「こんばんは。大江千里です。ようこそTFMホールへいらっしゃいました。お盆休みで都心のほうはガラガラです。普段あれだけ渋滞してる道がガラガラだと、ついつい車線変更しちゃったり飛ばしそうになりますけど、そこらへんは安全運転で一つ。ラジオを聴きながら運転されてるかたもいると思いますんで」-CM-
(上妻宏光登場)
上妻「はじめまして。お願いします」
千「黒でシックですね」
上妻「え〜、ま、シンプルに」
千「よろしくお願いします。こういう天井高い場所はどうですか」
上妻「すごくリハーサルのときもやりやすかったですし、自分もライブがすごく好きで、お客さんの顔を見れるこのライブ感ていうのが楽しみで、今日はワクワクしてます」
千「また段々になって、お客さんの顔がすごくよく見えますよね」
上妻「段々畑みたいな感じですね(笑)。なかなかいい感じに」
千「じゃ、一体感のある時間にしましょう。少し簡単に上妻さんのプロフィールを紹介させてください。73年生まれで六歳のときに津軽三味線を始めて数々の大会で優勝して。よく、こういう話聞きますけど、今僕の横にいる黒のジーンズと言っていいんでしょうか?ちょっとヘビ皮か何かになってる…」
上妻「バイクで轢かれちゃったような跡でしょう?これ」
千「(笑)。ちょっとカスタムしたようなジーンズで。この伝統楽器をフィーチャーした異色のロックバンドでいろんなところを回って、そしてソロデビューして、二作目の『BEAMS』が出たばかりという。普段は紋付きとか袴とか、そういうイメージがよぎるんですけど、そういうカッコで演奏されることもあるんですか」
上妻「現状も民謡のほうやってますし、そういうときは紋付きを着てやりますね。自分のコンサートの場合は、こういうカッコのことが多いですね」
千「髪も黒く染めたりとか?」
上妻「髪は16、7ぐらいからずっとこういう色だったんで(笑)、最近茶髪にしたんじゃないんで、ずっと変えずに」
千「顔色もいいです、血色が」
上妻「海行っちゃったんですよ、久しぶりに。休み取れたんで」
千「じゃ、今夜の意気込みをラジオを聴いてるみなさんにどうぞ」
上妻「今日は古典とは違う三味線のスタイルを聴いていただくんですけど、実際映像を観ていただければ一番いいんですけど、今日はなんと素晴らしい、生でホームページで見れるということで、そちらのほうも見ていてくれると、あ、こういうふうに正座して弾いてるんじゃないなっていうのがわかっていただけると思いますんで。ちょっと立って今日は演奏しますので、じっくり見ていただきたいと思います」
(上妻宏光ライブ)
『Beams』『Solitude』-CM-
千「セッションタイム!(三味線の音からスタートして、そこに千里さんのピアノが絡む)」(セッション)
上妻宏光『On Bourbon ST.』(上妻宏光ライブ)千「いかがでしたか」
上妻「いや〜、自分は前から大江さんをテレビで拝見させていただいて、こんなセッションできるということで、ホント夢のようです」
千「あ、光栄です、ありがとうございます。ニューアルバムから『On Bourbon ST.』ですが、アルバムではパーカッションと三味線で」
上妻「元々この曲のイメージが、自分がニューオリンズに行ったときに、そこでストリートで弾いたりブルースのかたのライブでセッションさせてもらったんですけど、すごい即興性が強いので、ジャズと言われるかと思ったり。古典の曲を一曲弾かせてもらったら、これはブルースだねって。また、ブルースと三味線の歴史的背景も似てて、あ〜、津軽三味線ってブルースだなって思ったんですよね、そのとき」
千「リズムがブルースに近い感じで?」
上妻「リズムとか音使いがそうですね」
千「今年の五月にもニューヨークに行かれて、いろいろセッションされたって噂を聞いたんですけど」
上妻「これがまた面白くて」
千「これ、飛び込みで入ったんですか」
上妻「そうなんです。夜中の二時以降にアマチュアの人が並んでジャズクラブでセッションするわけです。その中でポツンと三味線がいるわけですよね」
千「カッコいいじゃないですか」
上妻「演奏する前はみんな冷たいというか、こんなんでできるかみたいな視線なんですけど」
千「三味線持ってて、何持ってんだっていう感じだったんですか」
上妻「ニューヨークでも全然知られてない楽器だったもので、自分もそこがショックで。絶対世界で通じる、三味線という名前が通るように自分も頑張っていきたいなと思ったきっかけの土地でもあります、ニューヨークは」
千「飛び込んでいったときの思いっ切りっていうのはいいほうですか」
上妻「手をすりながら一曲弾かせてくださいみたいな(笑)ノリで行って。で、弾かせてもらって、お客さんとかプレイヤーが変わっていくのが楽しかったんですよ」千「質問来てますんで聞いてみたいと思いますが。『いつも上妻さんは目を閉じて津軽三味線を弾かれてますが、それには何かわけがあるんでしょうか』」
上妻「古典の曲というのは一人で弾いて耳を集中させたいっていうのもあるので、目をつぶって弾くことが多いです」
千「古典は変拍子なんかも多いんですか」
上妻「変拍子というか、基本的に民謡の人って一拍で考えることが多いので、ある面変拍子になるときもあります」
千「『津軽三味線を立って弾くのは難しいと聞いたことがあるんです。どのようにして立って弾けるようになられたんでしょうか?特別な練習をされてますか』」
上妻「最初は座って弾くのが100だったら、立って弾くのは演奏の力が50ぐらいしか弾けなかったですね。スタジオを借りて、テープを流しながら立って、鏡の前で練習したりってことは十代の頃にありました」
千「鏡の前でっていうのがミソですよね」
上妻「少しカッコつけですかね?」
千「始めたのは六歳のときで、三味線を弾いてて自分が一番魅せられるのって、どこらへんですか」
上妻「迫力ある音色もそうなんですけど、日本人として日本の楽器を海外で演奏するときに、日常会話ができなくても音楽で会話ができるって部分では日本人らしい個性やリズムも出せるってところが最大の魅力だと思いますね」
千「上妻さんが思う日本人らしい個性っていうのは?」
上妻「日本人にしかない間っていうのもあるんですよね。セッションした曲も訛りがあるんですよね、民謡独特の。海外の人にはないものも日本の民謡にはあるので、それをやることで向こうの人が驚かれるってことあります」
千「でも、どうしてロックとかジャズがベースになってるような音楽とか、こっちの方向をやろうと思ったんですか」
上妻「元々三味線習ってるってことを小学生の頃言えなかったところあって。どういう洋服を着させれば同世代の人に聞いてもらえるかってこともあったし、海外でも三味線てものが民謡以外にも、いろいろ演奏できる力があると思ったので、その可能性を広げたいと思いました」
千「リハーサルのとき気になってたんだけど、ここのネックの部分のチューニングを、こっちで弾きながら何回もやってましたけど、あれはなんですか?狂うの?」
上妻「糸の素材が狂いやすいんですよね、照明とかで。常に演奏してる間に狂ってくるので直してるんですよね」
千「一番鳴りがいいのってどこらへんなんですか?張ったときですか?」
上妻「糸をまず張ったときと、あとは切れる手前ですね」
千「(笑)。危険な状態のとき?」
上妻「今日はいい感じだなって思うと、二、三曲いくと切れたりするんですよね」
『Accustom』『Grooving』--CM--
千「上妻さんの世界って他にないですよね」
上妻「従来のものをやっていくことも必要なんですけど、可能性があるんであれば新しいことをやって、どんどん挑戦することで民謡っていうものも生きてくると思いますし、楽器としての可能性もどんどん広げていきたいと思います」
千「古典を演奏する楽器でポップスとかジャズとか他のジャンルを演奏するとき一番限界を感じて、なおかつ面白いなって思う点はどこですか」
上妻「限界っていう部分は、三味線自体の音が伸びないって部分があって、シンプルなメロディ、歌メロ的なメロディラインではかなり難しい。ただ、それだけをやってしまうんでは三味線らしくないってこともあって、ジャズを弾いてても三味線らしいっていうのを出したいし。面白いとこでは弦楽器なんだけど打楽器的な要素が高い。そういう部分は三味線の特徴で、その両極端をうまく混ぜながら、いいバランスで新しいことに挑戦したいと思います」
千「エレキで弾いてるときは、かなりボリュームできてるから、そういった意味で可能性がいろいろ広がって…」
上妻「エレキ三味線ができたことで演奏の幅も活動も広がったと思うんですね。楽器屋さんと相談しながら改良して、もっと素晴らしいものを作っていきたいなと思います」
千「足元にエフェクトとかいっぱいあって音がいろいろ広がりそうですよね。先月セカンドアルバムが出ました。これはどんな感じ?」
上妻「アプローチ的には洋楽的だと思いますけど、一般のかたに聴きやすい形で三味線音楽が聴いてもらえるアルバムが仕上がったのではないかなと自分では思ってるんですけど」
千「ファーストのときは半分ぐらい古典が入ってたじゃないですか。今回はすべてがオリジナルってことで、自分の中でも加速してる部分ってあるんですか」
上妻「あと一、二作あとでもよかったかな〜と思ったんですけど、自分が作りたいという欲望がでたので、オリジナルでとりあえずやろうと。かなり難産でしたけど」
千「スタートした全国ツアーですけど、東京は12月20日にZEPP TOKYOで。そして更に来月からはお台場の新しいライブスペース、studioDREAM MAKERってとこでマンスリーライブが始まるということで」
上妻「ここはツアーとは違う演奏内容にしようと思いますし、いろんな人をゲストで呼んでセッションしたいなと思うので、お時間あれば大江さんも…」
千「あ、時間作っていきますよ」
上妻「また、そんな」
千「また、そんなって、行かせてください、ぜひ。最後に三味線のプレイヤーとして、これから一番ここだけはこだわってやっていきたいって部分を教えてください」
上妻「どんな音楽であっても三味線という素晴らしいものを残していきたいし、日本にこういう素晴らしい楽器があるってことをみなさんにわかってもらいたいので、根本忘れないで民謡もやり続けながら、みなさんに新しい三味線を聴いていただきたいなと思います」エンディングテーマは『いんなあ・とりっぷ』
「今日はいろんな場所で、最初は客席の中でみなさんと一緒に聴かせていただいたり。元気が出るって月並みだけど、すごくパワーをもらいました」