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第1話 弁護士の仕事(平成17年12月29日)


 テレビや映画では弁護士といえば,かっこいい仕事として描かれていますが,よくよく考えてみれば社会の病理現象を対象にしているに過ぎないのです(それはそれとして重要な仕事とは思いますが・・・)。社会にトラブルや犯罪が発生しなければ裁判所など必要ないのであり,社会から逸脱した人が存在するから,裁判あるいはそれに関与する弁護士の仕事が存在するにすぎません。例えてみれば,病気が存在するから病院,医者が必要であるというのとよく似ていると思います。

 しかし,最近では病気になってからの手遅れを防ぐ,より軽症で発見するという予防医学が発達しており,それなりの年齢に達した人は1年に一回は人間ドックに入って検診をしていように思えます。
それと同様に考えれば,法律の世界でももっと予防法学に力を入れる必要があるのではないでしょうか。トラブルが発生しないように予め相談する。トラブルになりそうなときに,できるだけ早急にその対応を考える。今後転ばぬ先の杖という考え方をもっと大事にする必要があるように思えます。
 弁護士の仕事としても,今後弁護士人数の増大が見込まれるとすれば,より市民に身近な弁護士となり,紛争解決のみならず紛争予防のために十分な対応をすること,それを十分にアピールすることが重要となるような気がしています。


第2話 弁護士の仕事2(平成18年1月11日  民事事件について
 


 弁護士の仕事として大きく民事事件と刑事事件があります。
それぞれ,事件の意味や取り組み方が異なりますので,私なりに考えていることを述べてみたいと思います。
 
 まず,今日は民事事件について述べてみます。
 民事事件は一般的に個人と個人との関係であり,個人と国家との関係である刑事事件とはその点でまず異なります。民事事件において弁護士は自分の事務所に来る依頼者の話しを聞くことから事件が始まりますが,一方当事者の話のみを聞くことにより事件を組み立てなければならないことから,できるだけ,交差光線をあてながら,依頼者の話を鵜呑みにせずに打合せを行います。この打合せに際し,依頼者に突っ込みすぎて不信感を与えることもありますが,この点をおろそかにすると,最終的に裁判で恥をかくことにもなりかねませんので極めて重要な作業と考えています。弁護士の中には依頼者の話を信じ込みすぎる傾向を持つタイプの弁護士もいます。しかし,私にはそのような方法はとれません。

 個人と個人の争いである民事事件では,お互いに信義にしたがい誠実に対応するべきであると考えていますが,この点,訴訟の現場では本当に嘘が多いのに驚いています。依頼者の話を下に,相手方の反対尋問事項を組み立てると,ほとんどの場合,全く違う流れになります。これは依頼者か相手方のどちらかが嘘をついていると言うことですが,本当にそのような場面が多く見られます。依頼者との関係から当然相手方が嘘をついていると考えますが,嘘をつかれることを前提に反対尋問事項を考えるということが重要な仕事になります。相手方は嘘をつくということについて,最近は漸く慣れてきましたが,当初は上手くできないことが多かったと記憶しています。

 民事事件の解決において,何が大事かというと,やはり和解が最も大切なように思えます。私は判決をもらうよりも和解のために努力することが弁護士の仕事として重要であると考えていますが,この点については,また次の機会に述べてみたいと思います。



第3話 弁護士の仕事3(平成18年1月13日) 和解の重要性


 前回の話しで民事事件において,和解が重要だと述べましたが,依頼者の利益の面,社会正義の面から見ても和解は重要であると考えています。

 まず,依頼者の利益という側面ですが,和解ができれば一般的に早期解決が可能です。裁判は3審制ですから,判決に不服があれば,最高裁判所まで争うことになります。例えば,一審段階で和解ができれば4か月で解決した事件が和解ができないために,最高裁判所まで争いになると少なくとも3年以上の年月が必要となります。紛争の長期化は,そのための経費も必要となるばかりか,その間,紛争で煩わされるという精神的苦痛も伴います。意地で行う裁判は別ですが,そうでなければ早期和解が当事者の利益に資することが多いように思えます。

 また,判決を得た場合には,一般的に判決の結果に負けた当事者は納得していないことが多く,その判決に基づく結果を実現するためには一般的には強制執行という手段を執らなければなりません。
 これに対し,和解であれば,相手方の納得の上,合意してることから合意内容について任意に履行してもらえる可能性が強く,利益の実現が容易というメリットもあります。

 次に,社会正義の面からということですが,反対の意見もあるとは思いますが,民事裁判において実質的に見た場合,100対0という紛争は殆どなないように思えます。多少なりともお互いに非があることが多いと思われます。これが判決であれば,仮に51対49の割合の事件であっても,100対0ということになる場合も多く見られます。私も,かつては51対49でも勝ちは勝ちであるから100対0の結果を求めていたことがあります。しかし,それが本当にいいのかなという疑問を最近では強く持っています。51対49の事件はその通りの結果をもたらすことが社会正義に資するのではないかと考えています。
 もっとも,これは,自分の依頼者が51の時はいいのですが,逆に49の時には,相手方の弁護士が違う考え方を持っている場合には,裁判官の力に頼らざるを得なくなります。
 その意味で裁判ではできるだけ実態に即した和解ができる裁判官に当たりたいと考えています。


第4話 弁護士の仕事4(平成18年1月24日) 刑事事件について


 以前にも述べましたが,刑事事件というのは一般的に個人と国家との関係で問題になるものです。
 もっと,簡単に言えば,国家が構成員である国民の生命・身体・財産等を保護し,社会秩序を維持するために犯罪という一定のルールを作成し,それに違反した国民を処罰するのが刑事事件です。
 その場合,そのルールに当たるものが簡単に言えば刑法ということになり,処罰するための手続きが刑事訴訟手続きということになります。

 ここで,弁護士がどのように刑事事件に関与するのかということですが,まず,第1に国が定めた犯罪というルールに違反していない国民が処罰されることがないように,その人の権利を守るということが重要な弁護士に仕事になります。

 もっとも,ほとんどの刑事事件が検察官が起訴した段階でルールの違反者であることが明白な事件であり,実際に無罪を争うという事案はほとんどありません。その意味では無罪を争う弁護士の仕事はあまり数は多くありません。しかし,そうはいっても,弁護士の仕事がないわけではありません。この場合には,情状についての仕事が重要になります。

 犯罪者であっても,実刑判決で刑務所に入るか,執行猶予判決で刑務所に入らずにすむか,そのためにその犯罪者の情状弁護が重要になるのです。この点については,後日述べますが,情状弁護が重要である以上,犯罪者であることが明らかであっても,弁護士の仕事が必要になるのです。



第5話 弁護士の仕事5(平成18年2月6日) 情状弁護について


 どのような犯罪でも情状弁護が必要になりますが,特に刑務所に入るかどうか,きわどい犯罪については情状弁護が重要になります。逆に言えば,情状弁護のあり方如何によって,刑務所に入らずに済むとすれば,そのようなきわどい犯罪については,どのような弁護士に依頼するかということが大切になります。

 では,どのような弁護士に依頼すればよいかということですが,一言でいえば,依頼者のために親身になってくれる弁護士が好ましいといえるでしょう。

 情状弁護として何をするかですが,一般的には被害者側の事情と被告人側の事情について整備することが主たる仕事になります。具体的にいいますと,被害者と交渉し,謝罪する,示談をする,減刑嘆願書を作成してもらうことや,被告人の再就職先を確保する,家族等の受け入れ先を整えること等が情状弁護としての仕事になります。これだけには限りませんがいずれも気をつかう仕事であり,その意味でも依頼者のために親身になってくれる人が好ましいと思います。



第6話 裁判官について(平成18年4月3日)


 春になってくると,パソコンに向かうより,外でドライブやゴルフをする方が気乗りがする性格なので,とんとご無沙汰していました。最近全然更新していないねと知り合いからも言われおり,何について述べようかと考えていましたが裁判あるいは裁判官について個人的に思うことを何点か述べてみようと思います。裁判批判ではないことを予め断って起きます。

 最近大学の先輩である中川了磁先生が最高裁裁判官に就任し,母校の同窓会で講演しました。その中で,関与した判決についてコメントを述べていましたが,雷事故について述べておられたのが若干印象的であったので,その点について,簡単に私の意見を述べてみたいと思います。この事件は,サッカーの試合中に高校生の生徒が落雷により負傷して,大けがをしたという事案で,監督者の責任を認めた裁判です(詳しくは平成18年3月13日の最高裁判例を参考にしてください。)。私はゴルフをする機会が多く雷が大嫌いであることから,最高裁が判断する以前からこの事件についての下級審判決を偶々検討しており1審,2審が監督者の責任を認めていない点に疑問を持っていました。
 海外のゴルフの大会をテレビで見ているとまだ青空が出ているにもかかわらず,雷で中断のサイレンが鳴る場面に多く出くわしますが,これは雷の危険性をよく認識しているからだと思います。これに対し,日本のゴルフ場では,頭の上に稲妻が光っていてもまだ,大丈夫といってサイレンをならさないことが多いように思います。

 個人的にはこの判決がゴルフ場の関係者にも十分に認識されて,より安全なゴルフができればと思っています。

 憲法では裁判官は自らの良心にしたがって判断するとされてます。この事件では,1審,2審の裁判官は監督者の責任を否定し,最高裁判所は逆の判断をしていますが,中川先生もゴルフをよくなさるといってましたので,このあたりの経験に結論が違う原因の1つがあるのかもしれないと思っています。




第7話 裁判官について2(平成18年7月5日)


 
今回も3か月の間があいてしまいました。その間裁判官の人事異動があり,金沢地方裁判所でも民事部長をはじめかなりの人数の裁判官の移動がありました。民事部長については,アクタスという月刊誌でも取り上げられていましたが,かなり自己の信念に基づく判決をする裁判官でした。もともと裁判官は自己の良心にしたがい憲法と法律にのみ拘束される存在ですから,自己の信念に基づき判決をすることは何ら問題のないことなのでしょう。しかし,それが誤っていた場合に迷惑を被るのは裁判を受ける国民ですから,自己の信念が世間一般の常識と異なっているのであればそれを是正して欲しいと痛切に感じます。

 私もこの民事部長には3回ほど苦しめられました。苦しめられたというのは,不利な判決を受けたのが,高裁で逆転したことがあるという意味ですが,費用や時間などの労力が取られるということは裁判を受けている当事者にとってはかなりの負担です。高裁で逆転されることが多いと言うことは,自分の価値観が他と違っているということをもう少し理解して欲しいと思うところです。
 今回アクタスという月刊誌で取り上げられた事件については私は関与していませんが,この事件もおそらく高裁で逆転すると思います。

 裁判を受ける権利は国民に保証されていますが,どういう裁判官にあたるかは全く運不運です。変な裁判官にあたれば,勝つべき裁判が負けてしまいます。仮に高裁で逆転できるとしても,その費用がない場合には負けたままになってしまうということにもなりません。これはやはり問題ですので,何とかしたいものだと常日頃思っております。