「こんばんは。大江千里です。ようこそ!読書、映画、ファッション、いろんな好奇心がそそられる秋ですけど、本なんか買って毎晩寝る前に読んだりしてるんですけど、すぐに眠たくなってしまいます。僕の場合ちょっと食欲が勝ってる秋って感じですけど、みなさんはいかがお暮らしでしょうか」-CM-
(井上堯之登場)
千「どうも!お久しぶりです。キャップに黒のシャツ、カーキのTシャツ、ジーンズ。ポケットがおしゃれですね。時々FMの廊下とかでお会いしたことあるんですけども」
井上「よく覚えてます、ええホントに」
千「堯之さんといえば、この番組の前身とも言える東京FM名物番組『ライヴコンサート』。あの番組、何年続きましたか」
井上「丸十年、ここで月一回やってたんですよ。だから懐かしいし」
千「いかがですか。こういうライブ番組に戻ってきてゲストとして出られるという感じは」
井上「格別の緊張がありますね、やっぱりね。みなさん、そうだったんですね、昔」
千「今回は井上堯之AG。ソロとしては久しぶりのプロジェクトということでCDもリリースされて。今日はそのAG、何人編成で?」
井上「三人なんですよ、たった(笑)」
(井上堯之AGライブ)
『愚か者よ』『流浪の民』-CM-
千「セッションタイム!(千里さんのピアノ演奏)CMの間にちょっと考えちゃった(笑)。大江千里、ピアノの前に落ちつきました」(セッション)
井上堯之AG『WIND ROAD』(井上堯之AGライブ)
(井上堯之さん、長谷川雅大さんのアコースティックギター、白浜櫻子さんのバイオリンと千里さんのピアノという編成)千「セッションとかは宇崎さんとやられたりとか、いろんな…」
井上「ユニットもいろいろやってますんで、あちら行ったり、こちら行ったり(笑)」
千「いろんなジャンルの人と」
井上「そうですね。ジャズとか和太鼓とか、そういうユニットであったりとか」
千「公開生放送、井上さんでも緊張されたりするんですか」
井上「そりゃやっぱり生ですからね。そりゃやっぱり緊張します(笑)」
千「『ライヴコンサート』月一ここでやられてたみたいですけど、当時と変わってますか」
井上「さっき長谷川とも話してたんですけど、時間が昔に戻る感覚ってありますでしょ。懐かしいってこともあるし、逆にリアルタイムの感じもしちゃうと。今日のスタッフのみなさんも顔なじみのかたが大勢いらっしゃるんで嬉しいです」
千「リハーサルのときから『よぉ〜』とか挨拶に来てて」
井上「うわぁ〜、生きてたの?って(笑)」
千「生きてたのって(笑)。井上さんのデビューというのはザ・スパイダース、62年ですよね。平べったい言葉で言うと芸歴40年」
井上「以上ですね(笑)」
千「そのあと、あの伝説のPYG。あのジュリー、あのショーケン。あの当時、なんであの三人が、今でいえば例えばラルクの誰々とGLAYの誰々…何かいいとこどり…って何を言うんですか、僕(笑)。でもわかりやすく言うと、それくらいグッとトリオで集まっちゃったっていう。あれは、できたいきさつっていうのは?」
井上「あれはスパイダースの解散が決まってまして、あるとき沢田とショーケンでそういうチームを作らないかって、どっかで、渡辺プロで始まったんだと思うんです。で、僕のところにマネージャーが会いに来てくれて、その瞬間に何しに来たのかピンとくるような感覚がありました。何も知らなかったですよ。人間って面白いですよね」
千「何か起こりそうなときってわかりますよね。今回久しぶりに…12年振りですか」
井上「アルバムですか?ソロですか?ソロは21年振りです。その間ずっとユニットなんですよ。映画音楽録音したり、バンドのメンバーの一員として録音したり、ゲストプレイとか。例えばSING LIKE TALKINGのアルバムに入ったりとか中島みゆきちゃんのシングルでギター弾いたりとか。自分のソロってのは21年間ほったらかしだったんです」
千「今回アコースティックギター二本じゃないですか。で、バイオリン。井上堯之メロディーのあの悲しみというか、曲を聴いているといつも悲しみの沼にはまっていくような」
井上「そうですね。深いですよね」
千「すいません、ちょっとたとえ話が(笑)。詩人でありながら下手っぴなんですけど(笑)。悲しみの沼にグーッと入っていく感じ、あれはやっぱりバイオリンが必要だったんですか」
井上「そうですね、必要ですね。そもそもは宇崎さんの店でライブやってくれって。ま、お祝いになるならと最初長谷川と二人で始めたんですよ。喜んでくださるお客さんもいらして、年二、三回やるようになりました。そしてあるとき僕が勝手にスケジュールを決めて長谷川にいついつなって言ったら、彼が結構売れててダメだったんですよ。困ったなぁ、一人で、ってときに櫻子さんを思い出したんですよ。それで電話してやってもらって。それが僕にとっては幸せな感覚というか、つまり昔は自分がこういう音楽をやりたいって思えば、そういう編成でやるわけですけど、三人しかいない、どうあがこうと、どんな曲を書こうと、こんなけしかいないという制約の中で可能性を探し出す喜びっていうか、それはすごいあるんです」
千「すごいシンプルだけど、めちゃくちゃ緊張感ありますよね」
『循環』『花・太陽・雨』『この悲しみよ』--CM--
千「お疲れさまでした!今日はなんか拍手がいい拍手、って毎回いいんですけど、なんか拍手も音楽っていうか、そういう感じがね」
井上「恐れいります。ありがとうございます。すごく嬉しいです」
千「いかがでした?久しぶりのTFMホールでの演奏」
井上「やっぱり生は緊張しますね。悟りました。どんだけリラックスしようとしてもなかなか大変だなぁと思いました。ものすごくエネルギーがいると今日新たに覚悟しました」
千「エネルギー、そうですね、いりますね。井上堯之AGのCDが出たんですよね。その名も『井上堯之AG』」
井上「アコースティックギターの略です」
千「ということは、この編成の?」
井上「そうですね。これはこれでとっても大事にしたいなと思ってるんですよ」
千「今日演奏を聴かせていただいてて、メロディメーカーでいろんな音楽を作ってらして、そしてすごくシンプルに人間の気持ちに訴えかけるようなところに向かってらっしゃるのかなって、すごくシンプルに、と思ったんですけど」
井上「ありがとうございます。僕なんか生きてて、どちらかというと悲しがるタイプなんですね。人生生きるのが大変だと。例えば生活のことであるとか社会的なことであれ、なかなか生きるのは大変なことだってことがまず一点。そして、もう一つはパレスチナとユダヤのように、ああいう諍いを、平和を望みながら自分の中にその両面があるじゃないですか、人間って。もしパレスチナに僕が産まれていたら、やっぱり自爆テロにいく可能性はあるわけですよね。逆にイスラエルの以前のラビン首相が平和条約を結べば暗殺されてしまうような、こういう悲しみの二つの音楽をどうしても作りたいなって。それとやっぱり人間がこの先いつになれば平和になるんだろうって、気が遠くなるじゃない、そういう悲しみも含めて、そういうものができればいいかなと思ってます」
千「僕、個人的な感想なんですけど、さっき悲しみのメロディって、そのメロディ、いつもどういうふうに書かれるのかなと思ってたんだけど、悲しみのメロディが包み込むっていうか、すごく力のある感じがするんですよね。僕もこのアルバム、聞きこみたいと思います」エンディングテーマは『the shadow of wings』
「デビューして、18年前に井上さんにお会いしたんですけど、ミュージシャン同士が先輩とか後輩とか関係なしでタメ口で音楽の話ができるんだって教わったのが井上さんからだったので、ミュージシャンシップっていう想いを今の曲に込めました」