化け狢を撃った話

 八坂に横田瀧蔵という猟師があった。ある真夜中ふと眼が醒めて見ると、近くの杉の大木のそばに小さな家が見える。そしてその家に燈がついていて女の人が糸をとっているのが障子にうつっている。猟師は不思議に思ったがその夜はそのまま眠った。翌朝起きて家のあったところを見たが家のかげも形も見えないので、これはきっと狸か狢のいたずらにちがいないと思い、夜のくるのを待っていた。夜の12時頃になると昨夜と同じように見え出したので、鉄砲を持って障子にうつる人の影をねらって撃つとたちまち燈は消えて真暗になった。あたったことと思いしばらく見ていると、ぱっと燈がついて先ほどと同じように見える。今度こそはと持って撃つとまた消えて、すぐに燈がついた。こうして猟師は自分の持っていた玉のほとんど全部を撃ってしまって残りはたった一発となった。これで撃てなければどうなるかと思うと恐ろしくなってきた。今度は車の眼(糸取車の心棒)をねらって撃った。すると先ほどのように燈も家も消えて真暗になったが、今度は再び燈はつかなかった。翌朝いってみると杉の大木の下に頭を撃ちぬかれた大狢が死んでおったという。


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