久保内医院
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おしりの話(1)


”を辞書でひくと“痛みや出血を伴う肛門の病気の総称”と有ります。この“”は数ある外科疾患の中で最も多くみられる病気です。症状は①脱肛(痔核の脱出)②出血痛みの流出、に分かれます。あまり人前に出す場所ではなく、自分で見ることも難しいので、程度により我慢するか、ボラ**-ルを買ってきて使用する事になるようです。概ね誤りではないのでしょうが、多々治癒を遅らせ、時に致命的になることがあるので大まかなところを解説してみます。

肛門の解剖
じろうの解説

基本的に食べた物は、胃、小腸、大腸で消化、吸収を受けて便となります。血便(便に血が混じること)はその出血部位により、出た血液が消化を受ける度合いが異なり(量にもよりますが)、胃や小腸といった口に近い部分から出た出血はより黒く、肛門に近いほど鮮血色になります。最近は洋式便所の普及、水洗時の着色水により観察しにくいとは思いますが、体調の優れない時にはご覧になった方がいいでしょう。

1. 肛門の解剖と特徴


肛門(肛門縁)とは外から見て穴のあるところを指しますが、その解剖は割と複雑です(図1)。お尻の皮膚(①)は腸(直腸)の粘膜(②)と連続しており、その境目を歯状線(③)といいます。歯状線の上下でその機能、性質は全く異なる事となります。門の開け閉めは主に内括約筋(④)腸の筋肉と連続しています)と3つの外括約筋(⑤)の輪状筋が行いますが、その周りを肛門挙筋群(⑥)が覆っています(お尻を締めると上に挙がる因になります)。その神経はかなり繊細でガスと便(性状)の区別をつけ、殆ど(?)失敗はありません。またその皮膚は感染に強く傷の治りも早い特徴があります。
2.痔核(いぼ痔)

いわゆるいぼ痔は、皮膚或いは粘膜の直下にある静脈叢にできる静脈瘤でいわば血管の塊です。歯状線より上方にできる物を内痔核、下方の物を外痔核といいます。内痔核は排便時の出血、脱出が主症状で粘膜に覆われているため疼痛は有りません。逆に外痔核は皮膚に覆われているため疼痛、異物感を主症状とし、出血はなく最初から外に出ている事が多くなります。外痔核は血液が中で固まる血栓化をしていることも多く、その場合はかなり硬く触れます。実際には歯状線をまたがってできる物も多く、症状は混在することとなります。
 最近は、いぼ痔の成因を表面の粘膜とその奥の括約筋をつなぐ線維の脆弱化が主原因(表面の粘膜がずれて脱出しやすい)とする説もあります。
いぼじ(痔核)解説

3.裂肛(切れ痔)

歯状線と肛門縁の間(肛門管といい括約筋が締める部分にあたります)が文字通り切れることで、排便時の出血と疼痛がでます。軽い物はすぐ治りますが、縦に裂けた上方に肛門ポリープ、下方に皮垂(見張りいぼ)というたるみができます(これらは治りませんが治療の必要もありません)。慢性的に繰り返すと内括約筋に炎症が及び筋肉の弾力性が失われます。さらに繰り返すと肛門が狭くなりよけいに切れやすくなるという悪循環に陥ります。
切れ痔の解説


4.痔瘻(あな痔)


歯状線上にある肛門陰窩という窪みより細菌が侵入し、筋肉等の組織がない柔らかい 所に膿瘍(肛囲膿瘍という膿のたまり)を形成。皮膚に排膿して、腸と皮膚の間にトンネルを作ったものです。

肛門周囲膿瘍がこの病気の初発症状となることが多いのですが、この膿のたまりは切開して排膿しなければ治りません。外痔核と混同して、薬局で買った薬を塗って悪化させる(薬自体の作用が悪いのではなく、切開を受けるのが遅れる)ことが多い病気です。