氏神と禁忌

 八坂村の横瀬部落では昔から鶏を飼わぬことになっているが、それには次のような話がある。
 横瀬の金熊堂に横瀬孫三郎の居館のあったとき、孫三郎はその北にある地蔵堂に居た女の許へ通ったが、鶏が鳴いたので長く居ることもできず帰ってしまった。それから鶏を飼わぬようになったという。
 また平村森の城主は代々横瀬に住居した。いつの城主かわからぬが、横瀬に若一王子をお祀りしたことがあった。森の城を攻められて落城したとき、その城主の妻女機織姫は城を逃れて木崎湖の東側を渡り農具川について三日村(みっかむら)の来見(くるみ)原まで来ると、飼っていた鶏が後を慕ってついて来たため、姫は敵に見出され捕らえられて殺された。それ以来横瀬では鶏を飼わなくなったのだともいう。

← 八坂村の伝説の目次に戻る
■ ホームページに戻る