ねむりについて  


知っておきたいねむりの話

    ・今、一番関心のある事は
    ・健康づくりのトップは睡眠
    ・睡眠は科学されている
    ・なぜ、横になるのか
    ・睡眠は知識の整理統合も担当する
    ・軽い掛ふとんと硬い敷ふとん
    ・ひと晩の眠りにはリズムがある
    ・眠りは二つのパターンの組み合わせ
    ・眠りの質を決めるレム睡眠
    ・夢にも二つの型がある
    ・夢ばかり見て眠れなかった
    ・高齢者の眠りと若者の眠り
    ・長時間眠れば健康的か
    ・不眠症のほとんどが不眠ノイローゼ
    ・人工の眠り
    ・頭寒足熱は人体平衡熱のための生命現象
    ・いわゆるコップ一杯の汗
    ・全身加温と水分
    ・部分加温と低温やけど
    ・短時間睡眠を考える
    ・睡眠環境


今、一番関心のある事は

有る調査機関がこのような問いかけをしました。結果は
     1.健康
     2.住まい
     3.レジャー
     4.教育
     ・
     ・
といった順序になったと報告しています。
健康に対する関心が第一位を占めているのは、一応物に関する限り有る程度までみたされたからと考えられそうです。
そして、大きく変化しているストレス社会を乗り切るためには、何といっても健康にまさるものはないと、気づいているからに他なりません。

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健康づくりのトップは睡眠

このように大切な健康を維持するためには、食事・運動・睡眠といった日常生活の見直しが大切です。中でも睡眠は、いわば一日の疲れという病の最大の治療方法である事から、その大切さについては誰もが口をそろえて主張するところです。たったひと晩の寝不足でさえも仲間から指摘される程、健康保持のためには最高の常備薬といえます。

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睡眠は科学されている

飛躍的に発達した脳性理学の眠りに関する研究によって、今まで夜といえば暗い領域でせいぜい夢の住みかくらいにしか思われていなかった眠りの世界に科学のメスが入り、思いもかけない知識が次から次へと発掘され、文字通り眠りの世界に革命が起こりつつあります。

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なぜ、横になるのか

人は、不幸にして健康を害するか疲れを感じた時は決まって体を横にして眠ろうとします。又、医者もそれをすすめます。このことは睡眠があらゆる心身のゆがみや故障を修復する上で大きな効果を持っている事が分かります。
つまり、立っているいる事が辛いからだけではなく、体を横たえる事によって心臓の負担が軽減せられ自律神経下で行われる生理的な諸活動、特に肝臓への血流量が3〜4倍に増え摂取した栄養物の分解や合成を盛んにし、体の活性化が促進します、腎臓についても同様のことがいえます。

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睡眠は知識の整理統合も担当する

又、睡眠が従来考えていたように単なる休息といった消極的なものではなく、昼間の活動とは別の心身の活動状態である事が判ってきました。
すなわち前述のようなからだの活性化は勿論、昼間詰め込まれた知識を整理統合して正しく記憶として定着させてくれたり、傷ついた感情も夢を見る事によって安定したバランスを取り戻してくれるなどの発見によって、特に受験生などの眠りには細心でなければならないといわれ出しました。

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軽い掛ふとんと硬い敷ふとん

最近、寝具に対する関心が高まってきて、理想的な寝具とはの問いかけに、軽い掛けふとんと硬い敷ふとんという返事が聞かれるようになりました。確かにこれ等は寝具に欠かす事の出来ない基本条件です。
けれども寝具はそんなにシンプルなものではなく、その上昨今のような肉体的な疲労に増して精神的な疲労が大きくなりつつある事などを考え合わせますと、より質の高い眠りが要求されるのです。

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ひと晩の眠りにはリズムがある

従って、その質の高い眠りをつくり出すためには何といっても眠りの正体を知らねばなりません。成人は一日平均約8時間ばかり眠るわけですが、ひと昔前までは寝入りばなに急に深い眠りに落ちて、後は夜明けに向けて浅い眠りに移っていくものと、比較的簡単に考えられていました。
ところが脳波を調べる方法が発見されると共に、眠りがそんな単純なものではない事がわかってきたのです。
すなわち深さに一定のリズムがあって、一時間半から二時間くらいの周期を持っていること。
そしてこのリズムが四〜五回程繰り返されて、ひと晩の眠りが成り立っているという事が判りました。

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眠りは二つのパターンの組み合わせ

しかも、この周期の中身が徐波睡眠逆説睡眠とに分かれていて徐波睡眠に四段階の深さがある事や逆説睡眠中に夢を見ることなどが次から次へと発見されました。そしてそれらのリズムやパターンが人によって、又その日のつかれ程度などによって若干の変化が見られるものの、比較的規則正しく繰り返されている事も判りました。

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眠りの質を決めるレム睡眠

逆説睡眠は一般にレム睡眠といわれていて三十分ばかり続きます。夢見る眠りである事は前述のの通りで、脳波を見る限りでは浅い眠りのように思えるのですが特に大切な睡眠なのです。
なぜならこの睡眠中での脳への血流量が三割近くも増える事などから、レム睡眠の量と個人個人の全体的な活力、即ちその人の頭脳力や運動能力などが比例するというわけです。従って何としてもこの量を増やすような眠りを工夫せねばなりません。又そうする事によってストレスが取り除かれたり、成人病の予防や老化を遅らせる近道になるものです。

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夢にも二つの型がある

夢には夢想型思考型とがあります。
前者はレム睡眠の時に、後者はノンレム睡眠の時に見ます。
レム睡眠の時に夢を見る確率は90%程だといわれていますから、ひと晩に4〜5回は夢を見ているのですが、十分も経てばすっかり忘れてしまうという事ですから、昨晩は夢も見ないくらいぐっすり眠れたなどといってすまし込んでいられるわけです。
思考型の夢は何かを深く考えている時に見る夢で、寝入りばなトロトロとまどろんだ時に見るのです。この夢は必ず見るとは限らないそうです。

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夢ばかり見て眠れなかった

夜通し夢ばかり見て”全然眠れなかった”こんな経験をお持ちの方も多いと思います。私たちはひと晩に何回か夢を見るのですが、後に続く眠りが深ければすぐ忘れてしまいますから夢を見た事さえ覚えていないのです。ところが熟睡できずに何回も何回も目がさめた時は普通忘れてしまう夢も思い出してしまいます。(五分もたてばウロ覚えといわれています)従って沢山夢を見たことになってしまって、夢ばかり見て眠れなかったと感じてしまうわけです。心配事があったり、寝具が不適当なため寒かったり暑すぎたりで眠りを妨げる原因が他になかったかと考えてみなければいけません。又、夢はストレスのはけ口ですから夢を沢山見るということは、ストレスのはけ口を求めている状態にあるかもしれません。

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高齢者の眠りと若者の眠り

ひと晩の眠りが高齢者では減るだろうと思われがちですが、その実験的な証拠はまだ無いといわれています。しかしながら高齢者の眠りは青年の眠りに比べ大変質が悪い様です。その特徴として、先ず床に入ってから眠りが深くなるまでの時間が比較的長くなかなか眠れなかったり、睡眠中の目覚めの回数が非常に多く、特に大切なレム睡眠の時間が短かったり、時々脱落して出ない事があるなど眠りが浅くなっているのが分かっています。つまり睡眠障害に陥りやすい事から睡眠環境への配慮が大切です(寝具など)。

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長時間眠れば健康的か

一般に不眠の方が眠り過ぎよりも死亡のリスクが高いと考えられがちですが、7時間しか眠っていない人よりも8時間以上眠る人の方が死亡率が高い問い結果が報告されているのは注目に値する問題だと思います。といって死亡率を睡眠の長短だけで計る事は出来ないにしても、眠りの生理学的な過程によって死亡率が高くなるメカニズムと密接に関係しているのではないかとは考えられているようです。
長時間の睡眠にもかかわらず、尚寝不足を訴える例が多くありますが、これなどは無呼吸睡眠による酸素欠乏が原因になっているようです。

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不眠症のほとんどが不眠ノイローゼ

アメリカの信用出来る調査によりますと、成人の52.1%に睡眠障害が見られ、その内不眠症だと訴えた人は実に42.5%で一番多かったと報告しています。
ところが不眠症の実体は神経症的で、いわばノイローゼだといわれています。即ち入眠困難、夜中たびたびの覚醒、早朝の目覚めなどのため、眠れない眠れないといって入眠までの時間を主観的により長く判断したり、逆に睡眠時間を実際より非常に短く、又浅く判定してしまうなど思い過ごしと実際との間に可成りのズレのある事が脳波などの記録からわかっているのです。今夜も眠れないのではないだろうかなどと不安を先取りするのではなく、むしろ開き直って眠くなるのを待つくらいにしたいものです。

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人工の眠り

「王冠に変えてもいっときの眠りがほしい」とはシェークスピアの悲劇「マクベス」の中に出てくるあまりにも有名なセリフですが、不眠と人間との戦いは今も昔も変わらないようです。紀元前300年頃、ギリシャの医者が不眠患者に睡眠薬を処方したという記録がそれを物語っています。眠り薬は、薬の持つ中枢神経抑制作用によって眠りににた状態がつくり出されるにすぎないだけでなく、もっとも大切なレム睡眠が得られないなど正常な睡眠がこわされます。それ故多用は寿命を縮める事になるのです。

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頭寒足熱は人体平衡熱のための生命現象

睡眠中の額の温度と足の温度を比べると、額の温度は時間の経過と共に徐々に下がるのに対し、足の温度は入眠後約2時間程で睡眠中の体温(2℃程下がって34℃程度)と同じくらいにまで上昇して目覚めの時まで続きます。これは自分の意志とは関係なく、自律神経作用による生命維持のための現象ですから、頭寒足熱は質の良い眠りづくりの基本原則である事が判ります。

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いわゆるコップ一杯の汗

「ひと晩にコップ一杯の汗が出る」は眠りを考える上で今や常識になりました。朝目がさめますとやる気を起こさせる交感神経の緊張によって血液はからだの中心部や骨骼筋へ集められます。従って足先などへは十分に血液がもらえません。そんな状態の中で昼間の活動や新陳代謝が営まれなければなりませんから、酸素不足によって疲労物質である乳酸をつくり出してしまうのです。乳酸はそのまま放っておきますと、肩こりや腰痛などの元凶ともなるものですから出来るだけ早く取り除かなければなりません。ところが眠るとリラックス神経といわれる副交感神経が働いて血管を広げ、特に昼間十分に酸素がもらえなかった足先などへ盛んに血液を送り込んでくれます。前述しました足温の上昇はそのためなのです。血液から十分に酸素をもらい受けますと、コリ物質がドンドン分解せられ、最後に炭酸ガスと水になり、炭酸ガスは主に肺呼吸によって、又水は汗になって老廃物と一緒に体外へ排出されるのです。これがいわゆるコップ一杯の汗なのですが、さらに大切なのは、この分解過程で酸素不足をカバーしてくれる高エネルギー物質(ATP)が細胞の中に蓄えられ続ける事で、睡眠中におこなわれる生理作用の重要さを見逃してはなりません。

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全身加温と水分

私どもの体は水に浮かんでいる細胞の集合体にたとえられます。体重の60〜70%が水ですが、加齢と共に減少します。一ヶ月半の胎児で97.5%、誕生時で74.1%くらいあった水分も、成人になると66%くらい、高齢者になると体組織の水分はさらに少なくなります。年をとると血圧が上がる原因の一つに水分量の減少に伴っておこる血液粘度の上昇が考えられるのもそのためです。人体に蓄積されているタンパク質、脂肪は、その20%を失っても死にませんが、保有している水分の10%を失うと確実に生命が断たれるといわれています。結論を急ぎますと、健康で活発に働いている臓器ほど水分が多いのです。ところが、冬の寝床は寒いからといって安易に電気毛布で全身加温される方が沢山あると思います。電気毛布の熱は乾熱といって、甘さを増すために人工甘味料を添加するのと同様無害だとは言い切れないです。醒めた意識で気持ちよくセットされた電気毛布も、眠ってしまうと筋肉活動の停止などで体温が2℃ばかり下がりますから暑いという感覚に変わってしまいます。従って夜通し中汗を出して体温を調節しなければなりませんから疲れるのです。その上過度な水分の減少から生理機能の衰えを来たし果ては神経障害からぼけ老人をつくる原因になりかねません。ふとんは上手に選びますと暖かいはずですから電気毛布を使う前にふとんを見直してください。どうしても使用する場合はふとんに入る前に暖めておいて寝る時には加熱しないようにすると良いでしょう。

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部分加温と低温やけど

入眠後、約二時間ばかりすると足温が睡眠時における体温と同じくらいにまで上昇して目覚めまで続くと前述しました。ところが冷え性の方や高齢者でそのようにうまく体温が移行しない人が沢山あります。このことはとりもなおさず自律神経作用の衰えに帰因するものと考えられますから、アンカなどによって足下への部分加温でカバーしてやりたいものです。血行を良くし疲れを翌日へ持ち越さない工夫は、質の良い眠りづくりのためにはもっとも大切なことだからです。ここで気を付けなければならないことは、こたつの温度を41〜42以下に調整しないと低温やけどを起こすことを忘れてはなりません。

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短時間睡眠を考える

世の中が忙しいので短時間睡眠法なるものをすすめる識者がふえてきました。確かに眠りは個人差があり、時間X深さでその良否が問われますから、深さが深ければ短時間でも問題なさそうに思えます。しかしながら、ノンレム睡眠の深さがに限度があることや、睡眠中における生理作用のスピードを人間の意志や訓練によって早めることは出来ませんから、単純に時間と深さの積だけで短時間睡眠をいかにも時代の先取りをした睡眠法のように考えるのは理解に苦しむところです。ひと晩やふた晩なら体の持つ予備力でカバー出来るとしましても、毎日ということになりますとやはり7時間半くらいが健康維持のための必要条件になります。

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睡眠環境

一昔前までは、人間の生活は自然のリズムに従順でした。従って睡眠環境にこだわらなくても眠りは易々と手に入ったのですが現在ではどうでしょう。昼間のはげしい夜への急進入やストレスの増大などによって睡眠が大変貴重なものになってきたことは十分理解出来るところです。そんな昨今でも、確かに眠りは向こうからやって来ます。しかしながら複雑で変化の激しい近代長寿社会を健康で生き抜くためには、ただ漠然と眠りを待つのではなく眠りについて関心を持って頂きたいと考えます。8時間の中身が問われるようになってきたのもそのためです。睡眠環境を整えるだけで、これほど確実で、しかも必ず毎日実行出来る健康法が他にあるでしょうか。
今すぐ睡眠環境を見直したいものです。

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