日本酒のこと知ってる?(3)

山廃ってなぁに?(山卸し作業廃止モト)

 私たちの店に、山廃のお酒が多いからでしょうか?この質問がとっても多い。
 説明が長くなってしまうので、今まで取り上げなかったのですが、いつも店で説明している事をベースにして説明したいと思います。

 酒蔵の写真で大きなタンク(モロミタンク)が並んでいるのを見た事があると思います。目に浮かんできましたか?あの大きなタンクでお酒を仕込む前に、小さなタンクでお酒の赤ちゃん、酒母(モト)を造ります。酒母は出来上がるお酒の個性に大きく関係します。酒母(モト)は、よい日本酒を作るために、よい酵母(糖をアルコールに帰る働きをする)をたくさん培養したものです。酒母は、タンクに蒸米・麹・水に純粋培養の酵母を加えて仕込みます。全体量の7%ほどで、モロミ(大きなタンク)の醗酵のスタータになります。

酒母の種類は大きく2つに分かれます。速醸(そくじょう)系酒母と生モト(きもと)系酒母。

速醸系酒母
酵母を安全に育てる為に、仕込む時に乳酸を添加します(タンク内に雑菌の侵入を防ぐ為に乳酸の力が必要です)。初めから安全にエリートの様に育てられます。ですから、この酒母を使って出来るお酒は、すっと素直でやさしくキレイなお酒が多いです。現在の酒造りでは、ほとんどでこの酒母が使われています。
生モト系酒母
この中に山廃酒母も含まれます。酒母を安全に育てる為の乳酸菌を自然に生えさせ乳酸を得る方法です。速醸系の酒母の倍ほどの時間と手間がかかります。じっくりと自然に乳酸が生えてゆっくりと醸されてゆきます。この酒母を使って出来るお酒は自然児の様にのびのびと力強く、ワイルドなタイプが多いと思います。
生モトってなあに?
生モトは江戸時代の後半の灘の寒造りを支えた酒母です。厳冬の頃「半切り(はんぎり)」というタライの様な浅い桶に冷やした蒸米と麹に仕込み水を入れて3〜4時間毎に櫂(かい)という道具で原料をすりつぶすモトすり(山卸)という作業をするのが特徴です。
山廃ってなあに?
明治の初め頃、冬の真夜中に行われるこのすりつぶす重労働、山卸し作業(モトすり作業)を廃止しても良いお酒ができるモト造りの製法が発見されました。これで、この山卸し作業を廃止したモト(酒母)、山卸廃止モト=山廃モトが生まれました。それでもなお、高度な技術と手間ひまのかかる作業です。

山廃酒母を使ったおさけは濃醇でコクがあり、酸も豊かで個性的味わいです。

 酒好きには、こたえられない味わいと言っても過言ではないでしょう。いろいろな方に、体験していただきたい味わいです。家庭の夕ご飯にぜひ試していただきたいです。刺身から、トンカツ、グラタン etc・・・いろいろな食べ物と合わせてみて下さい。


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