/// 摩利支天とイノシシ /// (06/12/16)

 来年の干支は亥と云うことで、猪にまつわる話題です。
仏像はおおまかに、如来、菩薩、天部、明王、羅漢の五つに分け
られますが、摩利支天はその天部に属する仏像です。
如来は諸仏の上位にあり、「悟りを開いたもの」と云う意味が
あります。釈迦如来、阿弥陀如来、大日如来など、寺院でよく
目にする仏像です。
建仁寺の塔頭、禅居庵の猪
菩薩は悟りを求め、修行中と云った役割の
仏像で十一面観音菩薩、如意輪観音菩薩、
千手観音菩薩などの仏像がそれです。

明王は大日如来の威徳の元に、災いを排除
する役割とも云える仏像で、五大明王、
愛染明王、孔雀明王などの仏像です。
羅漢は諸尊の弟子とでも云う関係にある
仏像で、高僧に準えられる仏像です。

本題の摩利支天の属する天部の仏像は仏教に
帰依し、仏法を守護する役割の仏像、摩利支天
の他に帝釈天、弁財天、吉祥天など何処かで
聞いたような名前の仏像が登場します。

その摩利支天ですが、インドの古語である
サンスクリット語では”Marici”(マリーチ)
と言い、”まりしてん”の読みもここから
来ています。
護王神社の猪
「佛説摩利支天経」によれば、護身、隠身、
遠行、得財、諍論、敬愛、調伏、降雨、求子、
息災、延寿、除病苦など広大な功徳有りと
説かれていたりしますが、摩利支は日月、
つまり太陽や月の光を意味し、それは陽炎
(かげろう)に準えられています。

漢名は威光陽焔(いこうようえん)とも云われ、
陽炎は光のゆらめきなので、捕まえられること
もなく、傷つけられることもないと云うことで、
中世には武士の間に摩利支天信仰が広まる
ことになります。
忠臣蔵で知られる大石内蔵助も摩利支天を
護持仏としていたと伝わります。

摩利支天は三面六臂(さんめんろっぴ)や
八面六臂などの形で造られることが多く、
その三面は菩薩相、天童女相、亥相などがあり
ます。
臂(ひじ)には各々持物があり、仏法を守護
すると云うことで、武器を持つことが多いです。
例えば悪害や憤怒を消滅させ、迷いを断ち切る
意味で剣を持ったり、悪口や讒言(ざんごん)
(陰口のこと)を縫い封じると云うことで、
針絲(はりいと)を持つ者があったり、知恵を
授け五穀を実らせることをもって衆生を救うと
云う無憂樹(むゆうじゅ)などを持つのが
摩利支天です。
南禅寺の塔頭、聴松院の猪
無憂樹はマメ科の樹木で、お釈迦様がその木の
下で生まれたとされます。
ちなみに印度菩提樹の木の下では悟りを開き、
沙羅双樹の木の下で、お釈迦様が入滅したと
云われます。仏教ではこの三つの木を三大聖木と
云うそうです。

来年の干支は「亥」、イノシシですが、摩利支天
はイノシシの背にある三日月に乗った姿で造られ
ます。猪突猛進ではないけれど、猪の一途な姿は
仏法を守護する摩利支天に叶っていると思われた
のでしょうか。
西陣にある本法寺の猪
京都で摩利支天にゆかりの社寺、まずは
建仁寺の塔頭の一つ禅居庵、そして南禅寺の
塔頭の聴松院、また西陣の本法寺には
摩利支天堂があります。

また愛宕神社もかつての神仏習合時代には、
勝軍地蔵と共に摩利支天を祀っていたそう
です。本殿には猪の彫り物が残り、11月の
亥の日に行われる「亥猪祭」に、その名残を
みることが出来ます。

あと摩利支天とは関わりないですが、猪に
縁深い神社に護王神社があります。狛猪に
始まり境内には猪の置物など猪にまつわる
展示もなされています。機会があれば訪ねて
みて下さい。
猪の猪突猛進にあやかって、来年は真っ直ぐ
突き進みたいものです。

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