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第六章へ

第七章 世界知識

 

 第1章から第6章までは『総論』について記述してきましたが、この章では『各論』についても説明していきたいと思います。
 総論とはこの世界の成り立ちについて、各論というのは主に背景世界に関してで、基本ルールでは、剣と魔法のファンタジー世界である「αステージ」、世紀末伝奇冒険活劇を行う現代日本の「βステージ」、コロニー間戦争後の荒廃した世界でのサイバーアクションの舞台「γステージ」の3つを掲載しておきますので、利用してみて下さい。
 また「舞台」以外にもこの章ではDOCの最終兵器『縁故』に関しての説明もなされています。

 

第零幕 縁故

 「心頭滅却すれば火もまた涼し」「馬鹿の一念岩をも通す」というのは結構有名です。縁故とは感情の強さです。そう言ってしまえば一言で終わるんですが、当然それがルール的な効果を持つから説明するわけです。具体的な効果はといえば「振るダイスの数が増える」というものです。
 縁故は「種類−対象−レベル」の形式で表されます。例えば「憎悪−親の仇(本当は実名が入ります)−2LV」とか「愛情−恋人(実名)−7LV」となるわけです。縁故LVは高い方が強い感情であることを示しています。そして、人間の感情には際限がありません。何種類でも持つことができますが、レベルの合計には限界があります。

縁故総数=総合レベル×縁故係数

 縁故係数とは、その舞台(αステージとかβステージとか)によって異なり0〜3の値を取ります。一般的には2なのですが、感情を軽視する社会では低い値を取ることもあります。
 さて、実際の効果ですが、これは非常に簡単で「ダイスを振る際にダイスの数を増やすこと」ができます。増えるダイスの数は縁故レベルと同じ数まで増やすことができます。ロールの達成値を増加させることも、与えるダメージを増加させることも、受けるダメージを減らすこともできます。そして、ダイスを増やすことによって、ファンブルを避けることができます。ダイス目が2のときにファンブルが発生するので、ダイスを3個以上振れば絶対にファンブルしないことになります。また、ダイスの数を1〜2個増やすとクリティカルの確率は上がります(ダイスを13個以上振ると絶対に無理ですが)。
 特殊な使い方ではデスチャートを軽くすることもできます。ただし、レベルアップ時の成長量・狂気表・固定ダメージ(手榴弾やプラズマライフル・術力の二次効果など)の算出には縁故を使うことはできません。また、式は縁故を使えませんが、禍族は使えます。なお、集積ロールの際にもダイスの数を増やすことができますが、そんなことをしても全くの無意味です。強い感情は精霊との同調を阻害するものだということです。
 縁故を使うにはある「条件」を満たしていなければなりません。その条件とは「心が燃えている」ことです。またそれかと思われるかも知れませんが、今度は「縁故に関わる形で」心が燃えている必要があります。「憎悪−親の仇−2LV」ならば仇敵に剣を振るうときなどは縁故が使えますが、ダイスを増やすにはそのような演出が必要になります。DOCでは会話は自由に行うことができますので、それっぽいセリフをつけるのが一般的でしょう。ただ斬りつけるだけではなく「父さんの仇!!」と叫びながら斬りつけるとかすれば、縁故を使うことができます。
 しかし、強い感情はときに『諸刃の剣』であることを忘れてはなりません。感情がただのしがらみになることは避けられないことでしょう。例えば、最愛の妹が禍族と<融合>してしまったら、兄は剣士としてその身に刃を突き立てることができるでしょうか?

剣士  では、禍族を斬ります。
GM  剣を振りかぶったその瞬間、剣士の脳裏に屈託なく笑う妹の笑顔がよみがえり、利き腕が震えてしまう。まともな斬撃など繰り出せない。

 こういった状況に陥った場合は「縁故の逆作用」が発生します。縁故の逆作用が発生すると、いままでとは逆に、ダイスを縁故LV個だけ減らさなければなりません。縁故LVが高ければ、この逆作用によってダイスが1個も振れないときもあります。そのときには、ダイスを振らず、自動的にダイス目2=ファンブルとして扱います。
 縁故の逆作用は結構忘れてしまいがちなのですが、発生するシチュエーションは以外とあります。上記のような場合(何も妹でなくても可)や、仇敵が実は父親だったと分かったときなど、愕然・呆然とする状況などはたいてい逆作用が発生します。
 ですが、逆作用が発生したからといって永遠にその行為ができなくなるかというとそうではありません。いつかは立ち直れるでしょうし、発想の転換さえできれば逆作用を克服できます。先ほどの剣士と妹でいえば、

GM  〜斬撃などできない。縁故の逆作用が発生します。
剣士  ・・・俺がついていながら心に『闇』を持っていたというのなら・・・せめてこの手で!

と言えば縁故を通常通り使用することができるでしょう。ここら辺はキャラクターの心境次第ではないでしょうか。
 誤解を含む言葉を使えば、縁故は暴走であり、暴力です。ダイスを振れるときならば、ほぼいつでも達成値やダメージを暴走させうるとてつもなく危険な能力です。老婆心ながら、縁故を使用するときにはそれが諸刃の剣であることを思い出して下さい。

 

第壱幕 世界

 DOCの術者達は術力と呼ばれる超常能力を使えます。では、なぜ使えるのでしょうか。端的に答えを言ってしまえば、精霊が力を貸してくれるからです。では、なぜ精霊は力を貸してくれるのでしょうか。それを知るためにはDOCの世界がいかにして作られたかを知る必要があります。

 DOCの世界には最初、至高神と呼ばれる存在がいました。至高神は最初の生物として、天使と悪魔をつくられました。しかし、いつの頃からか天使と悪魔は仲違いし、憎しみあい、殺し合うようになりました。理由は分かりません。最初に争い始めてからはもはや理由などいらなくなってしまったのです。
 そんな子供達のていたらくを見て、嘆き悲しんだ至高神は天使の住む天界と悪魔の住む魔界とに分かち、その境界線に新たな生物たちの住む「形成界」を創造しました。至高神はこの形成界に住む生物の魂を管理するように天使と悪魔に言いつけ、罪に穢れた魂は魔界の「忘却の河」で浄化してから天界に移し、転生させるという「魂のサイクル」を命じられました。そして、至高神は形成界でも天使や悪魔が天界・魔界と同じように『力』を使えるように、形成界のあらゆるものに「精霊」を封入しました。これによって、森羅万象は天使と悪魔の命令を聞くのです。こうして天使と悪魔の戦はおさめられたのです。

 さて、形成界は全部で108つに分かれています。これら108つの世界はそれぞれ異なる物理法則によって成り立っています。DOCの舞台となる世界は<アスタロート公爵領(悪魔の呼び方)><第14形成界(天使の呼び方)>という世界で、物理法則に関しては我々の世界と酷似したものです。悪魔から見たら「アスタロート公爵が取り仕切っているところ」であり、天使から見たら「14番目の区画」ということです。この体制で宇宙開闢から悠久の時を経てきたのです。
 ですが、あるときまさしく天地を揺るがす事件が起きます。至高神に次ぐとまで言われる力を持つ熾天使が叛乱を起こしたのです。理由は天使にはあってはならない理由でした。第14形成界の一人の少女を愛してしまったのです。その少女の死亡/転生の「作業」において、その熾天使が少女の魂を持って逃走したのです。当然、反逆者には討伐命令が下されました。しかし、熾天使に共感する天軍の3分の1が反乱の弓を引き、天界は再び戦火にさらされることになったのです。結局、熾天使は生きたまま捕らえられ、堕天使の烙印を押され、翼を切り落とされてしまいました。その熾天使の名はルシフェル。彼のその後は語り継がれてはいません。

 堕天使は叛乱によって捕らえられてしまいましたが、愛された少女は堕天使の忘れ形見を身ごもっていました。そして生まれた少年は普通ではありませんでした。予言・水面歩行・他者の蘇生・・・。彼は若くして命を落としますが、彼の『力』を受け継いだ子孫達が生き残り、世界に散っていきました。いつしか、彼の使った『力』を「術力」と、彼の子孫を術者と、術者の始祖たる彼の生まれた年を「聖暦1年」と呼ぶようになったのです。
 術者は堕天使の血を引くものであり、精霊は天使の命令を聞くために知性を抑えて作られた存在ですから、術者を天使と勘違いしてしまってその命令を聞くのです。所詮勘違いですから、本家本元の天使達に比べたらかすかな命令しか聞いてもらえませんが、この精霊の助力を術力と呼ぶのです。

 

第二幕 法則

 第三幕から3つのステージの背景について記述されていきますが、ステージによっては少々ルールを変更しなければならないことがあります。人間の育つ環境が異なっているから、精霊の数が多いから、鉄鋼技術が未熟だから等、様々な理由でルールが追加されます。このステージ内における追加ルールのことを「法則」といいます。
 法則は大きく分けて2種類あります。1つは「このステージでは」で書き始められているもの。もう1つは「このステージの術者は」で書き始められているもの。つまり、前者は非術者や異世界からの住人にも適用されますが、後者はそのステージで生を受けた術者にしか適用されません。この差が顕著に現れる事態は滅多にありません。しかし、何らかの理由で異次元・過去・未来等に跳ばされた術者は「自分のステージの術者は」の法則と、「跳ばされた先のステージでは」の法則に従わなければなりません。
 禍族は基本的に「そのステージの術者」とみなします。

 

第三幕 αステージ

 冒頭でも触れましたが、αステージは「剣と魔法のファンタジー世界」です。ドラゴンなどの怪物達が実在する世界です。時は聖暦1400年代。場所は太平洋のほぼ中央に位置するムー大陸です。

 文明はルネッサンス初期の欧州程度。火薬・羅針盤・紙(羊皮紙を除く)はありませんが、大型の帆船はあります。といっても海図がいい加減ですので大陸から出ることは不可能なのです。また、海流・気流がものすごく複雑に入り組んでおり、海図が完成したとしても、大陸から海路で大陸から脱出しようとは考えない方がいいでしょうし、海流気流の都合から、あまり緯度による気候の法則性は見られません(本来ならば赤道直下が密林で少し離れて砂漠があって・・・)。
 地図は別に掲載しますが、陸図に関しては飛行術力や映像投影術力のおかげでわりと正確なものが普及しています。余談ですが、ムー大陸に普及している地図の縁の部分には「自分の尾を咬む蛇」が描かれていることが多いようですが、それほど大陸からの脱出が困難であることを示しています。
 自然環境は基本的に温和で、かつ四季があるのが一般的です。都市のないところには林や草原が広がるという光景がどこででも普通に見られます。まあ、砂漠や暗礁海域・沼沢地帯・秘峰もあるにはありますが。
 社会的にはルネッサンス前のように、都市国家封建制が主流です。一般的には世襲制国王の下に貴族・騎士・市民・奴隷と続いていきます。たいていの国ではまだ奴隷制が残っています。

 αステージでは国家によって禍族が公認されている国家もあります。術者よりも(人数・統率の取り易さについて)「安定した術力使い」である禍族を戦力として組み込む国王もいるでしょう。また、国王が禍族に操られていることもあるでしょう。それらの場合は国王命令で生け贄(禍族が乗っ取って「使用」する)を捧げることになるでしょう。

 ムー大陸では魔法(術力)技術をより高めるために、魔術師ギルドという組織が存在します。魔術師ギルドはある種の国際組織であり、どの国家にも属しませんが、大都市には必ずと言っていいほど支部を作っています。魔術師ギルドの建物は都市の外部に建てられた塔です。外壁を青く塗った塔はその国家のものではないので、戦争が起きても攻め込んではならないことになっています。
 魔術師ギルドの平常時の仕事は魔術師に魔法を教えることと、魔術師の保護です。ここでいう魔術師とは「ギルドのためになった術者」のことであり、積極的にギルドの仕事に携わっている者にしか魔法を教えることはしません。少々閉鎖的な気もしますが、魔法が犯罪に使われることをおそれてのことです。

 魔術師ギルド以外に教会も国際組織です。ムー大陸では一神教が主流ですので、比較的統率が取れるようです。そして神の教えを広めるために魔法を使うこともあるのですが、彼らの使う魔法は精霊ではなく神から授けられた力(自称)であり、神に選ばれた人物にしか使えない特殊な術力です。この術力を聖術といい、彼らのいう「神に選ばれた人物」を新しいサイコタイプ・聖道士といいます。

サイコタイプ 筋力 運動力 耐久力 知力 感覚力 精神力 霊力 行使術力種
聖道士 聖、式地凍空雷から2

 さて、法則についてですが、αステージでは以下の3つが存在します。

・ 自然淘汰の法則
 このステージの術者は2ポイントのRSPを1ポイントのPSPに、2ポイントのPSPを1ポイントのRSPに変換することができる。

・ 重量制限の法則
 このステージでは非術者であろうとも武器・防具合わせて『筋力』×5wpまでしか装備することができない。その他の物品は制限を受けないものとするが、常識と良識の範囲内とする。

・ 英雄性の法則
 このステージでは術者は心の燃焼によって『天勢値』を最大10点まで得られる。

 註 : 「重量制限の法則」において、携帯しているすべての武器・防具のwpが加算されます。

 また、法則とは少し違うのですが、このステージでは鉄鋼技術が未発達なために金属製防具はすぐに傷んでしまいます。命中判定時にクリティカルしたとき/防御・回避判定時にファンブルしたときには防護点が1点ずつ低下していきます。この減点は鍛冶屋(特に該当する技能などは当てはめません)に打ち直してもらうまで続きますし、防護点が0点になってしまったのならばその防具は破壊されてしまいます。
 さらに、防具が耐衝撃用にできていないので、フレイル・モーニングスター・メイス・ウォーハンマーのような叩きつけることでダメージを与える武器は衝撃によってダメージを与える事ができます。ルール的に言えば相手の防護点を武器に設定されている「衝撃xP」点だけ下げてダメージを算出することができます。

 αステージの縁故係数は「2」です。縁故LVの合計は通常、総合LV×2となるのです。
 余談ですが、全人口内の術者の割合は約30%です。
 良きにしろ悪しきにしろ、αステージは幻想世界です。戦乱によって『闇』が増殖していなければ平和な世界だったことでしょう。

 

第四幕 βステージ

 βステージは聖暦1900年代末期、日本を舞台とした冒険活劇の舞台です。
 想像できると思いますが、このステージでは術力が公認されていません。禍族の存在もしかり。しかし、術者は黙って禍族に身を任せることはできません。都会の灯りの影で『闇』を消さねばならない。どれだけ『闇』を消しても誰にも賞賛されることはない。そんな悲しい世界の物語を紡ぐのがβステージなのです。

 文明・文化は20世紀末の日本のまま。社会制度も然り。風潮・雰囲気もまた然り。『闇』の濃度もまたしかりなのです。
 唯一異なるのは術力の存在です。先ほども言いましたが、このステージでは術力は公認されていません。非公式の場では結構流行ることもあるのですが、所詮「流行る」程度のものです。しかし一方で、術力に理解のある家系というのもあります。術力の因子は遺伝しますので、代々超能力者の多い家系というのも存在するわけですが、そんなものは一握りにすぎません。全人口内の術者の割合は0.4%にすぎないのですから。
 さらに、このステージでは殺人を犯すことは違法です。そして官憲は禍族の存在を知りません。つまり、人間の肉体に<融合>した禍族を倒すことも違法となるのです。これが術者にとって大きな障害となります。

 βステージの法則は以下の3つです。

・ 感覚喪失の法則
 このステージの非術者は超自然の力場を見ることも、『感覚力』を使ったロールをすることもできない。

・ 新必殺技の法則
 このステージの術者は戦闘中であろうとも新しい術力・必殺技をPSP等の消費の他に天勢値2点を消費することで修得できる。その術力は最初の1回に限り相手の『運動力』−7、『精神力』−7、自分の術力・必殺技の達成値+10、消費値+10のうちどれかができる。

・ 守護精霊の法則
 このステージでは術者一人当たりの精霊の数が多いので、『装精霊』を防護点に加算することができる。

 先ほど、禍族を倒すことが違法だと書きましたが、βステージの非術者は一部の術力を視ることができません。もとより術者にも見えない地術の重力操作・空術・雷術の電磁波操作・虚術はもちろん、術者にはオーラ等が見える式術・光術・霊術・妖術・聖術も見えません。ただ、炎や氷・稲妻・水・肉体操作・呪符などの実体を持つ術力は非術者にも見えてしまいます。幻術系は非術者にも見えるようにすることができます(そりゃそう)。

 術者の困難は超自然への無理解だけではありません。このステージでは一部の武器は法で規制されています。それらの武器は隠し持つ必要が出てきます。隠し持つのは簡単ですが、探そうとする相手(官憲やボディガード、果ては興味本位の近所の住民まで)が出てくると話は変わってきます。そのような相手と遭遇した場合、隠す側は「隠匿」+『知力』をロールし、それを目標値として見つける側が「捜索」+『知力』で判定し、見つける側の方が達成値が高かったときと、隠す側の達成値がそれぞれの武器に固有の「隠匿値」を下回ったときには武器が見つかってしまいます。

 このステージでは法による生活の保障がなされており、他のステージの比較にならないほど物質的に豊かです。それ故に、特にmpを消費しなくても一般的な生活は確保できます。衣食住全てにおいてです。このステージでは贅沢をしない限りmpを消費することはありませんが、以下のものは条件付きでmpを消費する必要があります。

・ 衣服、サングラス
 先ほども述べましたように、普通に生活するくらいの衣食住は保証されていますので、衣服にmpを割かなくとも裸で生活しているわけではありません。衣服にmpを割くときは、相当な華美をするか、戦闘時に防具としての効果を期待した戦い方をするかがあげられます。衣服をかばって戦闘するのはかなりつらいことです。当然、防御はおろそかになり、防護点が上がらなくなるということです。
 サングラスも同様で、戦闘中にもサングラスを外さないで閃光から目を守ろうとすれば、頻繁に壊れてしまい、金がかかるということになるのです。
 余談ですが、眼鏡にはmpを消費する必要はありません。ただし、眼鏡や鏡のような人工物には霊的なものは写らないときもあるので、意外とハンデになります。逆に「瘴害値」を1点上げる効果があります。

・ 住居
 住居を借りるためのmpは一人暮らしをするときにのみ消費して下さい。金銭的にはそれほどでもないのでしょうが、一人暮らしをすると身の回りのことで時間を割かねばならず、「時間的猶予」のmpを消費してしまうことになります。しかし、βステージの術者にとって「家族がいる」ことがメリットなのかデメリットなのかは判じにくいことでしょう。

 ついでですので、もう1つ特殊なアイテムの説明をさせてもらいます。

・ 専門書
 βステージでは「義務教育」というものが行われており、誰でもある程度の教育を受けることができます。しかし、専門的な学問を学ぶのはとても大変なことなのです。ですから、キャラクターを作り終わってから新しく知識系技能を学ぶには時間的・金銭的な余裕がないといけないので、新しい技能1つにつき2mpが必要になります。
 これは新しい技能LVを獲得するときだけであり、技能LVを成長させるときには必要ありません。また、知識系技能(雑学以下の技能)の中でも「魔法物理学」はmpを払う必要はありません(第六章番外参照)。

 さて、偶然なのか必然なのかは分かりませんが、このステージではわりと言霊の概念が普及しています。ですから、術力を文字に変換する技術が古くから開発されてきました。この術力系統のことを符術といい、この技術の継承者を陰陽士といいます。

サイコタイプ 筋力 運動力 耐久力 知力 感覚力 精神力 霊力 行使術力種
陰陽士 符、式、−

 陰陽士は特殊能力として符を通常よりも多く描くことができます。通常、符は術力LV×1枚までなのですが、このような制限は受けなくなります。ただし、通常の枚数制限(術力LV×1枚)を越える符を作ろうとするごとに、符作成の発動値が3点ずつ上昇していきます。なお、これは術力ごとに計算するので、<A符>を規定数+5枚作っておいていても、<B符>を作るときには関係がないということになります。

 このステージでの縁故係数は「2」です。αステージと同様に縁故LVの合計は通常、総合LV×2となるのです。
 それから当たり前のことなのですが、βステージではムー大陸は水没しており、全く知られていません。術者の間でもムー大陸に関することは全くと言っていいほど知られていません。

 おそらく、このステージに関してはあえて多くを語る必要もないでしょう。背景に関しては他人様に迷惑をかけないレベルでご自由にお作り下さい。また、これは私見ですが、DOCの中のメインステージとなるのがβステージだと思います。慣れないうちはβからプレイするのが良いでしょう。

 

第五幕 γステージ

 聖暦2000年代になると科学の進歩は目覚ましく、技術レベルは格段に向上します。人類は衛星軌道上に多くのスペースコロニーを建造し、環境の悪化した地球から移住する者達が出始めました。そして、地球に大きな異変が起きたのです・・・。
 以下に聖暦2000年からの大まかな年表を掲示します。

聖 暦

事  件

2047  第1次アストニア発進
2230  第42次(最終)アストニア発進
2235  ネプチューンクライシス、低高度地帯の水没
2238  コロニー間条約破棄、コロニー間戦国時代突入
2240  コロニージャック発生、ALiCE第1号完成
2338  オフィーカスクライシス、獣術の発祥
2341  ムー大陸浮上
2352  ワイズストーン発見
2371  PKソード・ヒドラパーツ開発
2372  ダムシーナ・エスディール・DD建国
2414  DD無法地域化
2418  地球圏コロニー連合発足、コロニー間闘争凍結

 重要な事件は大体以上です。が、新しい言葉が出ているので解説しがてらあらすじを述べましょう。

 アストニアとはアストロノーツ(宇宙飛行士)とパイオニア(開拓者)の合成語で、コロニーでの過酷な戦いに身を投じるために、最初の1回は世界各国から優秀なアストニアをかき集めての発進となりました。しかし、200年もすると各国独自でコロニーを建造し、住民を住まわせることが可能になりました。
 ネプチューンクライシスはそんな状況下で起こりました。突然、北極圏を超巨大地震が襲い、津波・地殻変動・火山活動を併発し、水位が著しく上昇。低高度にあるほとんどの大都市は海水に飲み込まれていったのです。

 衛星軌道上に取り残された人々は不安に打ち震えました。そして3年後にはコロニー間不可侵条約を破棄するものがあらわれました。コロニーは初めて戦禍にさらされることになったのです。また、某コロニーにおいて生存に必要な区画をテロリストが制圧し、支配系統が逆転するといういわゆるコロニージャック事件が発生したのもこの時期です。
 これに対して、他コロニーから選り抜きの精鋭を集めて打破せよという決断が下されましたが、ここで悩んだのがコロニーの制圧方法です。攻撃力が余りにも高すぎるとコロニーを傷つける可能性があり、しかもコロニー内と宇宙空間の両方に対応し、刻々と変化する状況に対応し、さらに長時間の作戦行動に耐えねばならないのですから。

 折りも折り、月面の某社兵器工場でDr.キャロル=DとDr.A=ルイスの手により新型兵器が開発されていました。新兵器は全高18〜20mほどのヒト型のマシンであり、先のニーズをほぼ完全に満たしており、即座に7機を作成・実戦投入が決定されました。この部隊――汎装リエゾン制圧部隊≪ALiCE≫(multi-Attachment Liesone-controled Conquer Elements)――の活躍により、初のコロニージャックは1ヶ月で幕を下ろし、そしてこの部隊は解散されました。しかし、いつの頃からか、この作戦で使われたマシン自体の呼称として≪ALiCE≫の名は引き継がれているのです。
 ALiCEの操縦システムは非常に難解です。搭乗者はALiCE胸部のハッチからコクピットに入り、シートに座ってハッチを閉じます。ハッチを閉じたら半透過式ヘッドマウントディスプレイを装着し、機体内外の情報を受け取りながらコクピット内のスイッチ・キーボード・スロットル・レバー・トリガーを操作して操縦します。と、ここまでは量産型のALiCEの話です。初期の7機体はリエゾンシステムが搭載されており、機体状態の情報はもちろん、コンピューターネットワーク内から戦闘に関係ありそうな情報(自動検索の発展形だと思って下さい)や、戦況・心理戦的知識に至るまで、ありとあらゆる情報を網膜から強制的に叩き込み、半無意識下で操縦をさせます。この<リエゾンシステム>は量産できませんでしたので、聖歴2400年代になっても歴史の表舞台に出ることはありませんでした。

 聖暦2200年代後期になっても、主要都市部を失った各国政府が行う復興政策はあまり効果がなく、世論は政府に対して反発的になり始めました。少し治安の悪いところでは毎日のように暴動が起きる始末です。そこで政府は苦肉の策として民間企業に復興作業を委託して責任転嫁しようとしたのです。しかし、政府側の予想に反してこの政策は功を奏し、超巨大都市・メガロポリスの建造に成功しました。結果として市民はメガロポリスに集中し、民間企業がメガロポリスの権益を手にし、政府は弱体化。世界には都市国家状態のメガロポリスが建造されていったのでした。

 オフィーカスクライシスは聖暦2338年にベナレス・メガロポリス(MP)で発生しました。あるテロリストがベナレスで起こした暴動は、追い込まれたテロリストの自決という形で幕を下ろしました。ただし、自決の方法として細菌兵器を使ってしまったのです。
 MPを完全に覆い尽くす程の細菌兵器は人間の遺伝子に干渉し、体内に他の動物の遺伝子を持つ人間が誕生しました。その遺伝子と術力因子の遺伝子を併せ持つ人間は全く新しい術力を使えるようになりました。この術力を獣術といいます。ちなみに現在でもベナレスMPは無人の廃棄エリアのままです。

 100年あまり戦争を続けていたある日、再び地殻変動により地球で水没していた陸地が太平洋上に浮上しました。わずか100年で地殻変動が2回も起こるという奇跡を見た人類はこの大陸を民間伝承にならって<ムー大陸>と名付けました(大西洋だったらアトランティスだったでしょう)。各MPの探索隊はそこにワイズストーン(Wストーン)という未知の鉱物が存在することを知ったのです。
 ワイズストーンは特殊な(霊的)エネルギーをほぼ無尽蔵に生み出す無色透明な結晶体であり、小さい結晶体しか確認されていません。この鉱石はALiCEでの運用が注目され、研究が進みました。その結果、一部の人間(術者)の脳波を増幅させてWストーンに作用させると莫大なエネルギーを生み出すことが分かりました。この作用は一般的に「リンク」と呼ばれています。このシステムは科学者にとっても完全なブラックボックスなのですが、すでに「リンキングパーツ」の名で実戦配備されています。また、脳波を増幅するサイバーパーツを「リンクチップ」、このリンキングパーツを搭載したALiCEのことを特にLinking−ALiCE(通称LiLiCE)と呼ぶことがあります。LiLiCEと通常のALiCEでは戦闘力に大きな隔たりがあります。
 リンキングパーツに、もう1つ有色のWストーン(滅多に発見されません)を付け加えると、ALiCEに搭乗したまま超能力を使えることが一部の機関によって報告されています。さらに、通常時は超能力を使えないのにこのようなALiCEに乗ると超能力が使える人種も発見されています。これが騎術とESP−ALiCE(通称ELiCE)及びマギズパーツの発祥でした。
 さらに、その数年後にはリンキングパーツ以外にWストーンを活用する技術が開発されました。PKソードとヒドラパーツです。前者は霊的エネルギーで刃状の力場を形成する武具で、後者は機体の損傷を霊的エネルギーの力場で補うシステムです。どちらも原理はブラックボックスです。
 しかしその翌年、PKソードとヒドラパーツの開発チーム主任が謎の死を遂げたのです。それをきっかけに各MPから共同で出資していた研究チームにも亀裂が走りました。結果として、PKソードの技術を持つ研究者達がエスディールMPを、ヒドラパーツのノウハウを持つ者達がダムシーナMPを建造したのでした。どちらにも属さない科学者もおり、彼らは砂漠地帯に独自のメガロポリスを建造しました。このメガロポリスは後に統率者を暗殺され、無法地帯“ディープダーク”と化しました。

 こうしてムー大陸に発足した3つのMP国家と、結束を固めたコロニー群、さらには旧大陸の各地にあるMPによる戦乱が幕を開けたのです。

 続いてγステージの「現状」をまとめます。
 γステージは多くのクライシスを経た後の世界であり、自然環境は最悪です。世界各地に点在するMP以外は荒野か砂漠が半分以上を占めています。当然、MP以外を住居とする人間もいないわけではありませんが、そんなのはごく少数でしかありません。大半はMP内で犯罪をして追放された「アウトロー」くらいでしょう。

 MPは前述のように2〜3社の超巨大企業が統制しています。企業同士の間では完全に分業が行われており、軍事に関する企業・衣食住に関する企業・運輸に関する企業等、都市機能によって分けるのが普通です(例外もありますが)。企業はMP内での収益を税金代わりにして都市機能を維持している訳です。
 MPにもよりますが、MP外縁部とMP中心部では大きな隔たりがあります。外縁部と中心部の間には高い壁を立て、出入りには数カ所しかないゲートを使わなければならないのです。中心部には都市機能を維持するメインコンピュータやパワープラント・衛星軌道上のエネルギー衛星から打ち下ろすマイクロウェーブの受信システムや支配企業本部などがあり、ここに入れるのはごく一部の人間のみです(中心部の作業員は中心部に家を与えられます)。中心部では支配企業の擁するボディガードを除いて銃器の持ち込みが禁止されています。中心部は完全に安全な地域になろうとしているのです。それに対して外縁部は半ば無法地帯となっています。違法なこと――薬物等の密売、ブラックマーケット、殺人、ハッキング――も頻繁に行われています。出歩くときには十分に気を付けましょう。

 MP間の抗争や、アウトローの侵略等に備えてMPは軍隊を編成しています。が、20世紀の軍隊とは少々様相が異なります。MPの軍隊は国家所有ではなく「一企業のサービス」なのです。笑ってしまうような話ですが、企業は「イメージ」が非常に重要です。ですので、あまり民意に背くようなことはできないのです。例えばNBC兵器(核・生体・化学兵器の総称)は「イメージが悪い」ので使いません。飛行機による敵MPへの爆撃すらも滅多にやりません。主に歩兵と支援車両そしてALiCEや戦闘機を使った電撃戦/制圧戦がメインとなります。戦闘機は生身の人間に直接は攻撃できません。報道されたりすると企業イメージが悪くなるからです。ALiCEや戦闘機が使われる理由もアニメのようでかっこいいからでしかありません。γステージではこういう戦闘が主流なのです。

 コンピュータネットワークに関しては20世紀末のものと大差ありません。ただ、ブラックマーケットでは使えないながらもネットマネーが普及したくらいでしょう。

 こういったご時世ですから、何かにつけてトラブルが多発します。命のやりとりに発展することもしばしばです。そこで、<トラブルシューター>という職業が生まれました。言ってしまえばαステージの冒険者と同じで、金をもらって何でもやるのを売りものにするタフで頭の切れる連中です。
 その戦闘力は下手な軍人とは比較にならず、中にはESP能力者もいると言うことです。同じMP内のトラブルシューター同士は非常に結束が堅く、仲間が傷つけられれば全てのトラブルシューターが復讐に動くほどです。ただ、時折トラブルシューター内で「突然仲間に攻撃する者」が生まれます。心理学者は一種の戦争症候群であると言っていますが・・・。
 この世界ではスキを見せた者から死んでいきます。ゆめゆめお忘れなきように。

 γステージの法則は以下の2つです。

・ 自然淘汰の法則
 このステージの術者は2ポイントのRSPを1ポイントのPSPに、2ポイントのPSPを1ポイントのRSPに変換することができる。

・ 計略の法則
 人生と闘争が一致する、このステージの術者は「条件待機」にS行動を要さず、行動可能MVに宣言するだけでよい。

 「自然淘汰の法則」はαステージの同名の法則と全く同じものです。
 「計略の法則」は書いてあるように、条件待機にS行動を必要とせず、行動を宣言するMVに「条件待機」と宣言するだけで構いません。通常ならば宣言したMVと次のMVではC行動ができませんが(S行動のスキにあたります)、「計略の法則」を適用すれば条件待機を宣言したMVからC行動が可能になります。

 ついでですのでサイバーパーツに関する説明をしておきましょう。
 サイバーパーツはナノオーダーで超精密マシンを人体と結合させて、人間を「超越」するための一種の義肢です。過酷な宇宙空間での生活を強いられたコロニー市民が必要に迫られて開発したのが発端であると言われています。開発当初は「身を守る」物でしたが、地上では「戦争のための」物になってしまいました。当然、各軍隊でもサイボーグ部隊が結成されました。が、自らの肉体を武器へと換装していくことが、敵の存在を消すことを自分の存在意義にすることが、彼らの精神を崩壊させていきました。
 ルール的には各種筋肉筒・各種ブースター・耐弾バイオ皮膚・サイトマスター・超反射システム・人造骨格の内のどれか1つでも装着した者をサイボーグとし、デスチャートをサイボーグ用で判定します。ひいては、上記のパーツを装着していなければ静穏チェックをする必要はないと言うことにもなります。
 ちょっとシミュレートしてみると分かりますが、静穏チェックはかなり厳しいものとなっています。本格的にサイバー化した兵士を作り上げようとすると頻繁に発狂します。第4章でも述べましたように、こうした理由から発狂値を半減(端数切り上げ)できる「喪情士」が誕生しました。

 喪情士はエリート中のエリートであり、軍隊内にも数人しかいません。術者を幼い内から教育して作られた半人工サイコタイプだからです。それ故に未覚醒の喪情士というのは滅多に発見されません(第8章参照)。ですので、幼年期に覚醒してしまった術者を見つけなければなりません。言うまでもなく、そうそう見つからないでしょう。

 γステージ専用サイコタイプも紹介しておきます。
 「喪躯士」は聖暦2338年のオフィーカスクライシスによって誕生したサイコタイプであり、唯一獣術を使える者達です。
 「操騎士」はALiCEパイロットの中でも特に超常的な力を使えるパイロット達です。彼らは騎術を駆使する他に、活性力と呼ばれるいわば「ALiCEの装精霊」を展開することが出来るのです。また、ALiCE搭乗時の技能(第六幕参照)を全て〇で取得/成長できます。余談ですが、優秀なALiCEパイロットは英雄です。それも民間人の間で。支配企業によるPR活動のたまものなのですが、彼らの多くが術者なのも事実です。そして、術者には禍族という天敵がつき回るのもまた事実なのです。

サイコタイプ 筋力 運動力 耐久力 知力 感覚力 精神力 霊力 行使術力種
喪情士 なし
喪躯士 獣、式地凍空雷から2
操騎士 騎、式地凍空雷から1

 警告を繰り返します。γステージには安息の地はありません。ヒトのいるところは血と硝煙の匂いが立ちこめる修羅道。ヒトのいないところはミュータントが闊歩する畜生道。地球を離れてもいつ平安が崩れ去るかという不安に怯える極楽道。何処にいても地獄。少なくとも生きるつもりのない輩は生きることが出来ない世界です。この世界で生きていくためには生きて行くだけの「理由」が必要になっていくでしょう。

 

第八章へ

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