問われる8時間の中味とふとんの役割について

あなたの眠りは足りていますか
あたたかい眠りづくりは敷ふとんから
寝返りはなぜ
寝返りを助ける枕
敷ふとんはかたければよいのか
せんべいぶとんの落とし穴
昇温速度は安眠づくりのカギ
吸湿性よりも透湿性への発想転換
吸湿性にこだわるなら羊毛ふとん
ふとんは重たくなければ着た気がしないしあたたかくないの間違い
保温性は厚さと密度で決まる
密度にほとんど影響されない羽毛ふとん
ダウン混合率は多くなければ駄目か
重い軽いは四つにたたんだ時の総重量だけではない
睡眠補助器具
    ・ マイナスイオンのねらい
    ・ 磁石のねらい
ふとんにこだわるわけ


あなたの眠りは足りていますか

25歳を過ぎた女性のほとんどが自分の年齢をいつわっているといわれています。男性はとたずねますと、女性ほどこだわらないまでもやはり何歳かサバを読んでいる人が結構いるそうです。「若く見せたい、見られたい」は人類不変の願望である事は間違いなさそうです。あるいはダイエットを試み、またある人はシェイプアップやエアロビクスに励むのもわかるような気がします。が、もっとも大切だと考えられる眠りという根本問題をないがしろにして若さが保てるだろうかという疑問を投げかけたいのです。あなたの眠りは足りてますか?命あるもの老化はさけて通れません。それだけに日常生活の中の気配りと知恵で、少しでも若さと健康を守りたいものです。

あたたかい眠りづくりは敷ふとんから

私どもの体は、腹側と背中側とでは、耐寒性に大きな差があります。背骨から前側には内蔵があって、それを守るために腹筋や皮下脂肪があり、その上リラックス神経といわれる副交感神経が網の目のように分布しています。従って外気温の変化に対してもかなりの抵抗力を持っています。それに引き替え背中の方は背筋と皮膚だけです。その上脊椎からはたくさんの神経が出ていて、特に緊張神経といわれる交感神経も出ていますから外気の変化に対して特に敏感です。目がさめている間はチャンチャンコなどの重ね着でしのぐ事が出来ますが、睡眠中は自律神経まかせですからそのような調節は出来ません。「あたたかくて健康的ですよ」といわれて買った高価な羽毛ふとんが全然あたたかくないといった苦情をよく耳にしますが、敷ふとんに保温性のすぐれたものを併用するのでなければ、ミンクのコートを着ながらスカートもはかずに寒い寒いといって震えているようなものです。

寝返りはなぜ

手の事をギリシャ語でカイロ、そしてプラクティックが技をあらわすそうですから、カイロプラクティックは手技療術という事になりそうです。背骨のゆがみやズレなどを矯正することによって色々な病気を治す治療法であることはご存じの通りです。即ち脊椎には内臓諸器官につながる神経が通っていて、しかも背骨と背骨の間から出ていますから、ゆがみやズレで神経が圧迫されますとそれに結びついた諸器官の作用が狂わされる事になるわけです。睡眠中の寝返りは、いわば自立神経下における無意識の中でのカイロプラクティックと考えられますから、寝返りのしやすいふとんが要求されます。つまりは固めの敷ふとんと軽くて保温力のある掛ふとんという事になります。とくにノンレム睡眠からレム睡眠へ移るとき、決まって大きな体動が引き金になることも判っていますから、回数などが極端な場合をのぞき、寝返りは熟睡の証ともいえそうです。

寝返りを助ける枕

「枕がかわると眠れない」はよく聞く話です。ところがその割に枕の持つ作用について見落とされているように思えてなりません。頭寒足熱は眠りづくりの大原則でもありますから、通気性が良くて、熱伝導の大きいものが良とされます。かたすぎるものや、高すぎたり低すぎたりするものは、うっ血や充血によって脳への血流リズムを狂わせます。個人差はありますがある調査報告によりますと高さにして7〜8pが最良とされています。さらに大切なのは寝返りを助けるための補助器具の役目も持っている事です。選択を誤りますと不眠につながる事になりそうです。

敷ふとんはかたければよいのか

やわらかい敷ふとんは全身に心地よい感触を与えてくれますから、やわらかい敷ふとんを要求される人がまだまだ多いのではないでしょうか。朝めをさました時に何ともたとえようのない疲労感を覚えるのですが、殆ど人がその原因に気づこうとせずに、中にはもっと柔らかいふとんに寝たほうが良いのではなどと錯覚している人もあるようです。昼間はたくさんの筋肉の緊張によって立っていられるわけですが、体を横にして眠りますとそれらの筋肉が緊張から解放されます。従って、敷ふとんがやわらかいと体型に無理が生じ、その上寝返りもしにくくなります。かといってかたければよいと簡単に片づけることも出来ません。せんべいふとんがその良い例といえましょう。

せんべいぶとんの落とし穴

腰痛を経験した人の殆どが使い古されてかたくなったいわゆるセンベイふとんを推奨されます。確かに柔らかいふとんのように胸部や臀部の沈み込みによる体型のゆがみから来る寝苦しさや、思うにまかせぬ寝返りなど、眠りを浅くする要因からは逃れる事が出来るのですが、このようなふとんはたいていの場合、ふとんとしてに機能、特に保温力と吸湿力を失ってしまったものが多く、汗などによって付着した塩分が湿気を呼び、いつもジメジメしています。その上重たいからだがまともに圧接させられるため血行障害や発汗リズムの狂いを伴って質の良い睡眠を得る事が出来ないのです。

昇温速度は安眠づくりのカギ

寝床に入ってから床内の温度が体温近くまで上がる時間の早さを昇温速度といいます。つまり、寝床にはいってすぐにあたたかく感じるふとんが理想的で、いつまでたっても冷たいと交感神経の緊張が続きなかなか寝つけず不眠の原因になることは避けられません。だからといって床内温度を高めるために電気毛布などで加温する事は「全身加温と水分」のところでも述べましたような弊害をともなう事が考えられますのでどうしてもはずせない人は寝床の中が温まり次第出来るだけ低温にし予熱で入眠するよう心掛けましょう。

吸湿性よりも透湿性への発想転換

吸湿性がよいというだけで信仰的ともいえるほど絶対視されているもめんわたは、たしかにふとんに要求される機能を殆ど備えています。しかしながら長年月に渡り使用しなければいけないふとんの素材としてはいくつかの問題を持っているのです。繊維の性質上酸や赤外線によって大きく劣化変質するのですが、汗と一緒に吸収される老廃物は酸化物質ですし、ふとんの天日乾燥は紫外線の直射にさらされるわけですから、当然保温力や吸湿性の低下が考えられます。もめんわたのすぐれた吸湿性や保温性を説明するために、もめんの肌着が引き合いに出されますが、もめんの肌着のさっぱりとした着心地は洗濯をして常に新しい状態に近づけるからこそ機能回復するわけで、ふとんわたのように頻繁に洗濯することなく使用する場合は、日頃の手入れに気を付けなければいけないでしょう。また、ふとん素材として吸湿性にこだわるよりもむしろ透湿性のすぐれたものへの発想転換を考えたら如何でしょう。

吸湿性にこだわるなら羊毛ふとん

羊毛はスーツやセーターなど私どもの生活の中では古い歴史を持っています。ところがふとんの素材ととしての歴史はどちらかというと最近からです。いわゆる健康ふとんとしてもてはやされ、羽毛ふとんと共にドッと市場へあふれ出ました。どちらも動物性タンパク質で、出来ていて生きている繊維とか呼吸する繊維などといわれています。羊毛素材について考えますと、汗や湿気をドンドン吸っては自ら湿潤熱を出してそれらをはき出し、常に床内の温度や湿度を一定に保とうとする性質を持っています。その上湿気は吸うが汚れは吸わないという大変すぐれた性質を兼ね備えていますから、繊維が変質しにくく長年の使用に耐える事が出来るのです。ただ繊維の形状から縮むという避けがたい欠点を持っていますが、防縮加工の研究も進みましたので、その致命的ともいえる欠点も殆ど解消したといえそうです。

防縮加工:国際羊毛事務局によって工業化された特殊加工で、非常に高度な防縮性だけでなく、弾力性、かさ高性、耐フェルト性などにすぐれ、羊毛の持つ特性がそのまま生かされます。しかしながら均一な処理をするためには羊毛と使用する樹脂の臨界表面張力の相対関係などから、大変手間の掛かるデリケートな加工法です。従って高価になります。しかし今は輸入品などでかなり安価になっています。

ふとんは重たくなければ着た気がしないしあたたかくないの間違い

重たいふとんでないと温かい感じがしないと云われる方もまだまだおられるようです。このことは長年にわたる生活習慣から来るものと片づけてしまうことは出来ません。少し大げさですが、なぜなら重たいふとんを着ると、皮膚表面が圧迫され毛細血管への血流が減ります。勢い血液は内行しますから皮膚表面からの放熱が減り温かく感じるわけです。しかしながら2〜3日くらいならともかく、毎日となりますと血行の乱れから健康のバランスを狂わせ成人病を引き起こしたり、老化を早める原因になります。

保温性は厚さと密度で決まる

ふとんの持つ保温性は厚さに関係しそうだとは誰しもが考える所でしょう。確かにその通りですが、厚さが10pをこえますと保温力は殆ど変わらなくなるという実験結果があります。それよりもさらに大切な事は、素材の密度が保温性を大きく左右するという事です。店頭に飾られたふとんがフカフカとして温かそうだからと思って買ってかえって使ってみると、何となくスコスコとして頼りなく、まるで温かさが感じられないという事をよく聞きます。これなどは素材の密度が極端に小さいため素材内で垂直方向への空気の移動をさそい、あたたかい空気がふとんの外へ逃げ出してしまうからです。

密度にほとんど影響されない羽毛ふとん

羽毛は髪の毛などと同様動物性タンパク質で出来ていて少なくとも30〜40年は使えるといわれています。西洋では親子二代に亘って使われることも珍しくないそうです。最近特に健康ふとんとして脚光を浴びているのは、その軽さに加え抜群の保温力や吸放湿性の良さからでしょう。普通軽いということは素材密度が小さいということですから、一般のふとんの場合十分な保温性を期待することは出来ません。ところが羽毛素材だけは別で、その持つ保温力は素材密度に殆ど影響されませんから、保温性をそこなうことなくかなり軽く作ることが出来るということになるのです。

ダウン混合率は多くなければ駄目か

羽毛ふとんの場合、ダウン混合率が50%以上で有れば保温、吸放湿機能にそれほど大きな差がありません。ただ羽毛ふとん特有のふんわりとした肌触りの点ではやはりダウン率の高い物ということになります。羽毛ふとん使用の歴史が浅い我が国では、機能第一で経済的なふとんとしてよりも、むしろ高級、高額なふとんとして売り出されたため、あまりにも高ダウン率にこだわりすぎた嫌いがあるようです。耐久性を考えた場合「羽毛は動かしながら使え」の鉄則からしますと、むしろスモールフェザー30%くらいの混合率の物がよいと先進地のメーカーはいっています。

重い軽いは四つにたたんだ時の総重量だけではない

軽いということは、普通一枚のふとんを四つにたたんで持ち上げたときの総重量と考えられがちですが、体に良くフィットするものであれば体をおおっている部分の重量だけを考えれば良いわけで、実際に総重量の大きいものでもそれほどの重たさは感じません。羽毛ふとんがその良い例で、側布に丈夫な物が使われていますから持ち重み感はある割には、使用段階では殆ど重みを感じません。羽毛は繊維と違って一つ一つが独立していて、絡み合ったり引っ張り合ったりしないからです。一般にふとんを選ぶ場合、少しぐらい嵩が低くても、出来るだけドレープ性(そいの良い)の良いものにしたいものです。

睡眠補助器具    

最近健康づくりの中でも睡眠の大切さが見直され、8時間の中味を積極的に活用して、より効率的な眠りを作ろうと、睡眠のための補助器具が出て来ました。今ここではイオン発生器や磁石を組み込んだものについて考えてみましょう。

・ マイナスイオンのねらい

人の血液は生きている限り酸性に傾こうとしますが、血液中の予備アルカリの不足はナトリウムの減少を招き、細胞膜電位が低下して新陳代謝を衰えさせますし、カルシウムは歯や骨をとかして不足分を補おうとします。そこでマイナスイオンを照射してカルシウムやナトリウムの無駄遣いを防止し眠っている間に睡眠の質を高め健康な体を構築しようとするものです。

・ 磁石のねらい

近年、鉄筋の家屋や自動車など金属で囲われた中での生活や、高層住宅内での生活がふえ、地磁気欠乏症候群と言われる原因不明の症状が急増しています。すなわち、自律神経失調症や不眠症をはじめ慢性内臓疾患などへの原因にもなっているようです。そこで積極的に磁気を当てて神経電流を刺激し、電解質の解離を高めることによって血行改善やホルモン分泌の狂いの矯正などをして眠っている間に健康な体を作ろうというものです。

いずれの場合も薬や健康器具のような即効性を期待するのではなく、漢方薬にも似た長年月に亘る体質改善によって自然治癒力を正常化させるのが狙いです。

ふとんにこだわるわけ

眠りについての情報の一部をお届けしてきましたが、病気の苦しみを救ってくれる薬も尊いけれど、それ以上に尊いのは病気を未然に防ぐことが出来ることだと思います。正しい眠り方を身につけることは、単にその日その日の安眠が得られるだけでなく、昼夜を通しての積極的な体の増強や心身のバランスの強化によって病気知らずの長寿の体を作り出すものであることがおわかり頂けたことでしょう。そして正しい眠りをつくり出すためには睡眠環境の整備を軽視するわけにいきません。ふとんの良否もカギを握っていると考えられます。多少睡眠環境が悪くても正しい選択をした寝具で眠った場合、もっとも大切だといわれるレム睡眠が沢山得られるからです。すなわち人間としての活動能力にふとんも少なからず関わっているからです。それがふとんにこだわるわけそのものです。

最後に:健康は何ものにも変えることの出来ない大切な財産です。そしてこの大切な財産を守るためのお役に少しでもなればと心から願って止みません。

END