Live Depot
Every Thursday, PM8:00〜 from TOKYO FM HALL
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Vol.147 2004/03/18 ON AIR (guest:金子晴美
「こんばんは!大江千里です。今宵のLive Depotはジャズです。明るくて、しかも深みのあるボーカルをご堪能下さい。早速、今夜のゲストを紹介しましょう。ジャズシンガーの金子晴美さんです」
(金子晴美登場)
金子「こんばんは」
千「こんばんは、キラキラしてますねー。黒のお召し物ですけどキラキラしてますね。はじめまして」
金子「はじめまして。今日は楽しみに来ました」
千「ありがとうございます。まず少し紹介をさせて下さい。大学時代から金子さんはジャズボーカルを始められてデビューは80年、アルバム『アイ・ラブ・ニューヨーク』、そして88年はロン・カーターと競演したアルバム『アイム・ウォーキン』は世界20か国で同時発売されました。そして数多くの海外でのジャズフェス経験に加え東京FMの『サウンドマーケット』初代DJも担当されてた」
金子「はい、やらせていただきました」
千「しゃべるのと歌うのってやっぱり共通する部分ってありますか」
金子「最初は慣れなかったですけど最近やっと歌うことと話すことと同じになってきました」
千「そうですか。これまでに13枚のアルバムをリリースということですが、今コンサート、ライブ活動、大体三日にいっぺんぐらいのペースでやられていると」
金子「やっぱりライブが一番日常だと思っています」
千「じゃラジオを聴いてるみなさんに一言今日の気分を」
金子「今日はジャズのエネルギーを伝えられたらと思っています。お楽しみ下さい」
(金子晴美ライブ)
『TAKE THE A TRAIN』『BASIN STREET BLUES』
-CM-
千「さあ、大江千里のLive Depot、セッションタイムの時間がやってまいりました」
金子「楽しみにしてました」
千「僕も嬉しいです。今日は金子さんが中央に立ってらっしゃるんですが、その横に僕もハンドマイクでみなさんに混ぜていただくような感じで」
金子「横に誰かいてくれるとすごく嬉しいんです。ほとんど私いつも一人なんで心細かったので幸せです」
千「(笑)、実はいろんな思いが渦巻きながら歌ってたりするわけですね。今日は一緒に歌わせて下さい。スタンダードの『TEA FOR TWO』とう。これはなぜ?」
金子「これは『二人でお茶を』という曲なのでデュエットにはぴったりなんですけど、寂しいことに私、パートナーがずっといなかったので今日はぜひ大江さんにお願いして、と」
千「ありがとうございます。じゃ今日は楽しくやらせていただこうと思います。よろしくお願いします」
(セッション)
『TEA FOR TWO』(嶋津健一トリオの演奏に合わせ金子さんと千里さんのデュエット)

千「セッションとかよくやられるんですか」
金子「やります、いろいろなメンバーと。楽しいですね、それぞれの出会いがあって」
千「今日はいきなり僕が口タップをやるって言ったときはかなりびっくりされてましたけど」
金子「はい、タップの練習はされてると聞いたことはあるけど何をするのかなって。口タップって初めて見ました、聞きました」
千「(笑)、失礼しました。金子さんは大学時代にジャズと出会われて」
金子「友達がジャズのアルバムを貸してくれて。それまでソウルとかボサノバとか聴いてたんですけど、ものすごくショックを受けて。こういう音楽が、歌があったんだなぁって」
千「一番ショックだったのはどういう部分なんですか」
金子「エネルギーっていうんですか、それにすごく魅了されました」
千「80年って金子さんがデビューされたとき二十歳で聴いてたんですけど、当時ラジオから聴いたりとかするイメージとこうして金子さんに直接お会いして直接生で聴くのと印象が違って。生の方がぐりっと、なんて言うんだろう、迫ってくるというか濃いものがわーっと体の中に耳から入ってくる感じが」
金子「やっぱり音楽は何でもそうですけど生って最高ですよね。CDは記念としては素晴らしいけど、やっぱり生、大好きです」
千「今夜もしかして初めてジャズのライブを経験されてるかたもいらっしゃるかもしれないですけど、ジャズの面白さといいますか、聴きどころみたいなところ、金子さんから何か」
金子「一番は自由だということ。自由って難しいですけど、基本的な約束事あるんですけど、その中で好きな音を取っていっていい、リズムも変えていっていい、いろんなふうに変化、自分らしく変化させていけるってところが魅力だと思います」
千「よくスキャットとかスイングしてるねとか。当時80年ぐらいに金子さんが登場されたときってよくスイングっていう言葉で語られてた記憶があるんですけど、今の『TEA FOR TWO』の頭にも、私、バースをやろうかしらっておっしゃってて、バースって何だ?何だ?小節のことかなと思ってて」
金子「バースって、元々スタンダードナンバーって昔はミュージカルに使われていて、その場面の設定を話をしながらだんだん歌に入っていくっていう場面があるんですが、歌と語りの間みたいなところをバースと呼ばれてて。スイングってブランコのことですよね。その名の通り気持ちいい揺れに乗って歌う、演奏するっていうことだと思います」
千「今日は前半戦、乗れてますか?ブランコ」
金子「どうですか(笑)」
千「僕はすごく楽しく聴かせていただいてます。みなさんもねぇ(会場から拍手)。スキャットっていうのは?」
金子「有名なのはルイ・アームストロングっていう人が歌詞カードを置いてあったんだけどレコーディングの最中に歌詞カードが落ちてしまって分からなくなったんで、まぁいいや、ドゥビドゥビっていっておこうっていうのが始まりだと言われてますが」
千「それがスタート?」
金子「今日もスキャットしてしまいそうです(笑)」
千「好きな歌っていっぱいあると思いますけど、今、金子さんの中で好きな歌、これいいなぁと思ってる曲、例えば一曲挙げるとするとどういう曲になります?」
金子「最近大好きな曲は『BRIDGES』という曲、ミルトン・ナシメントというブラジルのシンガーソングライターが書いた曲なんですが『橋』というタイトルで。自分が歩いてきた道をいろいろな橋に例えて振り返ってみたら、大きな橋も渡って小さな橋も歩いてここまできて、また明日新しい橋を渡っていくという、とてもすてきな詞なんですよ。歌うたびに勇気づけられるすてきな曲です」
千「僕もうろ覚えなんですけど橋の真ん中で誰かに出会うっていうフレーズがありますよね」
金子「私たちの間に橋が架かっているとして両方から歩いていったら真ん中で出会えるでしょうっていうとてもすてきな場面があるんです。橋っていろんな意味がありますね。時の橋もあるし、人と人、橋渡しをする架け橋でもあるっていう」
千「80年から20年以上プロの第一線で頑張ってらっしゃるんですけど、その歌に魅せられたっていうのは何か自分の中で変化というか歌に対して元気なときだけじゃない時期もあったのかなって」
金子「そうですね。ちょうど出会った時期が良かったというか、私もあまり後ろ振り向かない方ですけど、振り向いてみたらすごくいろいろな幸せな橋を架けてもらっていたり渡らせてもらったり、ちょうど気が付いた瞬間だったので、とても歌いたかった曲でした」
(金子晴美ライブ)
『BRIDGES』『OVER THE RAINBOW』『MOANIN'』
千「歌ってらっしゃるときって何か乗り移ってますね。ちょっと恐いですかね、表現が(笑)」
金子「音楽の力ですね」
千「ステージの空間で音が返ってくると自分が返して、それがハーモニーになったり、一つのグルーヴになると」
金子「ミュージシャンと私とお客さんと一緒に作ってる感じですよね」
千「さて、金子さんは2000年にアルバムをリリースされましたけど青森県で?」
金子「五所川原という青森県の小さな村で作ったんですけど、ライブ盤を作りたかったんです。このままの空気を残したくて作ってみたんですけど、やっぱり緊張して。でも思い出のアルバムです」
千「それはいつ位ですか」
金子「五月の弘前の桜が満開のときでした」
千「『ジャズの歌詞の中に花って出てくるんですか。素朴な質問ですけど』」
金子「フラワーですか?出てきます。フラワー、星、スター、ムーン、いっぱい出てきます」
千「(ライブのお知らせ)最近は演奏活動の他にジャズスクールでの講師もされてるんですけど」
金子「私、教えるのって向かないと思ってたんですけど、やり出したら一緒に歌を楽しむ仲間がいるってすごく嬉しいことですね。音楽って聴くのと違って自分で口に出すと詞の意味がもう一つ気持ちの中にしみ込んできてとても素敵ですので歌ってみて下さい、是非」
千「『金子先生、今スクールで教えてもらってるんですが、歌はもちろん超一級ですが教えるのもものすごく上手でとても感謝しています。いつも言われる例え話、うまく再現できないんですが面白くて笑いポイントが必ずあるので楽しいです』ってきています。『金子さんにとってのジャズの神様は誰ですか』」
金子「一人をあげるのは難しいですけどジャズの母のように思ってきたエラ・フィッツジェラルドの姿が焼き付いていますね」
千「ジャズの魅力っていうのは一生」
金子「そう、いくつになっても歌いたい曲があり、一生の楽しみ、宝だと思います」
千「生徒さんともある意味セッションしているような」
金子「そういう場をいっぱい作っていきたいですね」
千「それも考えたらライブですよね。キャッチボールしてるライブ。今後ジャズとはどういったスタンスでつきあっていきたいですか」
金子「私はいつもジャズにどうしても戻りたくなるんですが今度はいろんな日本語の歌を歌いたくなってるんですよ。挑戦してみたいと思っています」
千「じゃ子供が歌ってるような、みんなが知ってるような」
金子「はい、そういうのをやってみたいと思ってるんです」
千「それ、ちょっと聴いてみたいですね。それをやって、またジャズのオーソドックスなところに戻ってと」
金子「はい、いつでも戻っていきたいです」
エンディングテーマは『彼女の場合』