Live Depot
Every Thursday, PM7:00〜from TOKYO FM HALL
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Vol.182 2004/12/09 ON AIR (guest:来生たかお)
「こんばんは、大江千里です。ようこそおいで下さいました。超満員の東京FMホールです。ありがとうございます。今夜は大人の歌をしっとりうっとりしびれながら聴いていただきたいと思います。日本屈指のメロディメーカーそしてシンガーと言って過言ではないでしょう。この方をお招きいたしました。来生たかおさんです!」
(来生たかお登場)
千「はじめまして」
来生「こんばんは、来生たかおです」
千「リハーサルの時は真っ白なシャツに灰色のカーディガンを着てらしたんですけど、本番になるとシックな感じで」
来生「そうですか…(すごくシャイな感じが伝わってきます)」
千「(笑)、喋って下さいね」
来生「あ、はいはい(笑)」
千「来生さんの紹介を。1976年シングル『浅い夢』でデビューされて、81年には『夢の途中』が大ヒット。この曲は薬師丸ひろ子さんも『セーラー服と機関銃』というタイトルで歌ってらっしゃるんでカラオケで得意ナンバーだって言う方もいらっしゃるでしょうね。ソングライターとして中森明菜『セカンドラブ』、大橋純子『シルエットロマンス』をはじめ、お姉さん、来生えつこさんが作詞、来生たかおさんが作曲のコンビで数多くのヒット曲を出されていますけど、先月久しぶりにニューアルバム『egalite』をリリースされました。聞き慣れない言葉ですけど」
来生「フランス語なんですけど。英語でデュース、テニスで40・40のときの。それをフランス語ではegalite」
千「ちょっといろんな含蓄ありそうですけど、あとで掘り下げて聞きたいと思います。来年でデビュー30年ということですけど。来生さんはどうなんですか、ライブ前っていうのは。普段と同じような感じでライブをやられるほうですか、それもと未だに?」
来生「これは何度やっても同じでね。戦々恐々っていう心境で。やっぱり逃げ出したくなるね。やっかいな現象なんですけどね。ただ今日は感慨深くステージ上がってると言いましょうか、ここはデビュー10周年の時に11日間に渡って、ちょうど11枚のアルバムを出して、全部日替わりでここで11日間やったんですよ」
千「東京FMホールで」
来生「それ以来という」
千「来年が30周年ということなんで20年ぶりの東京FMホールですよね。演奏前に番組を聴いてらっしゃるみなさん、そしてブロードバンドご覧のみなさんに一言来生さんからメッセージお願いします」
来生「いちばん苦手な生…、いやここだけのライブだったらいいんだけどね、今日はそうじゃないでしょ?」
千「放送されてますよ」
来生「それを思うと怖いですよね」
千「怖いですよね(笑)。じゃ、放送されてないと。この会場だけの独占ライブだということでみなさんどうでしょう!(会場から拍手)とにかく来生さんを盛り上げながら、あったかーいムードを醸し出して最高の夜にしましょうよ、ね!」
(来生たかおライブ)
『シャドー・プレイ』『まなざしの時間』
-CM-
千「セッションタイム!(千里さんのピアノ演奏のメロディは『夢の途中』)東京FMホールから生中継、大江千里のLive
Depot、今夜のゲストは来生たかおさんです!僕も上手のデポピアノに向かって、これから来生さんと一緒に演奏したいと思います」
(セッション)
デイブ・クラーク・ファイブ『Because』(ふたりの奏でるピアノのメロディがシンプルな曲を引き立てていました)
千「この曲を来生さんはなぜ選曲されたんでしょう」
来生「僕、アマチュアバンドをね、二十歳の頃、今でいうライブハウスでアルバイトで歌ってて。オープニングがいつもこの曲から始まったんですよ。もちろん好きな曲でね」
千「すごい切ないコード感が」
来生「いいですよね。シンプルなんだけど、ものすごくメロディアスで」
千「そもそも来生さんが音楽にはまったきっかけってあるんですか」
来生「僕は中学の時にベンチャーズですね。エレキサウンド聴いて初めてギターを弾くようになって。それから高校になってフォークブームがありまして、それでいたずらに曲を作ったっていうのが作曲の始まりでね。ただずっと趣味でやってたんで、まさかプロになるっていうことは」
千「意識せずに?」
来生「ピアノを二十歳の頃から習うようになって」
千「じゃ、まずギターから入って、ベンチャーズとか聴いて」
来生「ギターで曲を作ってて。曲を作るのがものすごく面白くなったのね。曲作りにのめり込んだ、これがライターとしてやっていけたらなっていう、そう思うようになったんですね」
(来生たかおライブ)
『雑踏』『夢の途中』『Goodbye Day』
千「いかがでしたか、20年ぶりの東京FMホール。(なかなかハッキリとした感想を口に出さない来生さんに)(笑)、今日は僕はブロードバンドで見たり生でも会場の中でみなさんと一緒に楽しませていただいてたんですけど。来生さんもさっきおっしゃってたけど、すごくシンプルだけどいろんなものを」
来生「僕は古今東西一番好きなのが『Moon River』で。もう本当にシンプルなんだけど、すごいいいでしょ?ああいう曲作れないですよね」
千「僕からすると来生さんのメロディってすごく自然で。例えば自分だとサビでインパクト持ってくるために転調してやるとかいろいろ技を入れたりしながら整えていったり作曲するんですけど、来生さんの曲を聴いてると、なんでこんなに耳に残るんだろうって思うときありますよ」
来生「基本は音楽は心地いいっていうのが一番ですね。あとは哀愁感、そういうものが好きなんですよね。そういうものを作りたいと思ってる」
千「今日も来生さんがこの番組用に写真を持ってきてくれたんで見ながらお話伺いたいと思いますけど。(ディスプレイ見ながら)ザワザワッて会場も雰囲気変わりましたけど(笑)。駅のホームのベンチで腰かけてる来生さんがいて、タバコ持って足組んでコートのポケットに新聞入ってますね。東スポですか、これ」
来生「(笑)、いや、ここ禁煙なんですけど」
千「タバコ吸ってますよ!」
来生「それはちょっと申し訳なかったけど、これ始発なんですよ。未明に出かけて一番電車待ってるところ。人がいないほうがいいと思って」
千「ほとんどというか全然。刑事コロンボみたいなコートで」
来生「北鎌倉で、バーバリーで」
千「鎌倉というと来生さんは小津安二郎さんの作品に非常に魅力を感じてらっしゃるという話を聞いたことが」
来生「去年、生誕100年でね、改めて観て、ものすごくいい映画だなと思って。それで今年ずっとはまりましてね。今年はちょっと小津にこだわってみようと(笑)。ジャケット写真の時に、小津安二郎は還暦の誕生日に亡くなったんですけど、最後10年間は北鎌倉で暮らしてたんですよ、ゆかりのあるところで撮ろうかと」
千「『egalite』の文字の一個だけが赤になってたり。あれ、小津さんの手法ですよね」
来生「小津さんの、独特のあるんですよ」
千「来生さんの作り出す音楽と小津さんに共通点があるとしたらどういうところですか」
来生「おこがましいと思うんですけど、小津さんはほとんどが家族がテーマなんですね。日常のどこにでもあるような話を淡々と静かに描くっていうのが小津作品であって。そうすると周りから変わり映えのないワンパターンって結構非難受けたりしたわけですよね。そのときに小津さんが答えた言葉で有名な言葉があって、『僕は豆腐屋なの、いい豆腐しか作れない。ステーキやハンバーグなんていうのは作れないだ』って。『とにかくいい豆腐を作っているだけだ』っていうようなことを言ったんですよ。僕はデビュー『浅い夢』なんですけど、今も全然変わってないんですよ。僕もずっとワンパターンで(笑)。ただワンパターンっていうのが素晴らしいことではないかなと思ってて。そこが共通点かな、すごくおこがましいんですけど(笑)」
千「いや、とんでもないです。あれも聞こう、これも聞こうと思ってたんですけど、今の話聞けちゃったらいいかなっていうのと、あとは単純に時間がおしてきたっていうのあるんですけど(笑)。ニューアルバム『egalite』先月出ました。美空ひばりさんに提供した『笑ってよムーンライト』とか来生さんが高校時代に書いたという『サラリーマン』」
来生「初めて作った曲ですよ、それ」
千「ゆかりのある場所で来生さんがたたずんでる昔住んでた公団の写真が出てきたり、六曲入りですけど全作詞はえつこさんで素敵なアルバムです。30周年に向けてフルアルバムとかいろんなツアーとかありますか」
来生「そうですね、あります。いや、ちょいと頑張ってみようと(笑)」
エンディングテーマは『彼岸花』