「こんばんは、大江千里です。TFMホールへみなさんようこそおいでくださいました。そしてラジオを聴いてくださってるみなさんもこんばんは」(金子飛鳥ライブ)
(金子飛鳥登場)
金子「みなさん、こんばんは。金子飛鳥です。お久しぶりです」
千「久しぶりですね。五年ぶりぐらいですか。スタジオで会って以来。なんかハワイのほうに…」
金子「はい、五年間行ったり来たりの生活だったんですけどね」
千「また日本に居を移して。今日はキラキラしたベスト。黒がベースでホント目に眩しいですけど。飛鳥さんは四歳からバイオリンとピアノを学んで、高校時分からセッションとか始められてて」
金子「はい、仕事始めてました」
千「そのあとは84年に飛鳥ストリングスを結成。この頃レコーディングに参加され始めたりして、僕なんかも『未成年』というアルバムで初めてお会いしたんですけど」
金子「ねぇ(笑)」
千「アーティストとのコラボレーションだけでなくてソロとしてももちろん活躍されていますけど。この夏バイオリニスト金子飛鳥初のソロアルバム『mother』リリースされました」
金子「はい。(会場の拍手に)ありがとうございます」
千「それまでも飛鳥ストリングスとして出されてたりしてましたけども」
金子「二枚飛鳥ストリングスで出したり、それから自分の名前でもアジアンのものをプロデュースするようなアルバムを出してました」
千「今回あえてファーストアルバム『mother』っていう。そこらへんの気持ちもあとで聞かせてください」
『Hokulani『mother』-CM-
千「セッションタイム!(千里さんのピアノ演奏)中央に飛鳥さんがバイオリンとともに、そしてグランドピアノに私は今いますけど。今日演奏するのは1985年、今から17年前に僕のアルバム『未成年』の中で飛鳥さんに演奏していただいた『真冬のランドリエ』という曲を二人でお送りしたいと思います」(セッション)
大江千里『真冬のランドリエ』(演奏は千里さんんピアノと金子飛鳥さんのバイオリンのみ。ボーカルはもちろん千里さん)(金子飛鳥ライブ)千「1985年、清水信之さんというアレンジャーのかたに飛鳥グループを紹介していただいて」
金子「あ〜そうですね。懐かしい」
千「初めてお会いしたときに、こんなにスタジオの中が明るく楽しいもんかと思いました」
金子「それはこちらもわりとそうだったんですけど(笑)」
千「あ、しゃべくりまくってました?僕(笑)」
金子「いや明るい人だな〜、面白い人だな〜。でも何かすごい気遣いがあるっていうか、センシティブな印象があったんですけど」
千「あ〜そうすか。それから17年です。高校時代から飛鳥さんはセッションとかちらほら…」
金子「ツアーも回ってましたね」
千「それから芸術大学に入られるわけですけど。芸大に入る前っていうのはどんなふうにバイオリンを練習してたんですか」
金子「ちっちゃい頃から川で練習したり、お墓で弾いたり、結構面白いことやってましたね」
千「川べりとか?」
金子「川辺に行って好きなこと弾いてました。別にメソッドというわけではなくて」
千「教則本とか…」
金子「一応ありましたね。人がやったものは一応全部」
千「あの、ジェフ・ベックの教則本…」
金子「あ〜あれね?初めてやったスタジオの仕事っていうのがジェフ・ベックの曲をシンセで弾いてみようという教則本で、なぜかそれをバイオリンで完全コピー版を」
千「ヤン・ハマーがやってる部分ですね」
金子「そういうのを全部弾かされたんですよ。それが生まれて初めてのスタジオの仕事で、ちょっとビックリしました(笑)」
千「かたや、そっちの世界が広がったような、面白いなっていう感じもあったんですよね。芸大って聞くと、僕が勝手に想像してるのはやはりクラシックのかたが多くて。その中でどんな存在だったんですか、飛鳥さんは」
金子「あの当時ではもしかしてちょっと浮いてたかもしれません。あの〜そうですね(笑)」
千「(笑)。さっきも本番始める前によろしく、よろしくってそこで待ってたんですけど、Depotの音楽が始まった途端に二人ですごいノリで盛り上がってしまいましたけど」
金子「最近はね、みんなジャンルにこだわらずやる人が増えたのでね」
千「バイオリンの一番、ウワッ、ここが面白い、これが魅力だなって、弾いてるご本人としてはどういうときに感じるのかな」
金子「自分の思ってる雰囲気がそのままグーッと伝わっていくんですね。押せば押すほど入っていくっていうような感じがするんですけど。で、バイオリンって間の音がピアノと違ってあるでしょ?いくらでも音程を、ドよりちょっと高いドとかいくらでもできるんですよね。それとかノイズをいっぱい入れ込んでいけるし。特に民族音楽の人たちと一緒にやるようになってから自分なりのコブシがね、ついちゃったんですね、自然に」
千「ピアノでこのコブシやろうと思ってもね。たくさんコラボレーションをやられてきてると思いますけど、特にこれは忘れられないなっていうのはありますか」
金子「ポップス系の人ですか」
千「いや、オールジャンル」
金子「そうするといろいろいて。小曽根さんのトリオの人とやったときは音っていうのはここまで美しく考えて出すんだって感じられたし、山下洋輔さんとやったときはどこまでも行ってしまえ〜って状態で、このあとそういった曲もやるんですけど」
千「あ、ホントに?楽しみですね。普段何気なく生活の中でポロンと弾くときに出てくる最初のフレーズはクラシックだったりするんですかね」
金子「う〜ん」
千「練習はクラシックですか」
金子「いや、私の場合はどうでしょう。普段あまり家では弾かないんですけど。家では作曲するほうにいってしまうっていうかね」
千「練習するときは墓場に行って(笑)?」
金子「(笑)。最近は恐いということ知ったので墓場には行かないようになりました」
千「うちの親父もバイオリン弾くんですけど、小さい頃からのこぎりのような音で(笑)慣らされてきてるから今日はホントに夢のような感じですけど。チェロとかビオラとかコントラバスとか、ああいうのは弾けちゃったりとか?」
金子「ビオラは私大好きで。実はバイオリンより音域的に低くて好きなんですね。ただおっきいので、ちょっとアドリブ弾くには大変だなって。チェロやコントラバスはだからといって弾けるわけではありません。練習したことありますけど難しいです」
千「曲を演奏されるときにすごいいい表情で演奏されてんですけど何を考えて、というか…」
金子「なんていうか、来た来た、とか、そんな感じですね(笑)」
千「あ、ホントに?来た来た来た〜って(笑)?」
『Angie』『Dinonix』『I wish you peace』
千「まずはお疲れさまでした。来た来た来た〜ってありましたね(笑)。飛鳥さんはマザーになってハワイで五年ぐらい…」
金子「そうですね。ちょうど行ったときに出産したので」
千「僕がちょうどスタジオでコラボやったときっていうのはたまたま日本に戻ってきてたんですよね。ハワイでの出産、育児、その間は音楽から離れて?」
金子「最初の二年はかなり離れた感じになって。大きな仕事をするだけに帰ってきて。自分がそれでも全然いやじゃない、音楽がなくても生きていけるんだなってちょっと不思議に思った二年だったんですね。そう言う意味では高校のときから仕事をしてきて、一回離れたことがすごく自分で良かったんですね。それでそのあと二年は無性に弾きたくなってきて。やっぱり大自然のああいうエネルギーっていうのを見てたときに、このエッセンスをメロディとかリズムに変えて人に伝えるのが音楽家としての役割かなって自然に思えたんですね。それまではなくても生きていけるんだ〜って」
千「ハワイは本当に天候も気持ち良くて」
金子「行くまであんなにいいと思ってなかったんです。オアフ島のワイキキの反対側の田舎のところに住んでたので。アメリカ一きれいなビーチが隣町にあって。借りてたコドミニアムから山と海が見えて」
千「いいっすね〜。毎日同じように朝日があがって夕日になるわけだけど、一日たりとて同じものはないっていう」
金子「ないですね〜。虹はほとんど毎日見えたかな。やっぱり気持ちが変わっちゃうんですよね。夫婦喧嘩しても海に入ればなおっちゃうし」
千「ビーチでバイオリンを出してきて一人で弾いたり、そういうことはなかったんですか」
金子「ビーチでは弾かなかったんですけど雨垂れの音と一緒に歌ったり。どっちかっていうとウクレレ構えてバイオリンの弓で弾いてました(笑)」
千「(笑)。気分的にはね。無性に音楽やろう、戻ろうって思ったのは?」
金子「いろんな価値観を自分の中に感じれるようになって、音楽を自分がやる意味があるって再確認できたんですよね」
千「やる意味がある?」
金子「やってもいいんだなって感じですかね」
千「自分が自分にしかできない音楽っていうのを」
金子「そうですね。私は今自分の鼻歌をそのままバイオリンにしてメロディにしてると思ってるんですけど、それでいいんだなって思ったんですね」
千「さっき演奏してて歌声がそのままその旋律がバイオリンになったような瞬間ありましたものね」
エンディングテーマは『Dear Asuka』