おしりの話(3)
③痔瘻の治療
通常、手術以外に治る手だては有りません。
- 開放術式:トンネルの上皮方向を開放し肛門管とつなげ、周りの不良肉芽(治りにくい組織)を落として新しい組織を露出します。すなわち、基本的に上皮化が早く、感染に強い肛門の特徴を生かし、治りにくい構造を壊すわけです。
- シートン法:古来伝わるインドの技法(もともとはクシャラ・ストーラという薬品を塗った糸を使用)で、トンネルと肛門管に一本の糸を通し縛ります。その糸の締め具合、慢性的な刺激によりトンネルの上皮方向を落とします。結果として開放術式と同じ状態になります。
- くりぬき法:トンネルをくりぬき、バイ菌の侵入口である肛門陰窩を縫合閉鎖します。(結果として一回り大きなトンネルを掘ることになりますが、やはり治りやすい組織が表面に出ていることで治癒します)
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7.終わりに
便潜血反応(血便と異なり目で見えない血液を免疫反応で検出する)という大腸癌検診があり、大腸癌やポリープの検出に大いに役立っています。当然痔出血からの血液にも反応してしまいます。”自分は先祖代々の大痔主(痔を患ってる)だから関係無いや”..........果たしてそうでしょうか。痔があるために早期癌はおろか進行大腸癌がだすサインを見落としてはいないでしょうか。
又、先日妊婦さんが痔からの出血のため高度の貧血に陥り、胎児の命に危険が迫ったためやむなく帝王切開にて母子共に一命を取り留めた事がありました。
近年、抗凝固剤という(出血が止まりにくくなる)薬を飲むことにより、心筋梗塞や脳梗塞といった致命的な病気の再発を予防する事は常識になってきました。あなたは、無駄な血を流してはいませんか?
”
排便の時ちょっと痛いけど最近は血が出なくなったからいいか”..........だんだん細くなってきた便は、自分では慣れてしまい普通と思う傾向があります。自分の小指と比べて下さい。小指より細ければ異常です。(短期間に細くなった場合は直腸癌の可能性もあります)
”肛門の周りがよく腫れて痛むけど膿が出るとすぐ治るから良いか”..........一度完成された痔瘻は直腸からバイ菌の供給を常に受けています。排膿後硬くなったトンネルを避けて次の出口を求め、新しいトンネル工事が始まっているかもしれません。また、難治性痔瘻の中には癌が潜んでいることも...............
恥ずかしがらずに一度肛門科の門をくぐる事をお勧めします。きっと様々な悩みが解消されることでしょう。
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