『カンマを伴う分詞句について』(野島明 著)
第一章 「カンマを伴う分詞句」をめぐる一般的形勢、及び基礎的作業

第4節 「特定」の諸相


〔注1-30〕

「ある歴史家(の書)の中で、ある君主は真実の宗教に熱心であった[un prince a été zèle pour la véritable religion]、という記述を読んでも、その歴史家がどのような宗教に身を置いていたのか分からない限り、そうした記述によってその歴史家がどんな宗教のことを言わんとしていたのかは分からないであろう。というのも、もしその歴史家が新教徒であれば、真実の宗教とは新教徒の宗教のことであろうし、もしその歴史家が自らの君主についてこのように語ったアラブ人のイスラム教徒であれば、それはイスラム教のことであろう。また、真実の宗教はローマ・カトリックの宗教のことであろうと我々が判断し得るのは、その歴史家がローマ・カトリック教徒であることが我々に分かっている限りにおいてであろう。」
La Logique de Port-Royal, p.60)

(〔注1−30〕 了)

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