2009/11/3

 
  萬屋電右衛門「もぐら兄」2  
 


ゴミの山に引き上げてもらい奥へ 薄暗い裸電球だけの天井

モグラ兄と電右衛門が ゴミの山に並んで座りましてねー



「之だけ溜まるのに 何年掛かったー」



「うーん 5〜6年」



「之だけ溜めたら 自分一人で処分する気は無くなるんと違うか」



「はあ一人では もーどないも成りません 

最初の少ない頃は 何時でも出来る思ってたんですけどー」



「大丈夫心配しいな 萬屋が仕事を引き受けたからには全部処分して

元通りにするから安心しとき」



「電話で言ましたが 大家さんから修復の請求はどの位来ますかねー」



「そーやなートイレ扉・壁紙張替など 

云うてもワンルームの事やからなー 多めに見て20万ちょいかなー」



目先が付いたのかモグラ兄 少し安堵したのでしょう

冷蔵庫・TV・エアコンも故障してて動かんので 次に移るの部屋には

新しいのを取り付けて欲しいの依頼 部屋は汚いけど

モグラ兄は家賃も真面目に納め 隣人同士のトラブルも無ったのでしょう

それが証拠に大家さん モグラ兄を一階の部屋へ移しよりました

一階なら水漏れさせても被害はでませんしねー



「あのなーこの状態で電化製品使うたら湿気と各種ガスで 又すぐ痛む

どうせ痛むのなら最初から安い中古にしとき 言うてる意味解るやろー」



「はい解りますお任せしますので お願いいたします」



どうもこのモグラ兄は自閉症ぎみの性格 人見知りが激しいのか

清掃作業に立ち会うのは簡便して欲しい 部屋に在る品物の選別も

全てお任せするとの話で 清掃作業に取り掛かりました



清掃作業に掛かって 妙な疑問が浮かんで来ましてねー

まず第一に布団や毛布が無い 衣類が無い 食器その他何にも無い

これでどの様に生活してたのでしょう 好奇心旺盛なる電右衛門

推理小説の探偵もどきに 楽しく仕事をしておりましたが 

手伝いのパートさん達は 本人居てないもんで文句たらたら云い放題 



「よー之だけゴミが溜められるなー」



「いったい親はどんな躾してたんやろ」



「これで塾の講師してるんなら 生徒が可哀そう」



もしもしパートさん方々 モグラ兄が居てないと我々の給料は何処から出る

仕事させてもろて御金戴いて 文句たらたら云うてたらバチ当たりまっせ

−−続く−−