姥池

 切久保区(八坂村)の北鷹狩山の峰に姥池という池の跡があり、又そこには金比羅権現が祀られてあって昔は相当賑やかであったと古老はいっているが、伝説はこの池と金比羅権現とにからんでいる。
 昔この山に山姥が住んでいて村の女は決してこの山へ登らない習慣になっていた。もしこの禁を犯せばきっと大荒がしたという。ところがこのことを知らない若い女がこの習慣を破ったばかりではなく、自分の月経で汚れた腰巻をこの池で洗ってしまった。すると池の水は女の手先から次第に赤くなって、しまいには池全体が血の池となってしまった。そしてその後で大暴風雨が起こって作物はだいなしになってしまった。村人は女が山を汚した祟りだといっておそれたが、山姥はその時限りこの山を去って東の山へ居を移した。その時この池は大氾濫をして水がすっかりかれてしまった。村人はこの不思議な出来事に驚いていたが、ある日南村のっ百姓佐兵衛治爺さん(?)が上つ原で荒れた畠を掘りかえしていたところ、夕方になったので帰ろうと思ってふと右手の道を見ると、そこに白髪白髭白衣の老人が疲れた様子で立っていた。爺さんを見ると「山姥に遇おうと思ってはるばる讃岐の国から尋ねて来たものだが、山姥の住居を教えてもらいたい」ときいた。爺さんは驚いてこの間の出来事を告げると、その姿はかき消す如く消えてしまった。爺さんは喪心したようになって帰宅しこのことを村人に告げた。村人は大黒天の神おろしをして伺ってみるとそれは金比羅様だということがわかった。村人は早速この山姥の去った池の跡に社を建ててこれを祀り、春と夏とにお祭りをして村の安泰を祈った。宮の建物も大きくなり一時は近村までも聞こえたが、今は朽ち果てて誰もかえり見るものがない。山姥はその後おなじ村の上籠の岩窟に居を移したといわれている。


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