オーストラリア奮闘記第三部
さようなら、また会いましょう!
翌朝、ウィリアスの子供達と近所を散歩してみた。ブロークンヒルよりももっともっと田舎にしたような所だ。ただブロークンヒルは砂漠の中に出来ている町なので、様子は全く違う。まず隣の家が見えない。子供達と一緒に近所の家まで行ってみたけど、隣の家からはウィリアス家は見えなかった。スゲー!大草原の中の小さな家だ!牛もあちこちを、我が者顔で歩いている。人か近づいても気にも止めない様子。自然一杯の良い所。ここだけ時間がゆっくり流れている。草原の中で昼寝しているだけでも十分な環境なのだ。
昼過ぎになると、教会にいっしょに行かないかと誘われ、家族皆と教会に行ってみた。田舎町の小さな教会。ミサが始まっていて何も分からずに、ただ手を合わせながら周りをキョロキョロ眺めていた。しばらくすると眠くなる。いかんいかん!
ミサが終わった後に、神父さんに紹介される。嫌に明るい神父さんで「日本からどうやってきたんだ?バスで来たのか?」と言って大声で笑っていた。何だか優しい人たちばかりでとてもいい町。このまま1週間もいたら、きっといい意味で反応も遅い人になってしまうだろう。こんな生活もいいナー!
家に帰ってからは、芝生の上で子供達と日本語の勉強をした。特に女の子のアニタがとても熱心で、将来日本に行きたいと言う。もしそうなったら、手伝ってあげる約束をした。
翌日はシドニーに向かわなければならない。出会いはとても嬉しい事だが、別れる時がとても辛い。夜中まで家族と一緒に談笑して過ごす。
「あーあ、明日またお別れか。」
翌朝起きて、午前中は似たようにゆっくり過ごす。もう会えないのかな?いやきっといつかまた会えるはずだ。ウィリアスさんにバスより電車の方が良いと勧められる。駅に向かって家族で車に乗った。車の中はとても静かで寂しい雰囲気だった。
「Good-by,See you again!」
最後の日本語のレッスンをした。子供達に「さようなら、また会いましょう!」と言う日本語を教えたかった。これが一生の別れではなくて、また会うのだという意味で一生懸命教える。子供達も一生懸命になって覚えてくれた。
駅につくと、子供達みんなが俺の重い荷物を運んでくれる。感謝で胸がジンとした。別れ際で「さようなら、また会いましょう!」とみんなが大きな声で言ってくれた。「どうもありがとう!さようなら、また会いましょう!!」
いよいよシドニーへ!
オーストラリアは良い人たちバッカリだなー。歩きながら駅のホームに入っていくと酔っ払ったアボリジニが、人種差別について俺に向かって訴えかけてきた。男女のカップルの2人のうち、男性は顔に傷を負っている。オーストラリアもすべて平和に進んでいるわけではない。ビールをがぶがぶ飲みながら訴えかけている彼を見ていると、人種差別など多くの問題が、この国には存在している事を忘れてはならない。オーストラリアの人たちが俺のような日本人同様、アボリジニの人たちにどうして接しられないのだろうか?
電車が出発する。ウィリアスさんが言ったとおりだ。電車は空いていてすごく席も広く使える。バスの移動から考えられない程の快適さだ。でもやはり俺にとっては、お金の問題のほうが大きいので今回以外はバスに限るな。
その後しばらくすると、日本人に会った。この日本人も学生の卒業旅行で一人旅。Fテレビに就職が決まったと言っていた。二人でビールを飲みながら話していると色々な彼なりの感じたオーストラリアに対する意見を言ってきた。彼が言うには、オーストラリア人は怠け者過ぎる。もっと資源を使って頑張れば日本以上の経済大国になる。このことについて、何日か前にオーストラリア人と議論したらしい。さらに、オーストラリア人がちゃんとした英語を使わない事にも不満を漏らしていた。関西空港でも、大阪弁を話している職員はいないというのである。
なんか腹が立ってきたので、口論になってしまった。俺の言い分は、オーストラ人は今のままで良い。どの国も経済大国を目指す必要は無い。その国独自の信じるものがあり、文化もあり、人の暖かさがあり、自分の考えと違うからと言ってなんでも否定するのは間違っている。日本人と違う考え方を持つ事にオーストラリアの価値があるのだ。言葉も英語の方言と考えるのが間違っている。オーストラリア人も「オーストラリア語」と言う表現はするけど、自分達の言葉を「英語」と言う表現をする事は一度も出会わなかった。つまり英語ではなくてオーストラリア語なのだ。ここはイギリスじゃない。オーストラリアだ。方言と捕らえる事が間違っている。これ以上オーストラリア人に議論をふっかけないで欲しい。
その後話は酔っている事もあって話は平行線になった。そして険悪なムードになったまま、別れてしまった。
人種差別は納得行かないけど、俺はオーストラリア人の味方なのだ!!
その後しばらくしてから寝てしまい、明るくなると電車はシドニーに着いた。
スゲーいい天気!!やったぜー!やっとブレットにあえる。思えば最初の頃から比べると我ながらたくましくなったナー。オーストラリアに着いた時、ブレットがいない事にオロオロしていた自分が嘘のようだ。あそこでブレットに会わなかった事がこの旅行をさらに面白くさせた。
ブレットに電話して、昼に駅で待ち合わせる。それまで観光するか!!
オペラハウスやハーバーブリッジ。日本のどのガイドにも載っている象徴的な建物の数々。アデレード以来の大都市だが余裕がついたせいか今までのオーストラリアとは違った風景に映った。大道芸人もアデレードよりたくさんいる。あと数日しかいられないけど、今までのことを思い返しながら歩いている。すばらしい国だ!!
昼になりブレットに会った。「Hey!Toshio!」
すごく嬉しかった。今までの出来事を話すとニコニコしながら聞いてくれた。チャイナタウンで日本食を買いブレットの家に行く。ブレットは日本のご飯の炊き方教えて欲しいそうだ。彼の家に着くと、なんと他に同年代の男女と三人で住んでいた。三人の中で女の人が一番背が高かったのが面白い。しかも楽しい人たちだ!
夜になると、みんなでローラースケートをしに行った。日本と違い、仮装している人が大勢いる。見ているだけでも楽しい。スケートリンクは広くないけど、マイクの合図で急に反対周りになったり、みんなで手を繋ぎながら滑ったりする。最後には全然知らない人たち20人ぐらいで、腰に手を掛けて繋がって滑る。日本人より楽しみ方知ってるよなー。
神父さんの格好して滑っているおじさんが滑稽で、一緒に写真とってもらった。神父さんとも仲良くなり挨拶しながら滑った。
しばらく神父さんと遊んでいると、ブレットに呼ばれる。
「彼はゲイだ!その気が無いならこれ以上は止めたほうがいい。彼は写真とってからずっとトシオを見ている。間違いない。」
「えー!勘弁してくれよー!」
その後、みんなで飲みに行って話しをする。シドニーはゲイとレズがとても多く、地図でここがゲイでこっちがレズの町とか教えてもらった。すげー考えらんねよー!
翌日、町を色々案内してもらっていると、確かに男同士が手を繋いでいる地域と、女同士が手を繋いでいる地域と別れていた。ブレットが日本に来た時、日本人の女の子もよく手を繋いでいるので、レズだらけの国だと思ったそうだ。日本に来ている外国人はみんなそう思っているらしい。そう考えてもしょうがね−よなー。
2泊してメルボルンに向かう。バス停までに彼は送ってくれた。ブレットはまた日本に来るだろう。その為か、ここでの別れは辛くなかった。「ありがとう!また日本で会おう!!」「ありがとう。すばらしい旅行を!」
翌日飛行機に乗り、オーストラリアの旅が終わった。約1ヶ月間のこの旅行が、自分にとって10年分の体験になったとこのとき思った。毎日が予想もしない展開だった。今までの旅行は自分の予想をこんなに越える事は一度もない。とても考えられないすばらしい旅行・そしてすばらしい体験。
最後にマックス家族・ブロークンヒルのプレース家族とその近所の人たち・ウィリアス家族、そして忘れてはいけないヒッチハイクで乗せてくれた人たち、みんなありがとう。そしてまたいつの日かオーストラリアに必ず戻ってくるぜ!!また会いましょう!!
おわり
<エピローグ>
この日記は、当時公開する予定のものではなく自分だけのものだった。でも何人かに、公開して欲しいと言う要望の中あえてまとめる事にした。つくり始めてみると忘れていた自分を思い出し作っていてとても面白かった。読んでる人には、どういう感想を持つか想像もつかない。当時から良く思っていたのが、このことが、ただの自慢になってしまったりとか、昔話をしている年寄りになってしまったりという事をとても恐れていた。だから余り詳しく人に話すことも無かった。自分が現在もこの頃と同じような気持ちを少なくとももっていられなかったら、ただの昔話になってしまい公開する気にならなかっただろう。またそうでなければいけない。もし誰かが、このHPを通じて気持ちを新たにしたり、辛いときに前向きでいれば事が前に進むという事が伝えられるかもしれないと思った。すべての人が気持ち良く見てくれるかわからないけど、HPは見たくない人は見なくても良いし、見たい人だけ見ればよい。絶好だよなーと思った。
あと時代背景が昭和なので現在とは全く状況が変わっているかもしれないことは付け加えておきたい。(俺って年寄り−!)
新しい体験はやろうと思えば誰でも出来る事なのだ。旅行に行くときは毎回、今でもチケットを買ってしまうまでが大変で、買ってしまえば、やらざる終えなくなってしまう。要は考えるだけでなく、実行するきっかけを作ってしまえば良いだけなのだ。この時を境にして、俺の一人旅が始まる事になった。文章はすべてHPの題名どおり「ひとりよがり」なのでよろしく!面白いと思ったら、今後も見てくれ!!