『カンマを伴う分詞句について』(野島明 著)
第一章 「カンマを伴う分詞句」をめぐる一般的形勢、及び基礎的作業

第5節 「脈絡内照応性」と「カンマ」の関係


〔注1−45〕

   "She has α car. It’s blue."を"A girl has α car. It’s blue."と比べたときの前者の安定性(受け手側に生じる「個人差的な揺れ」の不在)に注目する必要がある。"She"には脈絡を参照すべしとの示唆が露出しており、そのような脈絡の内には、「受け手は、"She"が誰のことなのか見当がつかないとすれば、"Who is she?"と尋ねればいいだけのことである。」といった脈絡も含まれている。他方、"A girl has α car. It’s blue."中の"A girl"には、受け手を峻拒する話者の姿勢が見え隠れしている。

   以下、「"She"には脈絡を参照すべしとの示唆が露出しており」に関わる記述を引用する。

意味の上では[Semantically]、すべての名詞句は何らかの在り方で限定される[determined]。例えば、すべての名詞句は意味においては限定的[definite]であるか非限定的[indefinite]であるかのいずれかである。しかし、主要語[some heads]の中には、それ自身の特性によって、自己画定的[self-determining]であるものもある。例えば、固有名詞や人称代名詞は本来的に限定的であり、こうした意味において、それ自身の限定詞[determiner]を内蔵している。そしてこうした場合、名詞句は、限定を行う機能[determinative function]を持つ別の語を含んでいないのが普通である。(CGEL, 2.30)(下線は引用者)

(〔注1−45〕 了)

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