村境

 昔金熊村(今の八坂村敷部落)と大町村との村境を定める時に、金熊村庄屋は牛に乗り大町庄屋は馬に乗って、途中行き逢ったところを境とする約束であった。さていよいよ約束の日が明日となった。金熊村庄屋は牛は道がおそいからと一番鶏が鳴くのを待って支度にかかり、夜もまだ明けきらぬのに牛に乗って四辻(よつじ)という原を越して沓掛の峰を通り越し下り坂になったが、中々大町からの役人に行逢はない。今か今かと心待ちに待ちながらついに大曲という所まで下ってしまった。一方大町庄屋は金熊村庄屋は牛だし自分は馬だという油断からゆるゆる支度して馬を乗り出して少し坂に上りはじめて向こうを見ると、金熊村庄屋はうんとこちらまで来ていたので驚いたが約束であるから仕方なしに行き逢った。そしてそこを村境に決めた。


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