幻想シダレサクラ


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長興山紹太寺のシダレザクラを知ったのは、雑誌の両開きに掲載された写真を見たときだ。 シダレザクラの大きさと美くしさに圧倒された。 放送タレントの若林正人が「身体の震えがとまらなかった」と表現したサクラである。 私がサクラを追いかけ始めるきっかけになったサクラである。

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シダレザクラは人家から離れたところに1本だけ独立してそそり立つ。 手前の広場から見あげると、幹から滝のように落ちているサクラの花びらが、目の上に揺れ動く。 右の茶屋の位置から見ると左右に大きくサクラの花が広がり、鳥が羽を広げたように見える。真中が頭のように突き出している。 右の坂の上から見ると、目の下に小山のようにどっしりと見える。 見る位置を変えると、その度に、シダレザクラはその姿を変える。


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最初の年に、何としても満開を見たくて3日通った。3日目にようやく満開のサクラを見ることができた。 薄日に浮かびあがったシダレザクラはピンク色に輝いていた。満開はほんの1〜2日で終わり、 すぐに花が散り始める。 次の年も行った。しかし、この年は雨ばかりで、私が訪れたときはまだ7分咲きで、 雨霧の中にサクラがうっすらと浮んでいて、花びらは白く沈んでいた。 その次の年も行った。この年は8分咲きだったが、またしても雨だった。 4年目にも行った。この年は空がきれいに澄み渡り、満開の花が青空にピンク色に輝いた。 たくさんのメジロが飛んできて花弁に取り付いて蜜を吸っていた。さかさまになって吸っているのもいた。

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このシダレザクラはウバヒガン(エドヒガン、アズマヒガン)の変種で、花びらが小さく可憐だ。 神奈川県最大のシダレザクラで、樹高13メートル、胸高周囲3.8メートル、樹齢約300年にもなり、小田原市の天然記念物に指定されている。

近くに小田原城主であった稲葉氏一族の墓がある。初代正勝の実母は春日の局である。 2代正則が祖母の追福のために建てた春日の局の墓があるが、これは本墓ではない。 このシダレザクラは春日の局が見たシダレザクラだと思うと感慨深い。

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シーズンになると人出が多く、都心から見学バスもでるようだ。

最後にお礼話がある。私が早朝車で着いて、急いで見に飛んで行ったら、誤って車のキーを落としてしまった。 キーは拾い上げたが、どういう訳か、一緒に持っていたガソリンスタンドのカードをそのまま落としてしまった。 家に帰って無い無いと騒いでいたら、長興山紹太寺の近所の人が拾って連絡してくれた。 その人もサクラ見物に来ていたとのことで、サクラの好きな人に悪い人はいないと大感謝をした。 到着したら、興奮しないで落ち着いて行動すべしとの教訓となった。


(1998年10月24日記)


[撮影データ]作者:須賀遼太郎、場所:長興山紹太寺
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説明説明
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写真題名:朝陽のサクラ、拡大JPEG50KB

4月5日6:40撮影、EOS−1N、EF70−200mmF2.8LUSM、Av22、オート、RVP、ハスキー3段
no4002.jpg NO.4002
写真題名:カササクラ、拡大JPEG45KB

4月8日6:55撮影、EOS−kiss、EF20−35mmF3.5−4.5USM、Tv1/15、オート、RVP、ハスキー3段
no4003.jpg NO.4003
写真題名:流れるサクラ花、拡大JPEG39KB

4月6日7:30撮影、EOS−kiss、EF35−80mmF4−5.6USM、Tv1/30、オート、RVP、ハスキー3段
no4004.jpg NO.4004
写真題名:幻想シダレザクラ、拡大JPEG32KB

4月5日6:30撮影、EOS−kiss、EF35−80mmF4−5.6USM、Tv1/15、オート、RVP、ハスキー3段
no4005.jpg NO.4005
写真題名:青空に浮かぶ、拡大JPEG38KB

4月5日8:00撮影、EOS−1N、EF35−80mmF4−5.6USM、Av8.0、オート、RVP、ハスキー3段