「こんばんは、大江千里です。みなさん、ようこそ。どうも。ラジオをお聴きのみなさん、一週間のご無沙汰でした。12月に入りました!さぁ今週も東京FMホールからすばらしいライブステージをお届けしますけど、その前にグッドニュースです。本日からこの番組、海外でも放送が決定いたしました!すごいでしょ?ねぇ、ビックリです。なんと決定したのはお隣の中国です」(ムッシュかまやつライブ)
(ムッシュかまやつ登場)
千「すごく嬉しいです。黒のジャケットに、スーツ姿ですけど、こういうのは自分でデザインされるんですか、もしかして」
ムッシュ「いや、街で売ってるものを(笑)」
千「そうですか(笑)。ムッシュは学生時代からジャズ、そしてカントリー&ウェスタンのバンドを始め、1958年からプロとして活動をスタートされて、スパイダース、70年代からソロ。今年でデビュー45周年!かっこいい〜。45年て一口で表すとどんな…?」
ムッシュ「すごい長いようだったんですけど短かったですね」
千「今日は何でも、途中で水が欲しいとか呼んでください。袖でいますんで」
ムッシュ「とんでもない(笑)」
千「つい先日セルフカバーアルバム『Classics』をリリースされました。夏にもアルバムが出て九月には自伝の本が出て、リリースがずっと重なってますけど、大忙しじゃないですか」
ムッシュ「忙しくしてないと、くたばっちゃうんで(笑)。自分にむちを打ってるというところが(笑)、あるかもしれません」
千「今日はどんな感じのライブ…?」
ムッシュ「いやまだあんまり決めてなくて。みなさんのノリで曲を次々と変えていこうかなって思ってるんですけど」
千「生放送なんで細かい時間出しとか、いつも曲順をどうするっていうのやるんですけど、今日はいっさい曲が決まってないです、この台本に(笑)。真っ白ですよね」
ムッシュ「すいません(笑)」
千「すごいドキドキしてますけど楽しみです」
『あの時君は若かった』『ノー・ノー・ボーイ』-CM-
千「セッションタイム!(千里さんのピアノ演奏)ステージの中央にムッシュがギターを持って座って、僕はピアノの前に陣取りました。今日はちょっと長く、いつもは一曲なんですけど、しばらくご一緒していいでしょうか」(セッション)
ムッシュ「是非よろしくお願いします。でも緊張しますよ。コードがヤバいな〜」
千「僕もちょっと今から復習を(笑)」
荒井由実『中央フリーウェイ』(演奏はムッシュのギターと千里さんのピアノのみ。ボーカルは交互に)(セッション)
千「いや〜緊張した〜。いや〜幸せだ。これ、今ラジオで録音してる人、僕に送ってください(笑)。あ、そか。ブロードバンドで見ればいいんだ、あとで(笑)」
ムッシュ「消してくださ〜い(笑)」
千「今日リハーサルのときもずっとこういう感じで。この空気の中に入れて、すごい幸せですけど、もう一曲あるんですよね」
かまやつひろし『ゴロワーズを吸ったことがあるかい』(これもボーカルは交互に。ギターもピアノもかなり渋い!)(ムッシュかまやつライブ)
千「ムッシュは荒井由実さんのデビュー曲『返事はいらない』をプロデュースされてますもんね」
ムッシュ「プロデュースっていうか(笑)。全然売れなかったから、あんまり言いたくないんだ(笑)」
千「(笑)。今一回きりの。これ、このまま録っといて明日…」
ムッシュ「発売します?」
千「発売しましょうよ、三日間だけ発売とか。『ゴロワーズを吸ったことがあるかい』って『我が良き友よ』のカップリングだったという」
ムッシュ「あの当時はドーナツ盤でB面が『ゴロワーズを吸ったことがあるかい』だったんです。1975年のことですけど」
千「僕の記憶によると『シンシア』とか拓郎さんと歌われたりとか」
ムッシュ「そのあとです。『シンシア』が1973年だったんで」
千「当時は拓郎さんの『結婚しようよ』のあとフォークブームみたいなのがあって『我が良き友よ』をムッシュが歌われたときって、あれ?全然違うイメージだなって」
ムッシュ「僕自身もね、結構若干の戸惑いはあったんですよ。その頃ってロッド・スチュアートが好きだったりローリング・ストーンズが好きで。自分はそういうつもりでやってましたから、ステージで。『我が良き友よ』って旧制高校の時代のお話なんですよね。でも、こういう曲を僕に歌わせた拓郎って、ある意味で名プロデュースだったのかなって、今思います」
千「そのときのB面ですよね、『ゴロワーズを吸ったことがあるかい』」
ムッシュ「僕はホントはこういうのが好きなんですってことをどっかに書いときたかったんです(笑)」
千「そのA面で違う面を出して『ゴロワーズ』でこっちは好きにやろうみたいな」
ムッシュ「今考えてみると『我が良き友よ』があったから、まだ今やってられるってのもありますし。面白いもんですね」
千「いろんなタイプの音楽、あとミュージシャンもそうですけど、交遊というか人脈というか、すごくあると思うんですけど。夏にリリースした、元ピチカートファイヴの小西康陽さんのプロデュースのアルバム『我が名はムッシュ』。これ、いいタイトルですよね」
ムッシュ「自分じゃとっても言えませんからね。小西さんが勝手につけたんですから」
千「(笑)。なんか、いじられるじゃないけど、ちょっとそういう…」
ムッシュ「もう完全にまな板の上の鯉になってしまって。近来そうですね。今出てるアルバムも佐藤準ていうアレンジャーのかたに全部やっていただいたりなんかして」
千「佐藤準さんの場合は…。ムッシュはギターじゃないですか」
ムッシュ「一曲しか弾いてないんですよ。今井美樹さんとやった『20才の頃』だけなんですよ。あとは全部名人ばっかし(笑)」
千「でもなんかキーボードの佐藤さんと、ギターでたぶん曲を書かれるんだと思うんですけど、ムッシュと組むって…」
ムッシュ「結構カバーをやるって難しくて。オリジナルが一番いいじゃないですか、やっぱり。どっかうまい具合にアイディアないかなって二人で考えてて、映画のサウンドトラックみたいになって音を聴いただけで絵を想像できるような音楽を作れたらいいなって作ったアルバムなんです」千「45年間、ずっと音楽をやってきてるムッシュにとっての音楽っていうのはどんな存在なんですか」
ムッシュ「よく聞かれるんですけど、結局プロフェッショナルとかになる時期にならなくて。10代の頃?自然と気が付いたらお客さんの前で歌ってたって感じで、未だにそれが続いてる感じだから。それをもし分かりやすくまとめて言うとすれば偉大なるアマチュアリズムっていうのかな。アマチュアでいると、いろんなものに好奇心、ヒップホップだってパンクだってガレージのロックだって、何でも自分の中に聴き入れる、聴くっていう姿勢ができてるから」
千「柔軟な耳で…」
ムッシュ「これがプロフェッショナルになっちゃうと結構、こう、なんだろ」
千「ジャンル分けしたり」
ムッシュ「ジャンル分けしたりして自分で拒んだりするじゃないですか。節操がないって言われるんだけど好きなものは好きだから何でもやっちゃうんですよ(笑)」
千「こう、食事のようっていうとちょっとおかしいかもしれないけど」
ムッシュ「おいしけりゃいいっていうね」
千「うん。おいしけりゃいい」
ムッシュ「おいしいもんだったらラーメンでも何でもね」
千「牛丼も」
ムッシュ「フランス料理も何でもおいしけりゃいいって感じですね」
千「一回一回が食事も勝負っていうか、体の中に入れるもんだから」
ムッシュ「夢中で食べてるって感じで」
千「今日は夕食は何食べられたんですか」
ムッシュ「ツナサンドイッチとサラダとね(笑)。赤ワイン一本。さっきリハーサルのときに自分自身で。ユーミンのコードって難しいじゃないですか」
千「この『中央フリーウェイ』は難しいですね」
ムッシュ「そんなわけで緊張してたんで、ちょっと赤ワインをいっぱいぶっ込んどいたほうがいいかなと思って(笑)」
千「ぶっ込みましたね(笑)。音楽も食事と同じところで偏りなく、いろんなものをバランス良くとったり、いろんなものに好奇心持って…」
ムッシュ「興味あるものって世の中にいっぱいあるもんですから、ひとつでも見逃したくないって気持ちはあるんだな(笑)」
千「それあります。損した気分に」
ムッシュ「ですよね。だから大江さんの住んでらっしゃる昔の。あれ、大正時代ぐらい?」
千「えっと、そこまでは古くないんですけど(笑)。一応それふうに造っている昭和の平屋に住んでるんです」
ムッシュ「僕ももう少し若かったら、ああいうとこに住んでみたかった。興味津々ですよ」
千「あ、そうですか。是非この冬寒いと思いますけど寝袋持って泊まりにいらしてください(笑)」
ムッシュ「(笑)。寒いでしょうね」
千「でもすごいですよね。いろんなミュージシャンとの交流っていうか」
ムッシュ「音楽やってる人って多種多様で面白いんですよね。もちろん、その人の音楽が好きで入っていくんだけど、その音楽の発信しているその人自身に興味があって、いろいろ会話するのが楽しみで。一緒にセッションするって一番知り合えるじゃないですか。今日も大江さんと初めてですもんね。なんかすごく分かりましたよ。大江さん、ピアノ小僧でしょう(笑)?」
千「(笑)。もうね、今日は幸せでしたね。ありがとうございます」
『どうにかなるさ』『シンシア』『我が良き友よ』『やつらの足音のバラード』『YA YA』
千「先日セルフカバーアルバムが出ました。タイトルは『Classicis』!名曲ぞろいの13曲ですけど、でき上がってみてムッシュ自身はいかがでした」
ムッシュ「結構満足してます。ですから聴いてください(笑)」
千「ホントに弦で始まるゆったりとした時間の流れがあって、いつの間にか口ずさんでいるという」
ムッシュ「ありがとうございます」
千「ムッシュのメロディって明るくて元気が出るんですけど、メジャーコードに落ち着く前に気持ち悲しい(笑)フレーズが入るっていうか」
ムッシュ「(笑)。自分的にはね、っていうのはマイナーがダメなんですよ、僕。自分の体の中にないみたいで。嫌いとか好きじゃなくてマイナーの曲が作れないんですよ。教えてくださいよ、作り方」
千「(笑)。いやいやいや。でも『バン・バン・バン』とかああいう曲の中にちらっと見えるっていうか。あの曲なんかはどうやったら作れるのかなって思うんですけど。何かが降りてくるような感じってあるんですか」
ムッシュ「そうですね。スパイダース時代はとってもいい神様が付いてましたね、僕には。最近、神様、全然来ないんですよ(笑)」
千「(笑)。曲を書いてるときって、この曲が果たしてコンプリートできんのかな、ちゃんと人が覚えてくれるかな、受け入れられるかな、とかいろんなこと考えちゃうときって僕はあるんですけど。『ゴロワーズ』以上にいい曲できるかな、この先、って思うことってありますか」
ムッシュ「若い頃は、これ売れるといいなとか、そういうことで書いてたんですけど、そういうことにあまり才能がないってことに気が付いたんで、これは自分が好き勝手に自分が気持ちがいいように作ったほうがいいんじゃないかなと。で、自分が気持ち良く作ったものに対して気持ちいいって言ってくれる人も絶対若干いると思ってね(笑)。ずっとそういう姿勢で音楽やってます」
千「未だINGというか発展途上というか、まだ何か探してらっしゃんのかなって、そばで僕もセッションやらせてもらって感じたんですけど。行き先の目的意識みたいなのって、いつもあるんですか」
ムッシュ「(笑)。ないみたい。ないっていうか掘れば掘るほど面白いもんが出てくるんで、底なしの宝探しみたいな感じで。音楽って面白いでしょ?」
千「面白いですよね。何かがむしゃらですよね」
ムッシュ「だから結構気が付いたら集中しちゃってたってことが多いです」
千「いつ位まで続けられるかな、このテンションが持つかなって思ったりすることないですか」
ムッシュ「多分死んだらダメでしょ(笑)。死ぬまででしょ」
千「(笑)。死ぬまで、裏を返せば、音楽やってるよと。音楽好きなんですよね。今度の日曜12月8日、横浜クイーンズスクエアでイベントがあります。これはどんな感じになりそうですか」
ムッシュ「全然分かんないんですけど、聞いたら寒いらしいんですよ(笑)」
千「(笑)。そうですね」
ムッシュ「だからやだな〜って思ってるんですけど」
千「厚着で」
ムッシュ「厚着…厚木飛行場…。何言ってんのかよく分かんない(笑)」
千「(笑)。僕的にはすごい好きなんですけど番組的には締めさせていただきます(笑)」
エンディングテーマは『ムッシュモード2002』