鷹狩山の別れた話

 昔鷹狩山(たかがりやま)(大町と八坂村との界)は南北の二山ではなく一峰であった。その当時山姥がこの山に住んで居て、村人を大変可愛がり村人もまた非常にこの姥を慕っていた。ところがこの姥は女だけは大嫌いであった。ある日一人の女がこのことを知らずにお詣りに来て、帰りがけに汗ばんだ腰巻きを姥池(姥の愛用池で今形だけ残っている)で洗った。すると姥は大へんに腹を立て、すなわち池の水は血に変わり空はにわかに曇って来て大夕立になり、大音響と共に今の南北両鷹狩に別れてしまった。そして姥は黒雲に乗って上籠(あげろう)の大姥山に住家をかえた。讃岐の金比羅様は前からこの姥に恋をしていた。そしてはるばる彼の国から忍んで来たが、その時はすでにおそく姥の東天に旅立ってから3日後であった。そこで金比羅様は力なく運命と諦め、村人の同情に依って姥の住んだ跡にわびしい暮らしをしていた。


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