6.痔の治療


 痔瘻(肛囲膿瘍)を除き、痔核裂肛は軽症であれば薬物療法を主体に排便習慣の改善により治ることもあります(但し、基本的にどの薬も症状の緩和を謳っているだけで治るとはいっていません)。肛囲膿瘍も切開排膿だけで治癒し、痔瘻に進展しないことも結構有ります。 
 図1の様に大腸の中でも一番太い直腸にためた便を、伸縮性があるとはいえあの細い肛門管から排出するのですから、楽に排便できるような硬度を心がけるべきでしょう。大腸に停滞する時間が長ければそれだけ水分の吸収を受けるので変形しにくい硬い便になります。1日にとる水分量を500ml増やすことで約半数の人の便秘が解消されるという話もあります。食物繊維は消化吸収が悪いのと腸内細菌の働きを良くすることで大腸の通過時間を短くすると言われています。

 
@痔核の治療

薬物療法:軟膏、坐薬を肛門に局所投与することにより症状を改善します。経口薬を併用することも有ります。

注射療法:痔核とその周囲に硬化剤を注入し、血管とその周囲に炎症を起こすことにより固めます。

ゴム輪結紮:内痔核の根本に極小の輪ゴムをかけて、腐らせます。

凍結療法:液体窒素(−200度)を用い、痔核を凍結壊死させます。

結紮切除:痔核に入る血管を結紮して痔核を直接切除する手術です。

PPH:痔核を直接触れずに自動吻合器(切除と縫合を一度に行う機械)を用い、脱出する余剰粘膜と痔核に流入する血管を環状に切ることにより痔核を消退させます。

 
A裂肛の治療

肛門ポリ−プ見張り疣はいわば裂肛の随伴症状で、薬により治ることはなく(見張り疣や皮垂(余剰皮膚)自体に一生懸命に薬を塗る方をよく見受けますが)、あまり大きくなるようなら外科的に切除します。軽度の裂肛は自然に治癒しますが、難治のものは括約筋の痙攣を伴い痛みも持続します。最終的には肛門狭窄になってきます。

薬物療法:軟膏、坐薬を肛門に局所投与することにより症状を改善します。

薬物的内括約筋緊張緩和:ボツリヌス毒素注射やニトログリセリン軟膏により一時的な括約筋麻痺を起こし治療します。

肛門拡張術:手指により肛門括約筋のストレッチをします。

内括約筋側方切開:括約筋を部分的に切開することにより筋肉の緊張を取ります。

スライディングスキングラフト:慢性的な潰瘍部分を肛門ポリープや皮垂とともに切除し、皮膚をずらして、その欠損部分を覆います。(代わりに皮膚が欠損しますが、肛門周囲の皮膚は上皮化が早いので治癒します。)