Live Depot
 Every Thursday, PM8:00〜 from TOKYO FM HALL
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Vol.47 2002/03/28 ON AIR (guest:久石譲
「こんばんは。東京FMホールのみなさん、ようこそおいでくださいました。そしてFMをお聴きのみなさん、こんばんは、大江千里です。このホールは4週間ぶりです。春の総集編を上の7階のアースギャラリーから3週、いろんなセッションやってきた音を聴いていただいてるうちに、すっかり春爛漫になってしまいました。桜のシーズン、今年は観測史上最も開花が早かったと言われてるんですよね。僕も今日車で来たんですけど、家の前にでかい桜の木があって、花びらが散るわけですよ。で、僕の車が黒っぽいんで、花びらをいっぱい乗せて、全身花びらまみれでTFMへ入りました。昨日の雨で随分葉桜っぽくなってきましたけど、番組は2年目に向けて満開で突っ走りたいと思います」
(久石譲登場)
千「お久しぶりです。今日はよろしくお願いします。紺の上下でカッコいいですね。2年ぐらい前に某番組でお会いして」
久石「そうですね」
千「そのあと、久石さんとお仕事を一緒にさせていただく機会があって」
久石「作曲をお願いして。某歌手のプロデュースの時ですね。あの節はありがとうございました」
千「こちらこそありがとうございました。久石さんは大学の作曲家在学中から音楽活動を始められて、現代音楽、ミニマルミュージック?」
久石「(笑)ちょっと難しいやつ」
千「そこからいろんな音楽を世の中に送り出して、最近は映画音楽をたくさん手掛けていらっしゃる音楽家ですけど。最近でいうと『千と千尋』とか『トトロ』とか『もののけ姫』とか、宮崎作品はすべて。そして『HANA-BI』とか『菊次郎の夏』とか、北野監督の作品の音楽もたくさん手掛けてらっしゃいますよね。なんかお客さんの中にビデオを持って久石さんに『これですよ』って(笑)」
久石「僕の『Quartet』という初監督作品のビデオですね」
千「そうですよ。ご自身で監督もされて(会場から拍手)。先日、世紀をまたいで建設中のガウディのサグラダファミリア、あそこの建物は実は楽器なんだっていうドキュメンタリーをやられてましたよね」
久石「あれはちょっと大変でした。ただやっぱりガウディってすごい人なんで。一見変なシェープのカーブが多いじゃないですか。あれがなんかデザインかと思ったら全然デザインじゃなくて、非常に力学的になってて、イメージとかとは程遠かったですね。ホントに力学に構造的にできてる。そのへんすごい参考になったというか、作曲にも論理的なことはきちんといるんだなぁって思いました」
千「あの建物自体が楽器っていうのがありましたけど、楽器のようにこうやればこう音が出る…」
久石「音が出るっていうのは基本的な構造、絶対に変わってないから。あれ自体が巨大な塔になってるんだけど、響く部屋っていうのがいっぱいあって、あ、これは絶対楽器だって思いましたね」
千「スペインの話もあとで聞かせてください。そして今週月曜に東北地方でのツアーを終えたばかりで、すごい緊張感の中にいらっしゃるんじゃなかいと思いますけど、今日はリラックスしつつ、1時間たっぷり、ピアノ一本なんですよね、今日は」
久石「しまったと思ってんですよ(笑)。助っ人をたくさん連れてくれば良かったと思って。ま、いいか。頑張るしかないな」
-CM-

(久石譲ライブ)

『Summer』『Silencio de Parc Guell』

千「『Silencio de Parc Guell』ですけど、公園の、どんな公園か行ったことないんですけど、自分なりに日差しが射してて、とかいろんなことを考えてトリップしちゃうとこあったんですけど」
久石「まっすぐ歩いてるんだけど柱が曲がってるんで平衡感覚失う回廊のような位置があるんですね。胎内宇宙に入っていくみたいな感じで。それが衝撃だったんで10年ぐらい前に行ったときに曲ができたんです」
千「ガウディの設計なんですよね。前から興味があって?」
久石「ガウディはすごい興味があって」
千「で、この曲ができて。実際演奏なさってる時って景色が広がってるんですか?頭の中で」
久石「頭の中で?いや、次何かなぁって思って。あと3小節経つと難しい、とかね。そんなことしか考えてません」
千「(笑)。次は早弾きのフレーズがくるぞ、とか?」
久石「あそこは外しやすいぞ、とかね(笑)」
千「僕も会場の中で楽しませていただいたんですけど、僕の角度で久石さんの手元がちょうど見えないんですけど、ペダルを踏んでらっしゃる足がよく見えたんですよ。演奏家によってペダルと音のタイミングっていうの、あ〜僕と違うなって思いながら」
久石「さすが音楽家ですね」
千「ある意味、特等席で観ました。すごくきれいな場所らしいですね、この公園は」
久石「やはりガウディの一番の良さが出てるんじゃないですかね」

-CM-
千「セッションタイム(千里さんのピアノ演奏)。久石さんのグランドピアノが中央にデンと置かれてあって、僕は下手の方にエレキピアノを向かわせて置いてるわけで。今、向き合ってる状態です」
久石「気持ちいいですね、なんか顔が見られるってすごく嬉しいですよ。セッション、好きなんです。滅多にやることないんで今日はすごい楽しみで」
千「今日は照明がいい感じで。よく西麻布辺りにあるバーで、あっどうも、こんばんはって感じで」
久石「そのバーのピアノ弾き?(笑)」
千「ピアノになってるテーブルのこっち側と向こう側でたまたま会ったような」
(セッション)
久石譲『風のとおり道』

千「『となりのトトロ』から『風のとおり道』でした。優しいメロディの曲ですよね」
久石「優しいんだけど、これ、すっごくやな曲で。あんまり人前で弾きたくない曲なんですよ」
千「そのこころは?」
久石「♪タタタティタティタダ〜とか意外と歌いづらいですよ、これ」
千「結構とびますもんね」
久石「あんなの簡単に歌ってるなんて信じられないよね。だからあんまりやりたくない曲」
千「難しい曲なんですよ」
久石「僕の難しいって言われます。シンプルに聞こえるんだけど」
千「聴いてるときは耳に馴染むっていうか、スーッと入ってくるんで。実際にセッションやるって譜面を頂いて弾いてみると仕掛けがいろんなところにあって」
久石「ちょっとね。でも、大江さん、うまいですよ」
千「いや、とんでもないっす」
久石「すごい、素晴らしいセンス。いいですね。今度コンサート、一緒にやりますか」(会場から拍手)
千「いや〜、ありがとうございます。本人、今固まり状態で石のようになってるんですけど(笑)。改めて紹介しましょう、ジョウ・ヒサイシ〜!(会場からの声に)今何て言ったの?譲ちゃん?譲ちゃんって言いませんでした(笑)?あの、久石譲っていう名前はクインシー・ジョーンズからきてるってホントの話なんですか」
久石「それホントです。学生時代に、ちょっとクラシック系の学校だったんで、アルバイトでテレビや何かの仕事するときにちょっとまずいかなって言って尺八吹いてる友人に相談したんですよ。そしたらそいつが変なヤツで、お前好きな作曲家いるかって言われて、しいて言うとクインシー・ジョーンズかなって言って、その場で決まって、そのまま使ってる」
千「これは多分ガセネタじゃねえかとか思いながら聞いてみたんですけどホントだったんですね。じゃ本名は田中小次郎とか、全然別の名前とか?」
久石「田中って、どっから来るの(笑)?」
千「(笑)。ちょっと言ってみました。今コンサートツアー中で新しい試みをされているという話も」
久石「ずっと大人向けのコンサートしかしてなくって。初めて大人と子供が見られるコンサートってことで『となりのトトロ』を初めて、『青少年のためのオーケストラストーリーズ となりのトトロ』ってフルートから楽器紹介するようにアレンジしたり、途中でナレーション入れてストーリーを追いながら音楽を聴ける25分、30分ぐらいのヤツを作ったんですよ」
千「大山のぶよさんとか呼んで?」
久石「僕がやったの。僕が自分でピアノ弾きながら語りやったんですよ」
千「『となりのトトロ』でメイが迷子になったりして、さつきちゃんが」
久石「そう、それを全部言うの」
千「今やってみてもらってもいいですか」
久石「いや、それでね。風邪ひいちゃったんですよ。ツアーの後半の時は毎日病院行って東京戻ってきてまた病院行ってっていうすごい風邪だったわけよ。で、最終日が青森だったんだけど、朝起きたら、バリー・ホワイトって知ってる?あの人みたいに(低い声で)『おはよう』状態になって。まずいよ、これって。語りもやんなきゃなんないんだけど、語りの中でオーケストラの紹介が終わったら僕が『お父さんとメイとサツキはのどかな田舎に引っ越してきました』って音楽がスタートするんだけど、(低い声で)『お父さんとメイとサツキはのどかな田舎に引っ越してきました』。全然さまになんないんですよ(笑)。でも途中がもっとおかしくて」
千「今、ザワザワザワって飛び火してますよ、会場(笑)」
久石「『暗闇に何かいます。黒くてとげとげして小さなもの。まっくろくろすけです』って高めに言わなきゃなんないのね。(低い声で)『暗闇に何かいます。まっくろくろすけです』(会場から笑い)まいったなぁ状態だったんですけど、逆にそのハスキーボイスが『お母さんは入院してます。でも二人は元気です。でもやっぱりお母さんといたい』みたいなときに、かすれた声で言ってたら、すっごく感動したって言う人がいて、あ〜、まぁどっちもどっちで(笑)、よかったかなぁ(笑)と思ったんですけど」
千「詳しい長いストーリーありがとうございます(笑)」
久石「東京は今度、某有名なスペシャリストが来てやるんですよ。ただ発表してないんだよね」
千「言っちゃっていいんですか?(笑)」

(久石譲ライブ)
『あの夏へ』『HANA-BI』
--CM--
千「会場によって音楽の神様が宿ってる感じがあって、それぞれの場所で同じようなメニューでやっても違うと思うんですけど、今日は全く一人で演奏されて、ここはすごく天井が高いホールなんですけど、いかがでしたか」
久石「僕、このホール、好きなんですよ。数年前にここで二日間、12月に、真ん中にピアノ置いて周りにお客さんが囲むっていうのでやったことがあるんですね」
千「それ、いいですね」
久石「そのときもピアノのソロでやって。あの時からピアノに自信がついた想い出のホールなんです。すごくホームに帰ってきたって感じで落ちつきましたよ、今日」
千「良かったです。初のピアノソロアルバム、僕昨日CD屋さんでみましたけど、鍵盤の」
久石「ジャケットいいでしょ?あれ」
千「すごくあったかくてカラフルでいいですよね。『ENCORE』、ピアノのみで表現したセルフカバーアルバムということなんですけど、今日はまさにそのアルバムを再現という形」
久石「もっと優しく書いときゃ良かったなと思って(笑)」
千「久石さんて穏やかな方っていう印象があったんですけど、僕、お仕事もさせていただいたじゃないですか。曲のここをこうしようとか、シンガーの方にこう歌っていただこうとか、直接電話、僕の携帯にいただけるんですよね。結構20分ぐらい喋って、いや、あそこはこう、あそこはこうって結構すごくスパッとストレートな方だなって思ったんですけど(笑)。今回どうして改めてピアノのみでやってみようというふうに?」
久石「去年映画の監督やったりで、ここ数年、わりとプロデュースから仕事の範ちゅうが広がり過ぎちゃって。音楽家はやっぱり四六時中音楽を考えてるべきだと思うんですよ。ところがいつの間にか時間があるとビデオ観てたりしてるときのほうが多くなっていて。原点に戻るっていうのは僕の場合ピアノだったんで、今年はきっちりとピアノに戻ってやろうと思って」
千「その原点を今日はまさに見せていただいたわけですよね。選曲は難しかったんじゃないですか」
久石「結構難しかったです。ただ、この『ENCORE』が終わったあとで『Piano Stories IV』っていう同じくピアノのみのアルバムを年内に作る予定なんですよ。両方セットでひとつ?世界が作れればいいなと思ったアルバムです」
千「今度のヤツは今回と趣が」
久石「うん、完全にオリジナルだけのヤツで」
千「じゃスペインの景色も見れるわけですね」
久石「ガウディ、やりたいですよね、いつかね」
千「『Quartet』という映画を自ら撮られてDVDとビデオが出たばっかりなんですよね。そして東京でもいよいよコンサートがあります」
久石「さっき言ってもいいって言われたんで。元米米の石井竜也さんがナレーションで出てくれるんですよ。券が全部売れちゃってるらしいから、あれなんですけど、結構ド派手なコンサートやりますよ」
千「石井さんの素材も派手ですからね」
久石「合唱もものすごい人数ですし、ちょっと派手目です。良かったら来てください」
千「でもチケットが(笑)」
久石「僕の分差し上げますから(笑)」
『ジョーのテーマ』
「来週はいよいよ4月ですね。桜はもうすっかりって感じかな?この時期は体調がいまいちだったりとかあるんですけど、季節にどんどん先に行かれちゃって、なんか妙な雰囲気で毎日送ってますけど、みなさんも花粉に気をつけてください、っていわれてもしょうがないですけど、お大事に(笑)」