/// 葵祭、斎王と路頭の儀  ///  (01/05/11)

摂社、三井神社、奥の左端が白髭神社
 葵祭で知られる斎王(斎院)は弘仁
元年(810)、嵯峨天皇の皇女、有智子
親王(うちこないしんのう)を初代に
制度が定められました。
その後、連綿と絶えることなく後鳥羽
天皇の皇女、禮子内親王(いやこない
しんのう)の建歴二年(1212)まで
三十五代、約400年間続いた斎王制度
で、その役目は葵祭を中心とした
上賀茂、下鴨神社の祭祀への奉仕でした。

その神霊はその昔、賀茂斎院御所に
祀られていたのですが、現在は下鴨神社の
摂社である三井神社のひとつ白髭社に
合祀されています。
下鴨神社楼門
葵祭の路頭の儀に斎王代列が復活する
のは昭和31年(1956)、当然ながら
皇女がその役に付く訳ではなく、京都
在住の未婚女性から選ばれます。

この為現在では斎王ではなく斎王代と
「代」の字が添えられます。
この意味では後で紹介する勅使列なども
本来は「代」が付くのだけれど、
そこまで深くは考える必要はないようです。

なお今年の15日の行列では下鴨神社境内の
鳥居から楼門、神服苑までと、上賀茂神社の
一ノ鳥居から二ノ鳥居を抜け、幄(あく)舎
までを、斎王代は自らの足で歩き、その後、
社頭の儀を見守ることになりました。
これによってこれまでの歩きづらい長袴の
十二単から短い裾の十二単に変更される
ようです。
葵の花、撮影は4月8日
その昔、賀茂斎院御所にはアオイが自生
していたようで「葵の庭」と呼ばれて
いました。新古今和歌集には
「忘れめや あふいを草にひき結び 
   かりねののべの つゆの曙」と
詠まれています。今はその様子を偲び
三井神社の奥にその「葵の庭」が再現
されています。

ところでアオイの花をご覧になったこと
あるでしょうか、撮影に成功したので、
まずはご覧下さい。指の先ほどの小さな
花です。
さて路頭の儀、いわゆる一般に葵祭と云われる行列ですが、行列は、
本列と斎王代列に分けられます。本列は勅使を中心にした列、
斎王代列は女人列とも云われ斎王代を中心にした列です。 

// 本列(勅使列) //

・乗尻(のりじり) 
  行列を先導する騎馬列で、六衛府の衛士(えじ)の役目でした。
・検非違使志(けびいしのさかん) 
  役人である検非違使庁の列、舎人(とねり)の引く馬に騎乗し、
  看督長(かどおさ)、火長(かちょう)、如木(じょぼく)、
  白丁(はくてい)、童(わらわ)などの下役を率いて行列の
  警備の役目がありました。 
・検非違使尉(けびいしのじょう)
  検非違使庁の役人、志の上司で行列警備の責任者でした。
  志、尉ともそれぞれ調度掛(ちょうずがけ)が弓矢、鉾持
  (ほこもち)が鎖を持ち武装しています。 
・山城使(やましろつかい) 
  平安京では上賀茂、下鴨神社はいわゆる洛外地域となるので
  洛外を治める役人の列。
・他に警護役で馬副、手振、童、雑色、執物舎人などの列が
 あります。
・御幣櫃(ごへいびつ) 
  賀茂両社の神前に供える御幣物を供奉する列。
・内蔵寮史生(くらりょうのししょう)  
  御幣物を管理する役人列。
・御馬(おうま)
  走馬(そうめ)とも云われ、神々にその走りを奉納する役目。
・馬寮使(めりょうつかい)
  走馬を管理する左馬允(さまのじょう)の列。
・牛童(うしわらわ)、車方(くるまかた)
  牛車を扱う役人列。
・牛車(ぎっしゃ)
  御所車とも云われ、本来勅使の乗る車ですが現在は乗って
  いません。正式には唐庇の遽杏葉車(からびさしのあじろぎ
  ようくるま)と舌を噛みそうな名前です。藤の花の造花で
  飾られるので飾車とも云われます。
・和琴(わごん)
  御物の六弦琴で「河霧」の銘を持ちます。赤地の袋に包み
  退紅の褐衣を着た女官が持ちます。神前での雅楽演奏用
  楽器です。
・舞人(まいうど)
  近衛府に務めていた役人で、歌舞の舞人の役目を担います。
・勅使(ちょくし)
  天皇の使いで、四位近衛中将が勤めるので、近衛使
  (このえづかい)とも云われます。現在は代役ですが、飾り
  太刀を持ち、馬の姿も飾りが多く目に止まる列です。
・馬副と随身(ずいしん)
  勅使の後に従い警護の役を持つ列です。
・牽馬(ひきうま)
  勅使が御所へ帰る時の替え馬の列。
・風流傘(ふうりゅうかさ)
  大傘の季節の花を飾り付けた列で、いわば行列の彩りの役目。
・陪従(べいじゅう) 
  近衛府の役人、歌をうたい楽器を演奏する役目がありました。
・内蔵使(くらづかい)
  内蔵寮の役員、勅使が神前で奏上する御祭文を奉持しています。
・風流傘(ふうりゅうかさ) 
  本列の最後です。大傘の季節の花を飾り付けた列で、いわば
  行列の彩りの役目です。

// 斎王代列 //

・命婦(みょうぶ)
  命婦とは女官の通称で、小桂(こうちき)、単(ひとえ)、
  打袴(うちばかま)を着用します。
・童女(わらわめ)
  斎王に供奉し仕える女官列。
・女嬬(にょじゅ)
  食事をつかさどる女官。 
・斎王代(さいおうだい)
  腰輿(およよ)という輿に乗っています。五衣裳唐衣
  (いつつぎぬものからぎぬ)、俗に十二単(じゅうにひとえ)と
  云われる装束です。
・駒女(むなのりおんな)
  斎王に仕える巫女(みかんこ)。
・蔵人所陪従(くろうどどころべいしゅう)
  蔵人所と云われる役所の役人列。
・牛車(ぎっしゃ)
  斎王が乗る牛車で女房車とも云われます。
  本列の牛車は藤の花で飾られますが、この牛車は葵と桂のほか
  桜と橘で飾られます。

本列を見ると、平安時代の官の祭である色彩が濃いことが判ります。
そして詳細に書いているように見えますが、実際にはこの他にも
列に加わる一人一人にまで歴史的な意味合いがあり、ここで紹介
したのは概略です。
行列の名称などを聞くと、平安時代には令制、令外の官(りょうげ
のかん)とかの行政の仕組みがあったと歴史の時間で習ったかな〜と
思い出す方も多いのではないかと思います。

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