狼(山犬)の話

 数十年前八坂村舟場の某が用事のため遅くに帰ってくると、栃沢の宮の森はずれに一匹の山犬がいた。某はこわごわその前を通ると山犬はあとからついて来た。後をも見ずに家まで来た。するとその山犬は嬉しそうに尾を振ってどこかへ行ってしまった。これは送り犬といってよい山犬だが、もし途中でころぶようなことがあると喰われてしまったそうである。
 まだそのころはたくさん山犬がいて新しい墓を掘って困ったから犬除けということをした。竹の棒3本を墓の上に三角に組立てそれに縄を下げわなのようにして置く。そして葬儀の翌日は見届けといって朝早く墓詣りをする。それは前夜山犬に掘られはしないかどうかを見届けるのであるという。この習慣は今も行われている。


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