≪プロローグ≫

 平成12年6月の中ごろ入社10周年の休みの権利期限が迫ってきたので、これ利用して、北海道に行くことを計画した。ここで問題になるのは、この休みが取れるかどうか。営業でこの休みを取ったことがある人は、ほとんど聞いた事が無いし、特に今の営業本部と営業環境では、非常にとることは難しい。

 「どうすれば取れるのか?」


 権利を主張して喧嘩しながら取るのは、むしろ簡単なことになると思う。でもそれを周りの人が見ても、上司が見ても、とても良い方向であるとは思えない。誰からも文句も言われない堂々とした休みを取るのだ!!それこそが、重要なのだ!!!


 「ここは一つ勝負をかけるか。」


 月中ばまでに、売上100%を達成させよう。月初に宣言して、それに向かって頑張ってみよう。月末は、14日。これも10年間の営業の集大成だろう。とても一人でやることは出来ない。第四課のAにも同じ目標を持って手伝わせよう。上司として、営業としての大勝負となった。月初には、ある程度見込みがあったが、あえて全部新しい見込みで達成する!絶対出来る。いや、やる!!誰一人として文句は言わせない!!


 本部長からも「100%だったらいいよ。」と了解をもらい、皆にも宣言して自分を追い詰めた。久しぶりに胃の痛くなる営業活動に挑戦するのだ!頑張るぞ!!

 



 7月5日突然1通のメールが入ってきた。


【北海道行こう!!足手まといかもしれないが俺も連れてってくれ。今、北海道をチャリンコで走れたら、俺にとってはかなりの励みになるような気がする。嫌な言い方だが、やっぱり「若い奴らには負けたくない」のだ。おっさんはまだまだ頑張るのだ。】


 ポンチャン(相模大野のI課長代行)からは、何度か言われてきた旅行への参加だが、これほど具体的にアプローチされたことは無い。今までも何度か参加したいということは、何人にも言われることがあったが、具体的に言われたのは初めてだ。37歳のおじさんが、ここまでの決意を持って参加を希望している。しかも初ツーリング。彼も10周年の休みがあるし、二人にとってもいい記念になるだろう。俺は、口で言うだけの人より、実行する人が大好き。彼の言葉は、まさに「実行」にあふれていた。

 「よし!いっしょに行こう!」


 後日の野球の試合後、俺のうちに集まった。インターネットでチケットを取る。家でごろごろしながら、ルートを決める。今まで、考えもしなかった、帯広から、稚内に決定!!ポンチャンの富良野のラベンダーへのあつい思いが、このコースを選択させた。帯広空港まで、自転車を輪行(分解して袋詰めにする)して、自転車で稚内まで行き、帰りは稚内空港から輪行して帰る。(輪行バックに詰まっている荷物は、料金がかからない。JRも去年から無料。)18日(火)の朝羽田を出発し22日(土)に稚内空港から帰る。日程は決まった。あとは、それを目指すのみ。ガンバろーぜ!!




 しかし、俺には宿題が残っていた。出発までに売上100%の達成。10日前後まで、ほとんど数字が伸びない。どうする・・・。厳しい。胃の痛い日が続く。何とかしなければ。会社の目標とは違うところで、自分自身にプレッシャーがのしかかっていた。
 苦しい中で大型機種が、14日にOKがでた。あとは、Aのみ。彼には出発前に、決まらなくても良いといっていたが、本当はそんなつもりは全く無かった。何とか契約とってくれ。予定の14日は過ぎ、出発前日の17日の午後四時Aから電話。「50サーバー決まりましたー!」。彼も嬉しそうだった。当初の目論見どおり、今月出した見込みだけでの達成!「Aありがとう」。それ以外の営業所の人たちもみんな協力してくれてありがとう。ものすごく感動した。「これでどうだー!!」

 夕方、本部長もお祝いに来てくれた。「今日は五時半に帰ります。」ニコニコしながら「もちろんいいよ」


 これだー!やったー!今回の旅行での最難関をクリアー。俺以外は、9時過ぎまで本部長に説教されていたとの事。冷や汗もの。

しかしよく達成できたなー。

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≪35歳と37歳の物欲番長たちの北海道珍道中≫


平成12年7月18日(火)


 始発で羽田に向かうため、朝四時起床。昨日は、俺の誕生日だった。

 「とうとう35歳か」

 35歳と37歳の北海道旅行。キャンプ中心に移動を計画していた。ポンチャンは今まで、ツーリングの経験が無いので、キャンプ用品は、二人で出来る分荷物として俺が担当する。めちゃくちゃ重い。テントと、ランタン(携帯照明)とガスバーナー、燃料。それ以外にも寝袋から着替えまで重装備だ。この日のためにIXYデジタルを購入していた。前のデジカメに比べてこの高性能デジカメは活躍するはずだ!

「まず飛行場まで行くのが大変だなー。」

荷物を担ぐと肩にめり込む。「みんな仕事してるし、助けてくれた。頑張るぞー!」

気合を入れて、電車に乗り飛行場に向かう。飛行場につくと、ポンチャン居ない。まずは、チェックインしよう。インターネットで取ったチケットは、クレジットカードで清算登録してある。サービスの人に聞きながら自動発行機にクレジットカードを入れると、チケットが出てきた。これだけでチェックイン完了。座席もすでに記載してある。

「すげー。どこかの会社ののASPとは比べ物にならないほどの簡単決済。すばらしー。」



電話のメールをチェックしてみると、たくさんのメールが入っていた。前回以上に注目されているなー。というより、「仕事しているのにこいつらは・・・」が、正直な気持ちだろう。



 自転車を預けて、さらにポンチャンに電話する。まだ電車のよう。7時40分の飛行機なのに7時15分になっても来ない。荷物を預けたりしなければならないのに、どうしたんだ。7時20分ごろにポンチャン発見。彼は、自分発見の旅がしたいとの事で旅行行くこと決めたのだが、当日の朝にはなかなか彼を発見出来なかった。「はしれー」大声で叫んだ。自転車預けなければならないし、早く飛行機に乗らなければ。荷物を二人で分けてロビーを走る。自転車預ける頃には、ポンチャンにも疲れが見えていた。


 35分にゲートをくぐり、行こうとするとポンチャンの荷物から異常信号が・・・。


「ガスは、持ち込めませんよー」


 預けた荷物には、大丈夫でも手荷物には駄目らしい。俺は、預けた荷物に入っていたので大丈夫だった。


「捨てて下さい」


貴重なガスバーナーを一つ失った。時間はすでに40分。乗れるのかー?ワンボックスに乗せられ飛行機に向かった。護送車に乗せられたみたいだった。


何とか乗せてもらえた。初日からドタバタの出発。先はどうなることやら。37歳のおじさんは、飛行機に乗ると疲れて寝てしまった。


「本当に大丈夫なのかー?」

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