/// ゴットフリートワグネルと舎密局  ///  (01/03/19)

 かつて京都にも舎密局(せいみきょく)がありました。
広辞苑によれば、「舎密とは江戸後期から明治初期にかけての
化学の呼称」となっています。
舎密と云う言葉はオランダ語の「chemie」の発音を漢字で表記したものだとか、
江戸後期の文政十一年(1828)に宇田川榕庵と云う人物が用いたと云います。

京都舎密局では何を所管していたのかが気になるところですが、そこでは
理化学研究、石鹸製造、そして氷砂糖、飲料水の製造などを行っていた
そうです。

「里没那垤」、「依剥加良私酒」、「公膳本酒」、変換間違いした文字の
羅列のようですが、さてこの三つ、何だか判るでしょうか?
「里没那垤」は”レモナーデ”、そうレモネードです。
「依剥加良私酒」は”イホカラス”酒、これは今のビールです。
「公膳本酒」は”コウゼンポン”酒、なんとラムネのことです。
ラムネに酒と云う字があてがわれるところにも、当時のその物珍しさの
思いが伝わるようです。

京都近代化の一端を担った舎密局ですが、そこで忘れてはならないのが、
ゴットフリートワグネルと云う人物。
ワグネルは有田、伊万里焼きでの発色技術の伝授などの功績でも知られて
いるようです。京都では三年間講師として西洋の科学技術を教えたと云い
ます。
ワグネルが伝えた技術は石版印刷、
ガラス、陶磁器、七宝焼、石鹸、清涼
飲料の製造、合金、旋盤、電気メッキ、
理化学機器の製造、など多岐にわたり
京都近代化の功績は多大な人物です。

特に島津源蔵はワグネルに大きな影響を
受け、理化学機器への関心を深めていく
ことになります。その後の島津は今に
伝わる島津製作所につながります。
その歴史を展示するのは二条木屋町に
ある島津創業記念資料館です。
そこにはワグネルが島津源蔵に贈ったと
される足踏み式の旋盤なども展示
されています。
そのワグネルを顕彰する碑が平安神宮
近くの公園にあります。
平安神宮の巨大な鳥居を抜けて二条通の
交差点南西角の交番裏の小さな公園に
それはあります。京都市が設置した
高さ4m、幅10mと云う巨大な顕彰碑
です。その大きさからも、いかに京都
への貢献度が大きかったかを物語って
います。
平安神宮を訪ねる機会があれば、
ちょっと寄り道して、その大きさを
実感してみて下さい。

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