご意見をお寄せ下さい。ボランティアも名乗り出てください。 篠田

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