狐の話(舟場1)

 明治29年の秋頃八坂村舟場部落の坂井某が村内へ用達に出掛け、未だ日の高い頃帰途についた。部落の中央を流れる小川のあたりまで来ると、美しい娘が来て「自分の家まで遊びに行け」としきりにすすめた。某はすすめられるままについて行くと、娘は風呂を沸かし、お焼きなどを作って非常な歓待をした。某は大満足で御馳走になって時の移を知らなかった。家人は帰りの余りに遅いのに心配して尋ねて見ると、野原の溜のある側に某はぼんやり立っていた。風呂と思ったは溜であり、お焼きと見えたは馬糞であったことがそこでわかったという。

狐の話(舟場2)

 谷口某が舟場(八坂村)の橋本屋で菓子を買い、夜の9時頃店を出て家へ帰って来た。犀川べりまで来ると、水音ばかり聞こえていくら歩いても家へつくことが出来ない。ようようのことで自分の家のあかりを見つけて帰ることが出来た。時間は大変遅くなり、買って持っていたはずの菓子もなかったという。


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