入れ歯のはなし

 

 前のページでお話したとおり、義歯には大きく分けて総義歯と部分床義歯があって、どちらも保険が効くベーシックな義歯と、より装着感や審美性が良く咬みやすい保険適用外の義歯があります。


1.総義歯

 右の写真はどちらも総義歯ですが、上は保険内のレジン床義歯、下は保険外の金属床義歯です。 

 保険内の義歯はピンク色の粘膜を覆う部分(義歯の本体部分、義歯床)が全部プラスチック(レジン)で出来ているのに対し、保険外のそれは内側の大部分が薄い金属(コバルトクロム、チタンなど)で出来ていて、非常に薄いため異物感が少なく快適です。食べ物や飲み物の温度が伝わりやすく、味覚も損なわれないのでおいしく食べられます。また精密鋳造でつくるので適合が良く、強い力がかかった時にレジンのように床が歪んで破折することもありません。費用は型取りから義歯の完成まですべて含めて20万円くらいかかりますが、費用に見合った満足度は得られると思います。

 顎の骨がやせてきたり粘膜の一部がぶよぶよに肥厚している場合、適合の良い義歯を入れても義歯の安定が得られず、「痛い、咬めない、はずれやすい」といった悩みをお持ちの方がいらっしゃいます。通常は義歯の内面の調整や咬合調整で治るものですが、どうしてもうまくいかない場合は義歯の内面をやわらか
く弾力のある素材で裏打ちする方法があります。従来から軟性裏装材とよばれるものはいくつかありましたが、いずれも数ヶ月から1年くらいで変質したりはがれたり硬くなったりと、長期間の使用には耐えられませんでした。ところが最近、生体用シリコーンを義歯内面に強固に接着する技術が開発され、このような欠点が解消されました。この技術は「コンフォート」(左図)とよばれ、バイテックグローバルジャパンという企業が開発したもので、3年間の品質保証が付いていますので安心です。コンフォートによる裏打ちの費用はだいたい上下の片方で15万円ほどですが、使っている方の評判は大変良好です。





2.部分床
義歯
 右の写真は、左右の奥歯がなくなった時に入れる部分床義歯の一例です。上は保険内の義歯で、左右の義歯床を板状の金属(バーといいます)でつないで一体とし、天然歯(残存歯)との連結には金
属製のばね(クラスプといいます)を使います。保険外の義歯(下)では、バーの部分には金属床を用いて舌感や装着感を良くし、またクラスプにも審美性や機能性を改善したものを使ったり、コーヌスクローネやマグネットなどの特殊な維持装置を使います。

 義歯と天然歯をつなぐ役目を果たす維持装置には昔からいろいろなものが考案されてきました。そのうちのいくつかを下の表にまとめてありますが、自費の維持装置を使う目的は保険適用のクラスプの欠点を改善することにあります。 

 たとえば、保険のクラスプは天然歯の周囲をリング状に取り囲んで維持するため、口の外から見えるので義歯を入れていることが他人に分かってしまいますし、金属が舌に触れることによる違和感があります。また、クラスプは義歯をはずれにくくするのには役立ちますが、天然歯をしっかり支えて抱え込むのには不十分ですので、義歯に咬む力や横揺れの力が働くと義歯がいろいろな方向へ動いたり沈下したりして歯ぐきの痛みを生じます。さらに悪いことに、義歯に加わる力がクラスプを介して残存歯を横方向へ押す力として働き、さらには歯を傾斜させる力となるため咬合性外傷という歯周組織に致命的なダメージを与えることがあります。ク
ラスプ周囲はプラークが付きやすいこととあいまって、保険の義歯は残存歯への負担が強く結果的に歯の寿命を短くするといえます。

 保険外の維持装置のなかでも、下左図のコーヌス義歯(コーヌスデンチャー)に使われる維持装置(コーヌスクローネ)は保険の義歯の欠点をほとんど補っており、数本以上の歯が残っている部分床義歯のケースでは最もおすすめの方法です。まず数本の残存歯に内冠を装着して、その上に外冠が精確に組み込まれた金属床義歯を入れるもので、金属は外から見えないので審美性が高く違和感も少ないです。内冠と外冠は非常に高い精度で適合し、わずかなテーパーが与えられているため両者が接合して咬む力が加わると内冠が外冠にぎゅっと食い込んで簡単にははずせません。義歯全体が数本の残存歯にぴったりと適合して維持されるため、義歯の動きはほんのわずかですので痛みがなくよく咬めますし、また残存歯へ加わる力は歯を平行移動させようとする力のため歯周組織へのダメージも少ないのです。

 保険外義歯の費用は、残っている歯の本数や部位、使われる維持装置の種類と数、使用材料などにより異なりますので、詳しくは歯科医院に見積もりを出してもらうことをお勧めします。

 
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