狼(山犬)の話1

 昔八坂村左右部落の某が大町へ行く途中、不意に山犬が出て来てその人の袖を銜(くわ)えて道傍の藪の中へ引張り込んだ。某は恐ろしくて困ったが仕方がないので山犬のするままになっていた。いよいよ食われるのかと思っていると、山犬は某の前へ座り込んで別に害を加える様子もない。変だと思っていると急に足音がしてたくさんの山犬が道を通って行った。通りぬけると前の山犬はどこかへ行ってしまった。某は危ない命を助かったという。


狼(山犬)の話2

 八坂村左右部落のじご窪というところに犬の巣というところがある。昔山犬がここに住んでいて子を育てたという。またここに住んでいる山犬が啼くと、村人はきり火で御飯を炊いて「どうかこの村に出て来ないように」といって供えたという。


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