第七章 開かれた世界から
第3節 文頭・文中に位置する「カンマを伴う形容詞句・名詞句」
〔注7−31〕
ある陳述[statement]の後に説明的文[explanatory sentence]を単に置くだけである行為の理由を示すことは、英語では常にありふれたことであった。
'You had better be thankful your life is spared , young man' (Oemler, Slippy McGee, Ch. II).
このような文は形態的には[in a formal sense]独立したものであるが、それらの文を互いに結びつける論理的つながり[logical tie]がある。
(CURME, Syntax, 30)(下線は引用者)
しかし、こうした文のある部分を副詞節であると文法的に記述するには、大概の場合、その部分が従位接続詞に導かれることが必要なのである。CurmeはParataxis[並列]について相当量の記述を残している。
時に、文の各部分[members]を一つに結びつける要素が形態として存在していないことがあるが、論理的結びつき[logical connection]が十分な結び目となっているからである。しかしながら、詳細に調べてみると、そのような一見独立した諸陳述[propositions]が完全には独立しているわけではないことが明らかになろう。諸陳述の内の一つはしばしば、別の陳述に対し、主辞とか目的辞といった何らかの文法的関係に、あるいは、原因・目的・結果・譲歩・条件といった副詞的関係にある。
'Hurry up; it is getting late' (cause).
'They gave him a large sum of money ; he was to keep still, you know' (purpose).
'The crops were very poor this year; the prices of food are high' (pure result).
'I could have poisoned him (modal result) I was so mad to think I had hired such a turnip' (Mark Twain, Letter to His Daughter Clara, Sept. 29, 1891).
'Let him talk (concession), it'll do no harm.'
'Do it (condition), you'll never regret it '
このような文は、かつては現在より一般的であった古式の陳述の並べ方の一例である。様々なインドヨーロッパ諸語の起源である祖語の最初期の段階では、現在のような従位接続詞は存在していなかった。即ち、ある陳述を別の陳述に従属させることを目的とした形態的表現[formal expression]は未だ見出されていなかった。従位関係を示す形態的要素なしに主陳述の傍らに従位的陳述をこのように配置することは並列(関係)[parataxis]と呼ばれる。接続詞と関係代名詞という形態の、従位関係[subordination](今言うところの従属[hypotaxis])を特徴的に示す形態的目印[distinctive formal sign]は、後の段階の言語の特徴であり、様々な民族が元々の居場所から移動していった後の種々の言語の個々の在り様に属することがらである。
(CURME, Syntax, 19-3)(下線は引用者)
(〔注7−31〕 了)
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