寄りみち(Vol.59,98年3月号)

もうすぐ,春です...ねひな人形

 ここ川崎では3月1日が雪,今日も夜から雪が降るという予報です。
 雪かきようにもう一本,スコップを買うかいなか?今日は,ずっとその事を考えています。
 バカバカしい事ですが,また積もったらと思うと気になります。
 1日には積もらなかったので明日もだいじょうぶだろうとみんなの意見で今日は見合わせることに。
 今年の何回もの雪かきをスコップ1本でガマンしたのだから「今さら買えるか」という気持ちが大きい様な気がするのだけれど・・・。明日,目が覚めたら外は真白だなんて・・・どうぞ積もらないでください。

 本当に暖冬だったの?暖冬だから関東地方に雪が降るのだとお天気の予報士の方は言いますが,寒かった。
 しかし,もうすぐ春はやって来ます。
 この季節「三寒四温」という言葉をよく耳にします。今年は昔の人はうまい事をいうものだと感心させられます。ポカーンと暖かい春の日があったと思えば雪があったりと忙しい。気持ちの切り換えも大変なのですが,体調の切り換えはもっと大変です。母がよく言う「暑さ寒さも彼岸まで・・・」もう少しです。

 毎日のとても大きな気温の変化,体には気をつけたいですね。
 また,そろそろ花粉も飛び始めている様です。この頃は春の待ち遠しい人とそうでない人と大きく別れている様です。一概に喜んでばかりはいられませんね。

木陰浮月粋人盃 ’98酒蔵見学会

 酒造りの真っ最中の府中酒造さんを粋人盃で見学させていただきました。
 その様子をメンバーの2人が送ってくれました。

メンバー 石毛浩之さん

 2月23日,木陰浮月粋人盃の仲間達と,茨城県石岡市の「府中誉」醸造元・府中酒造(株)へ酒蔵見学へ行ってきました。
 上野からJR常磐線特急約1時間で石岡の町へ。茨城県は,首都圏のベットタウンや研究学園都市として都市化の進むなか石岡の街は昔ながらの閑静な趣を保ち,歴史の遺産を多く残しているところ。ここは遠く天平の昔,常陸の国の国府が置かれ府中酒造(株)の所在地はその中心,府中ということで,この地に創業した安政元年(1854年),常陸国府中の名を銘に冠し「府中誉」の名で販売され,府中の酒として,地元の方々に好評を得ているとのことです。

 石岡駅から徒歩約10分でお蔵到着。旧い商家の伝統を今に伝える趣のある店舗。山内和治社長と孝明常務に出迎えられる。蔵の歴史や清酒醸造の説明を,分かり易く楽しくしていただき,南部杜氏・押切義昭さん以下6人の蔵人さんの守る醸造現場を見学する。

 「ここは水に恵まれているのですよ」と社長さん。関東有数の米作地域が周囲を囲む石岡は,筑波山の花崗岩層が形作る大地上にある。筑波山に源を発する自然濾過された清冽な湧水は「府中六井」と呼ばれ,中軟水で鉄分を含まないこの水は飲用や,酒造りに最適とのこと。石岡では上水道として利用。お蔵でも,自家井戸より仕込み水を得ているという。
 水とともに重要な原料の米も,地元石岡市や近隣の八郷町の農家と直接栽培契約を結び,酒造好適米「山田錦」「五百万石」を確保。「農家さんと共に,米作りの勉強をし,酒造りをしやすい様に作ってもらっています。農家さんとの互いの顔の分かる関係をもつことは大切です」と常務さん。

 このお蔵では,吟醸酒に明治・大正期の酒米「渡舟」を独自に使用されている。地域に根付いた酒造りを目指すため,かつて茨城県で栽培され,その栽培の難しさから,僅かな種籾を残し絶滅していたこの酒米に,平成3年より挑戦。農家と農業指導員の協力を得て,苦労の結果,平成7年には「渡舟」使用の大吟醸が鑑評会初入賞。平成9年度には,約280俵(1俵=60kg)収穫することが出来たという。

 「「渡舟」は「山田錦」「雄町」より稲の背が低く,分けつが多い。また実の内部が空疎のため,とても水をよく吸うのが特徴です」と常務さん。
 若くて熱意のある常務さんが,この酒米を生かして今後どのようなお酒を作って行かれるのか,非常に楽しみに思われた。

 きき酒(?)をしながら,山内社長や孝明常務と,日がどっぷりと暮れるまで酒談義に花を咲かせ,私達の楽しい一日は過ぎていった・・・。
 府中酒造(株)の皆様,お世話になりました。

メンバー 竹林保さん

 98年2月23日。参加者10名。上野12時30分初の特急で約1時間。徒歩10分程で府中誉に到着。

 山内さんから水の硬度は2〜4度(宮水10,エビアン30以上)で,浅井戸から汲んでいる。
 仕込は,酒米・麹(米を糖化して酵母のエネルギーにする)・酵母・水の4つが必要。
 杜氏は南部杜氏で蔵人も含めて合計7名,蔵に来てもらう様になって6年になる,などの話を聞いた後,蔵へ。

 靴を脱いでサンダルに履き替える。
 蔵の中は約10度前後。だんだn寒くなってくる。米に加湿する調湿器を見る。
    

  「吟醸渡舟の水分量の管理は大変」

 渡舟でお酒を作るには米の水分量の管理が非常に大切で,調湿器で十分に水分を与えておき,洗米のときの割米を防いでいる。初めは限定吸水(杜氏さんがストップウォッチで正確に吸水率を計算しながら洗米する)でした。しかし,割米が多く出てうまく行かなかった・そこで調湿器を導入した。調湿器を使うのは新しい方法で,掃除が大変だったり,蒸米の米の感触が違っていたりして色々大変だそうです。

 蔵には大きい約6000リットルタンク(仕込総米2トン,酒になると約4000リットル)が7本並んでいた。酒を仕込むには初添,仲添,留添の3段仕込を同じタンクでする。
 府中酒造では大吟醸は初添を小さいタンクで行い,別の小さい吟醸用の仕込タンク(2トンタンクの3分の1)に移し換えて3段仕込をする。
 蔵の中でタンクに移し換える所を見たが,かなり重そうで酒造りの重労働ぶりを実感。

 渡舟は吟醸用の小さいタンクで16本。2日で1本のタンクの半仕舞。
 11月5日から3月前半まで5ヶ月間ほとんど外出しないで作業をしているそうです。

 酒母室で手をアルコール消毒して,大吟の麹米をかみしめると和三盆の様なほんのりとした甘味を感じた。
 ふと,入り口を見ると杜氏さんがこちらをじっと心配そうに見ていたのが印象的に残る。
 渡舟純米吟醸原酒無濾過など3種類のお酒を6時半まで話は続いた。

「酒米・渡舟」

 蛋白質が少ない。でんぷんが多い。渡舟は古い品種で栽培が難しい。
 稲穂が出る前から窒素肥料を与えない。
 初めの頃は,穂が出ないで茎がどんどんのびてしまったそうだ。

 5年間は収穫量には関係なく反当たりの収入を保証して作ってもらい,6年目からは出来高払いになるようになったそうで,米の復活も大変だと感じた。


 大吟醸の造りの時期にもかかわらずに,私たちの蔵見学を受け入れて下さった府中酒造様,本当にありがとうございました。今回,レポートを送ってくれた石毛さん,竹林さん,ありがとうございました。
 みな様のお便り,心よりお待ちしております。


水戸で見つけた旨い蕎麦

創作蕎麦料理「幸月庵」

 先日,つくばに引っ越した粋人盃のお客様,伏見さんが店を訪ねてくれた。いろいろ話をして,水戸の偕楽園(梅の花)がそろそろ見ごろだよという話でした。そこで休みの日に女房と二人で出かけることにしました。

 茨城のガイドブックの隅に小さく蕎麦屋さんが載っていたのでお昼はここでと決めて出かけた。僕は,そばの知識はないが,そば好きで,昼,4組のお客様しか入れないという所に興味をもった,が行って驚いた。
 蕎麦の歴史から,蕎麦粉の種類・特性,蕎麦の事を知ることによる楽しみ方まで,詳しく,分かり易く大将が教えてくれる。
 そのこだわりが,究極の味を求めているのだろう。今までの蕎麦の概念がすっ飛んだ。機会があったら「寄りみち」で詳しく書きたいと思っています。

 お品書きは無し,私たちが楽しんだのは,蕎麦ずし・蕎麦がゆ・蕎麦がき・せいろ・蕎麦菓子,それぞれの料理が,ちがう形での蕎麦粉の楽しみでした。
 近くに行ったらぜひ寄ってみて下さい。絶対おすすめです。

「幸月庵」水戸市石川町
029(251)5626(要電話)

P.S. 帰り際酒の話になり,蕎麦にこれだけこだわっているのだからきっと酒もと思った。「渡舟」という大吟醸を使っていると言う。やっぱり・・・




今月の酒・味だより

田身の酒(能代・喜久水)

 お待たせしました。このお酒も待っているファンの多い酒,喜久水さんの隠れたヒット商品です。
 高橋杜氏が思う様につくり,無濾過で出荷する純米吟醸です。
 去年の酒よりも,やわらかなふくらみを感じさせ,後のキレ味はつい盃を重ねてしまいます。吟醸香は高くないが,しみじみ飲んでいて”旨いなぁ〜”と言葉が出ます。
 1.8リットル・・・4,000円

諏訪泉純米しぼりたて

 自然体で造った純米酒ってこんな感じかなって思うくらいすがすがしさを感じます。
 きれいな酒質の中にもふくらみを感じさせ,きゅっと引き締まって口中にさわやかさを感じさせる酸が,強い料理にもここちよくバランスしてくれます。また,つまみが無くても口中のさっぱり感がたまらず盃をすすめてくれます。
 春を感じさせる一本です。
 1.8リットル・・・2,400円  安すぎる!

府中誉・渡舟純米吟醸舟しぼり(純醸吟醸)

 府中酒造では一昨年まで酒米「渡舟」を大吟醸および純米大吟醸のみに使用していましたが,常務・山内さんの構想の中に「米の可能性を知りたい」という事があった。精米5割でどんな酒になるのか?そんな事によりこのお酒が生まれました。これがバツグンの味を発揮し,去年はアッという間に完売。今年の出来もまたバツグンです。きれいに吟醸香がたち,含んでも口中にみずみずしさと吟醸香そして酒の透明感が光ります。
 720ミリリットル・・・2,025円, 1.8リットル・・・3,900円


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