番外編E 本州制覇への道!(仙台〜函館編)
もうすぐ21世紀の最初の夏休みがやってくる。今回はある程度行き先は決まっていた。行き先は仙台から青森に行くのだ!
なぜなら、今までの自転車旅行で仙台から鹿児島までは走破していたからだ。今までのツーリングは何となく走ってみたいところに行くのが主だった。でも今度は一つの区切りを感じさせる旅となる。何となく走ってきた集大成!青森・鹿児島間の走破の達成!なんか考えるだけでもワクワクするぜ!
「今度も元気に走るぜ!!」
1週間ほど前より、具体的にあれこれ考え始めるた。仙台までは電車。帰りはバスにするかな?しかしいくら調べてもバスは無い。青森は高速バスないようだ(本当はあるのかな?)。そんじぁ電車?エキスパートで調べてみると青森からは6時間以上かかる。これでは今回の短い5日間の休みではとってももったいないじゃない。さすがに、ツーリングから帰って、1日ぐらい休みたいし・・・。
「んん・・・」
飛行機にしよう!どうせ飛行機なら函館までいけそうだ。ドンドン話が大きくなった。まずはコースだけ決めちゃおう。
「よし!函館。函館に決定!!」
10日から13日の4日間で本州制覇を達成し、函館観光までするのだ。最後は函館朝市で海鮮丼!何とも都合の良い事か。何とかなるだろう。成せば成る!
もう一つ問題があった。毎年夏の旅行は、テントを積んでツーリングに出かけていた。ところが今回の天気予報はずっと雨。雨のテントはただの修行だ。荷物が重くなり、体力ばかりが奪われていく。短期間のツーリングで雨中テントは辛すぎる。でもテントの魅力も捨てきれない。満天の星空の下で飲むビールはうますぎるのだ!前日までテントを持っていくか決められないままとなる。天気予報から考えて、最終的にテントを諦めることとした。これはこれで違った楽しみを見つけよう!!
前日になってやっと自転車の準備開始。油をさし、その他色々の準備しながら実感が湧いてきた。
「ヨシ!明日は頑張るぞ!」
8月10日(金)
朝起きて、午前6時いざ出発!
自転車担ぎながら、仙台まで新幹線。電車の中は何もする事はない。そんな中いろんなことが頭をよぎった。今回の旅行の事。会社の事。その他・・・・。
今は自分の記憶の中で一番世の中が難しい時代だろう。会社で仕事していてそれは実感するし、新聞読んでも余りパットした記事に出会うことは少なくなってきた。ここ1年間に自殺者が約3万人いるそうだ。交通事故死が約1万人。3倍も自殺している。こんな世の中で、自分は自由にフラフラ旅に出る。そう言った意味からすると何とも幸せな奴だ。今の自分にとっては大切な時間だ。
旅をしていて一番楽しい事は、人との出会い。いろんな人に勇気付けられ、そして多くの力をもらえる。今回もまた、みんなから力を貰うぞ!そしてそこで得た元気を、さらにみんなに伝染させたい!
ボーと考えている間に、仙台に着いた。午前10時。家から4時間しないでもう仙台。仙台は近いのだ!天気予報によると、ここ2〜3日雨模様らしい。でも仙台は、曇っていた。蒸し暑いが気温も30度程だ。
「何だ!雨降ってね−ジャン!」
思った以上の天気に恵まれ、元気が出てきた。
ヨーシ!ジャンジャン走れー!!国道4号線をひたすら走り始める。まずは50kmぐらいが目標だ。毎回走り始めの50kmぐらいは、ノンストップでの走行!今回もそれを目指す。はしれ!はしれ!・・・・!
しかし気持ちと裏腹に体は調子があまりよくない。20kmを過ぎると、蒸し暑さと空腹に負けてきた。体力的にガス欠なのだ。自転車走行中は燃費悪いといつも思う。リッター50kmぐらいかな。ジュースやパン代とガソリン代を比べても燃費良い車と余りかかる金額変らない。でも、排気ガスは出さない分俺の方がクリーンと言えよう。しばらくして、コンビニで1回目の休憩。ちょっと調子悪い。根性無しに自分に活を入れる。パンを頬張りながら、休憩を短めにする事にした。
「すぐ出よう!」
休み癖ほど、怖いことは無い。走るのだ。出発だー!
しばらく走行してると、登山のような重装備の人が歩いていた。でもなぜかどう見ても登山には見えない。具体的にどうしてと言うわけではないのだが、何か違うものを感じるのだ。いつもなら通り過ぎるのだけど、何となく自転車降りて声を掛けてみる。
「どこに行くんですか?」
すると、体格の良いヒゲづらの男性は、熊のような顔でにっこり笑いながら話してくれた。
「青森まで行きます。」「千葉から来て約40日かけて、歩きます。」
すげー!さすがに他の人とは違うオーラが出てた。10分ほど旅のこと話して別れた。「お互い頑張りましょう!」
スゲーな。俺も負けねーぞ!熊づらの旅行者に元気を貰い軽快に走り出す。走る!走る!曇ってるのに、蒸し暑さが飲み物を求める。汗がとめどなく流れる。何リッター飲んだかわからないのに、走り始めてから一度もトイレに行ってない。飲めば全部汗になると言う、ものすごい状態だ。飲むのを我慢して走る。しかししばらくすると、ヤッパリ飲まないと進まない。体も気持ちと反対に疲労を感じる。初日なので無理をするのはやめよう。3時過ぎには、今日の泊まる場所を決める事にした。花巻あたりを想定していた。約150km。そんなもんかと思っていたが、初日のためによる疲労と今後の活力のために温泉に入りたかった。地図を眺め考える。目は温泉を追っていた。いや、4号線沿いの温泉しか探していない。
「あった!」
あったは、あったけど、平泉にある。ん・・・平泉???平泉と言えば、仙台で飲んだ赤提灯のマスターが「仙台の次は平泉だな。」と、言われた事を思い出した。とてもきれいだと言ってたような・・・・?これは寄るしかあるまい!!
「何てマスターは言ってたかな?」
よく思い出せなかった。よく見るとすぐ隣に「YH」のマークがある。「ユースホステル」と言うのが気になった。ユースは、海外でしか泊まった事無い。年齢制限無かったけ?泊まってみたいなー。とりあえず電話してみよう。
「いいですよ。」
個室で4000円だそうだ。安いし、安すぎる!!しかも楽しそうだし、何しろ温泉が近い。走行距離が100kmぐらいになるのが気になるけど、翌日頑張ればよい。今日は早めに走ることを切上げてしまおう!キーメタ!
早速、平泉を目指した。20kmほどなので、4時過ぎには到着した。平泉の駅でスタンプを押し、地図どおりにたどって道を入って行く。地図のとおり毛越寺(もうつうじ)と言うお寺があった。地図によるとこの中にあるらしい。外には「拝観料」と書いてある。
「ユースはまさかこの中??」
門のおばちゃんに聞いてみると確かにそうらしい。拝観料はもちろん要らないようだ。なんか得したみたいで嬉しい!!中に入って行くと、お寺の横に宿泊施設があった。なんか旅のカンジ出てて良いなー!!なんか楽しみだぞ!!
受付の人は想像どおり坊さんだった。しかもメチャクチャフレンドリィ。「お疲れさん!ゆっくりしなさい。」「明日の朝、座禅あるけど出る?」「メシ用意できなかったので、あそこの店で買いなさい。」
なんか、優しさが伝わってくる心地良い感じ。俺の日本のユースのイメージは、家主がギター片手に歌わされるイメージがあった。歌は、「戦争を知らない子供達」。みんないやいや歌わされている。中にはニコニコ本気に歌っている奴さえいる。家主はヒゲ生えてて、一緒に歌わないと不機嫌になる。これが消灯まで続くのだ。でも宿泊費安いのだからしょうがない。
さすがにそんなわけなかった。あたりまえか・・・。
早速温泉行った。体重計乗って見ると今日だけで3キロ減ってる。ヤッパリ今の体にはきつかったのだろう。温泉つかり、体はとろけてゆく・・・。
・・・・・・
・・・・・・
・・・・・そして、今日一日を振り返った。なんかスゲーいい感じだ。明朝の座禅も初体験なので参加したい。清原がやってたみたいに、精神開発できるかな?野球でもヒットが増えるかも・・・。目指せ清原!!
今まで晴れた日に100km以下の日はなかった。100kmそこそこの日は、今までは反省する事も多く、気持的にも物足りなかった。でも今日の105kmはいいんじゃないかな!ユース初体験だし、温泉も気持ちイイ−!なんか楽しい予感に気持ちが盛り上がってきた。
温泉出て、店に夕食買いに行く。何だか知らないけど掃除してるおじいさんに挨拶しながら、さっき教わった店に向かった。
なんか寂れた店だな。夕飯を探さねば・・・・。
「ん・・・」
歩き回る。
「ん????」
「まさか。まさか・・・。カップヌードルしかない?そんな・・・。坊さんは俺を何歳だと思ってんだ!」
でもそれでもなんかいい気がした。これも気ままな一人旅ならでは。納得しながらカップヌードル2つ買いユースに戻る。ビールの自動販売機は、すでにあることを確認していた。冷たいビールがあれば幸せだ。
他の宿泊しているみんなは食事してるみたいだ。俺は一人でカップヌードルつくって、ビール飲みながら食べる。うまい!!いけるジャン!カップヌードル&冷たいビール!幸せに浸った。さらにビールを買いに自動販売機に向かう。すると、他の宿泊客に話し掛けられた。
「どこからきたんですか?」
ちょっと話していると、何人か集まってくる。みんな一人旅。いろんな旅をしている人たちだった。中には、自転車の学生もいるし、車の人もいる。バイクや青春18切符を利用する人もいる。年配の人もいたので年齢制限もないのだろう。だんだんみんなとビール片手に談笑した。さすがユース。ユース面白いなー!女の子の一人旅がいることにもビックリ!みんな旅行楽しそうで、元気になる。10時になると消灯なのもさすがユース。みんなまたどっかで会おうな。
今日はすごく楽しかった。あすは、座禅からスタートだ!明日も頑張るぞー!!
つづく